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コロナショックと不動産価格を考える

コロナウイルスが猛威を振るう中、不動産業界でも価格7割下落論が大手不動産会社の幹部から指摘されるなど、総悲観ムードが漂っています。

今回のコロナショックが不動産価格に相当ネガティブなインパクトを持つことは間違いないです。

なお、私の立場を説明させていただくと、不動産価格が上がろうが下がろうが殆ど影響ないビジネスを展開しておりますので、不動産屋のアゲアゲ支持派でないという立場を冒頭で表明しておきます。

不動産価格が下がる理由について、収益不動産の価格を形成する要因を分解して考えてみたいと思います。

要因1:収益の下落

収益不動産の収益は、ホテルや店舗の場合は売上、賃貸不動産の場合は賃料収入が収益の源泉であり、これらが痛むと収入が下落し、総収益を圧迫していく。

【収入面】

賃貸借契約の内容によって、収益の安定性も変わってくることに注意が必要です。

例えば、次のような要素の検討が必要です。

・そもそもマーケット賃料と比して現行賃料の高低は?

・テナントの信用力(賃料支払い能力、破綻可能性リスク)

・空室リスク(一棟貸かバラ貸か)

・普通借家か定期借家か(特に定期借家の場合は賃料増減額請求権の排除特約あるか)

・賃料は固定賃料か変動賃料か

これらの個別リスクを検討して、賃料の安定性を検討していくことになります。

【経費面】

不動産賃貸経営の場合は、水道光熱費などがテナントの稼働状況によって変動する経費が一部あるが、殆どの場合、経費は固定費と考えていいでしょう。

ということで、収入の下落 ⇒ 動じない固定費 ⇒ 更なる純収益の下落率と言う収益構造となっています。

今回のコロナショックでは、賃貸収入の下落を予想する向きが殆どでしょうから、純収益も当然に下落が予想されます。当たり前ですね。

では、どの程度下落すると予想するのが適正か?ということを検討してく必要があります。この議論に入る前に、要因2を先に見てみたいと思います。

要因2:リスクプレミアムの増大

不動産投資には、リスクが付きものです。すみません、当たり前のことを言って笑

それでは、不動産投資のリスクとは何でしょうか?主なものを列記してみると

・収益変動リスク(賃料が安定的か、空室リスクは)

・流動性リスク(そもそも、換金したいときに換金できないリスク)

・建物の減価リスク(古くなっていくと当然プレミアム高くなっていく)

・出口リスク(売却の際、思った価格で売却できるか)

その他法令変更リスクなど考えればきりがないほどのリスクがありますが、主なものは以上の通りだと考えます。

一方で、最近は上場不動産投資信託(J-REIT)の登場により、不動産固有の流動性リスクが減少し、かつ、金融資産とのリスクプレミアムとの比較が容易になったという側面があります。

今回のコロナショックでは、リーマンショック後の状況と同様に、リスク商品のプレミアムが急騰している状況であり、株式などのハイリスク商品と比して、ミドルリスク・ミドルリターンと言われる不動産についてもリスクプレミアムがじわじわと上昇している状況にあると考えます。

収益価格の落ち着きどころを考える

ここで、感覚的に今ありそうな収益不動産価格の算定について考えてみたいと思います。

条件としては、

・将来の賃料収入が現在より10%程度目線が下がる

・経費率は一定とする。

・不動産投資のリスクプレミアムが4%から5%に上昇

この条件にて収益価格を単純化すると次のようになります。

収益価格

このような前提で試算すると、収益価格の下落率が30%となりました。

住宅などの安定的な賃料はさておき、事業用不動産の中でも一部変動賃料を採用しているような不動産(例:ホテル、店舗)については、今回のコロナショックで賃料収入が10%以上減少するものも多いものと考えます。

ただ、今回のコロナショックが短期的な影響で留まるか、長期不況に突入するかによって、将来賃料のブレは大きく変わってきます

株式市場であれ、不動産市場であれ、マーケットはオーバーシュートして底を探っていくというのが常なので、落ち着きどころを予想するのは非常に困難ですが、長期的に見て適正価格がどの程度で落ち着くかについて冷静に考えることはできると考えます。

このコロナショックが1年程度の短期的な影響に留まるということであれば、上記のシナリオ価格で物件を仕込めば、相当の利ザヤを稼ぐチャンスでもあるということも指摘できると思います。

実際に、このコロナショックによる価格オーバーシュートを大チャンスだということで底値買いを探る動きが出始めています。

※ここでいうオーバーシュートは、経済学的意味であり、感染のオーバーシュートとは意味が違います。

あと、DCF的考え方に立って言えば、評価時点に近い収益のブレのインパクトが最も大きいことから、緩やかに回復するシナリオとなった場合においては、従前の収益価格より相当にネガティブな価格算定とならざる得ないという点も指摘しておきたいと思います。


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