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【BOCプロバイダーnote】 口腔ケアを行うことで、楽器演奏のパフォーマンスを上げられるのか?!

【背景・目的】

吹奏楽やブラスバンドなどの演奏者は、演奏前に歯磨きを実施している(打楽器奏者はそうとも言えない)。

楽器を吹く奏者が行っている“演奏前の歯磨き”のエビデンスを確かめ、楽器演奏における口腔ケアの重要性を広めたい。


 【方法 】

 各種文献からの情報を集約。 


 【結果】

 1. 楽器演奏時における影響について  

トランペットやトロンボーンなどの金管楽器奏者における研究としては、マウスピースを口に当てて吹く際に、咬筋側頭筋ともに活動が高まり、その傾向は特に咬筋で強いとされている1)。  

咬筋は咀嚼筋の1つであり、食事など下顎を動かす動作の他、歯を食いしばる動きに大きな役割を果たしている。

また、金管楽器だけではなく、クラリネットやオーボエなどの木管楽器においても、管楽器吹奏が前歯部の歯列に影響を与えるとされている。  

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金管楽器では前歯の傾斜が演奏に影響を与えやすく、木管楽器では、下顎前歯に口唇を巻き込むため、前歯がデコボコしていると演奏に影響を及ぼす2)。

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また、楽器を吹く時に下顎を後方に引くことによる顎関節症の発生頻度が高いことが予測されている3)。

 

楽器を咥えるときの唇と口の形をアンブシュアと言う

このアンブシュアは、誤ったアンブシュアで無理を重ねたり、自分に合わないアンブシュアで長い間吹奏することにより、顎関節に異常が起きる。

また、弦楽器奏者においては、顎関節症や顎機能への影響が明確にあるものはないが、バイオリンやビオラは、左側肩甲骨に楽器を位置させ、顎部を左側に向け下顎で挟んで演奏するため、頭頚部に不均衡な姿勢をとることから下顎に負担がかかり顎関節症との関連があるとされている1)。 

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 2. 楽器演奏と口腔内のリスク  

歯列:

歯並びが悪いことで口腔ケアが行き届かず、口腔内細菌が増加し、歯周病や虫歯になるリスクがある。 


口腔内細菌の増加:

緊張などによる口腔内の乾燥唾液分泌量の低下があげられる。  


歯周病や虫歯:

口臭痛み歯が抜けるなど、楽器を吹くことができなくなる。 


顎関節:

顎関節症による痛みの他、全身への影響として集中力の低下頭痛肩こりなどがあげられる。


以下の図は、1.2.をまとめたものです。

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【考察 】

楽器を演奏することで、様々なリスクがあることがわかる。 一方、それぞれ予防や治療を行うことで、悪化しないで済むこともわかる。  

楽器奏者が演奏前に歯磨きを行っているのは、自分が楽器を吹ける最高の状態にするための一つの手段であるとともに、大切にしている楽器にも悪影響が出ないような配慮である。

そのため、楽器を演奏するには、楽器演奏をする前の歯磨きや、日ごろから口腔内だけでなくかみ合わせなどにも気を付けながら過ごす必要がある。

あくまでも、演奏技術の向上には練習が必要だが、最高のパフォーマンスを行う上での体調を整えるためには、口腔ケアも一つの手段であることがわかる。 


おまけの考察

打楽器奏者においては、演奏直前の歯磨きはさておき、日ごろからの口腔内外のケアを行っておく必要がある。 

演奏中のモグモグタイムは、周りに配慮をした上においては、エネルギーチャージとなるため有効であると考える。 


 【楽器演奏時の特徴】 

・金管楽器:マウスピースを口に当て、アンブシュアを作っている。  
・木管楽器:下顎を後方に引いて、リードを咥えている。
 ・弦楽器:バイオリンなどを顎に挟んでいる。
・ 打楽器:ドラムをたたくときなど、歯を食いしばっている。 

 

【参考文献等】  

1)後藤田ら,金管 楽器演奏が咀嚼筋活動に及ぼす影響,2006 

2)医療法人 誠心会 新港イトセ歯科 HPより 

3)眞木吉信,楽器演奏者と歯科疾患等の関連に関する研究,2015


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