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【不動産考察 第5回】コロナショックと不動産

新型肺炎による経済への影響は甚大であり、不動産マーケットにもその荒波が押し寄せてきています。

この原稿を執筆している2020年3月15日時点では、先週の株式市場は連日大幅下落を見せたかと思いきや、買戻しで暴騰するなどまるでジェットコースターのような相場となっています。

総じてみれば、日経平均では年初来高値である24,115.95から17,431.05となり約28%の下落となり大幅下落が進んでおります。これまでのアベクロ政策による異次元金融緩和バブル相場から一気にコロナショック相場へ転換した感があり、日々、株式市場から目が離せません。

先週末の東証リート指数の終値は1596.30となり、2020年に入っての高値である2月20日の指数2250.65から約30%下落となり、株式市場の下落より深い値下がりとなっています。

下の図は、2020年1月1日~2020年3月13日までの東証REIT指数のグラフです。(データ出典:東京証券取引所WEBサイトより)

東証リート指数 短期

かなり深い下落となっており、今後、自律反発するか更なる暴落かの分岐点に立っているという感じです。

長期投資商品で安定商品あるはずのJ-REITの投資口価格(株価)が事業法人の株価より深く下落するというのは少し違和感を持つ人もいると思います。

ここでJREITの「本来的な」価格形成について考えてみましょう。

JREITの配当額の原資は、保有不動産から得られる賃料であり、そこから運営経費、借入金金利などの経費を控除して配当します。(ややテクニカルな話となりますが、減価償却費も経費となるため、配当金は会計ベースで行われるため相当保守的に配当されています。)

JREIT自体は不動産賃貸専門会社であり、その株を購入しているのと同じなので、会社金利が上がる(下がる)と価格が下がり(上がり)、配当金が増えると(減ると)価格が上がる(下がる)という大原則があります。

2012年からのアベクロ政策以降、JREITの投資口価格は大幅に上昇してきました。この価格上昇の要因は大きく3つあります。

要因1:低金利により相対的にJREITの配当利回りが魅力的となった。

要因2:低金利により借入金金利が下がり、分配金が上昇した。

要因3:景気回復効果により賃料が実際に上昇した。

アセットタイプで言うとホテルの場合には、固定賃料に加え稼働実績により賃料が変動する固定賃料+変動賃料方式で賃貸借契約が締結されているケースが多いことから、昨今のインバウンド市場増大の影響を受け、他のオフィス、住宅専業REITとの比較では高パフォーマンスを見せてきました。

それが、今回のコロナショックで逆回転となっている状況です。

今回の下げで、投資家は賃料の下落を織り込み始めたということなのでしょうか?そもそも不動産の賃料は遅効性があると言われていますが、流石に一気に賃料が将来的に30%下がるというのは行き過ぎたシナリオだと考えます。

稼働率に連動した変動賃料方式を採用しているホテルREITの場合、短期的には賃料収入の下落⇒配当金の下落に繋がりやすいので、価格の下げが急激だというのは理解できます。

繰り返すとJREITというのは、本来的には、短期的な景気変動より不動産賃貸収入の長期変動の予測による価格形成がされるため、株価よりボラティリティが低い商品というのが本来的な商品性だと思いますが、今回のコロナショックを見ていると、どうも株式市場との連動性のほうが強そうだということが言えると思います。

このようにJREITの価格は、長期的にみれば金融経済環境によって左右され、2002年のJREITの黎明期から足元に至るまで大幅な価格変動の波にさらされてきました。先ほどの東証REIT指数を2002年から現在に至るまでの長期でビジュアルで確認してみましょう。

東証リート指数 長期

2008年のリーマンショック以前は、ファンドバブルによる不動産価格の上昇が顕著な時期であり、リーマンショックにより一気にバブルが弾けました。

当時の底値価格ベースでは、配当金利回りが10%前後であったと記憶していますので、現在からみれば大バーゲンセールという感じです。

そして、現在ささやかれているコロナショックの価格下落を見てみると、下落のペースはスピーディーですが「価格の下げは大したことがない」という結論になるかもしれません。

グラフを眺めるとそのような感想しか持てないです。

明らかに、これまでの感覚からすれば東証REIT指数1500割れは行き過ぎ感があるのですが、やはり上記の長期トレンドを見るとまだ最適な参入時期はもう少し後なのかもしれません。

今後実体経済が冷え込んで不動産に対する需要がどのように変化していくか?については誰もが予想できませんが、少なくともこのコロナショックを契機として、行き過ぎた不動産金融バブルが調整してしかるべきだと考えます。

長井のツイッター https://twitter.com/NagaiMinoru1


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