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言葉でUXをデザインする「UXライティング」のはじめ方

こんにちは。
お久しぶりです、ナディアの森川です。

もしよろしければ、以前私が投稿した、こちらの記事も一緒にチェックしてみてください。

今回は、近年注目されている、UXライティングについて考えてみたいと思います。
「UXライティング」を知ったきっかけは覚えてないのですが、初めてこの概念に触れた時、とても惹き込まれたことだけは覚えています。

せっかくなので、UXライティングとはどんなものなのか、何ができるのか、私が個人的に思う「UXライティングの魅力」など、まとめてみました。

UXライティングとは

まずはあまり馴染みがない人もいると思うので、UXライティングの概念からおさえていきましょう。 

UXライティングとは、プロダクトとユーザー間のインタラクションを支援し、プロダクト内のユーザーを導くUIのコピーライティングのことを指します。UIのコピーには、ボタンやメニューラベル、エラーメッセージ、セキュリティの注意喚起、利用規約、その他のプロダクト使用に関する指示などが含まれます。UXライティングの主な目的は、ユーザーとデジタルプロダクトのコミュニケーションを解決することです。

UXライティングの教科書

つまり、プロダクトにおけるUIコピーに対し、言葉のプロが適切なワーディングを行うことで、ユーザーが快適にプロダクトを使えるように支援するということですね。

私がここで注目したいのは、単にフォームやボタンなどのパーツに入れ込むマイクロコピーだけではなく、エラーメッセージやその他コンテンツを含めたプロダクト全体の文章を、UX的な戦略をもって構築するという点です。

「そのワーディングが適切か」という観点だけではなく、もう少し踏み込んで、ユーザーとの関係構築を意識してライティングを行うのが、UXライティングの特徴と言えるでしょう。

そのため、UXライティングは「ブランドボイス」を担う役割としても重要です。プロダクトが届けたい価値、体験、そのブランドらしさを言葉で表現するということです。
また、さまざまなサービスがデジタル化される昨今のコロナ情勢もあいまって、近年ユーザーとの接点である「言葉」がもたらす役割や重要性が注目されています。

「プロダクトに命を吹き込む」Slack社のUXライター

言葉で説明するだけではイメージが掴みづらいと思うので、UXライティングにおいて多くの実績をもつSlack社の事例を見てみましょう。

▼新着機能・バグ修正のお知らせメッセージでユーザーのエンゲージメントを高めている。

単にユーザーが不快に思わない言葉の配慮だけではなく、上手に個性やユーモアを取り入れて、ユーザーを楽しませています。プロダクトがまるで心や個性をもった生き物のように感じられますね。これがUXライティングの面白いところです。
Slack社のUXライターであるアンドリュー・シュミットさんいわく

UXライターの仕事は「言葉でプロダクトに命を吹き込むこと」


にある通り、UXライティングは、かなり人間らしさが出やすいUX技法と言えるでしょう。ユーザーと心を通じ合わせることができたり、文章に人間らしさ(個性)をのせて愛されるプロダクトにできるのです。
もう少し、そのテクニックについて掘り下げていきます。

UXライティングを「会話」として捉える

そもそもUXデザインとは、この業界ではおなじみですが、ユーザー視座で物事を考え、ユーザー体験がよりよいものになるように、あらゆる面からコミットしていくことを指します。

UXライティングの場合、「このプロダクトを使う時、ユーザーは何を達成したいのか」や「このボタンを押すユーザーはどんな情報を求めているのだろうか」を把握するのはもちろんですが、「このボタンを押す瞬間、ユーザーどんな感情なのだろうか」まで掘り下げて考えることが重要になってきます。

なぜなら、UXライティングとは、プロダクトを介して、ユーザーと直接的にコミュニケーションをとる(=会話)テクニックだからです。 心地良い体験を生み出すUXライターの頭の中では、「この機能を使う時、ユーザーはこんな気持ちでこう言ってるだろうな」「じゃあこうやって返してあげたら喜んでくれるかな?」と常にユーザーとの会話が繰り広げられています。

私が使っているnoteでも、「下書き保存」をクリックすると、こんなメッセージが表示されます。

途中の文章がきちんと保存されたことをしっかり伝えて安心させてくれると同時に、「疲れたからちょっと休憩しようかな」という感情に寄り添うメッセージが一言、添えられています。とても癒やされますね。

心地いい「会話」とは、相手の感情を尊重した上で初めて成り立つ

前章で、「会話」を心地いい体験になるになるように言葉を選ぶことがUXライティングであり、これを実現するには、UXリサーチに多くの時間を割き、インタラクションが発生するその瞬間のユーザーの感情を、しっかり把握することが何よりも重要であると述べました。

これを腑に落とすために、リアルな場でのコミュニケーションを想像してみると分かりやすいです。
例えば、相手が連絡もなしに1時間も待ち合わせに遅刻してきたとします。あなたは炎天下の中、連絡がとれない友人を心配しながら待ち続けます。やっと友人が現れました。しかし、友人は特に謝罪もなしに遅れた言い訳を並べ、一方的に自分の感情を伝えてきました。

あなたはどんな気持ちになるでしょうか?

たとえその遅刻に正当な理由があったとしても、なんだか受け入れたくないような、自分の気持ちを軽んじられたような、モヤモヤした気持ちになりませんか?
このように、相手の感情を無視して、誤った伝え方をしてしまえば、メッセージが正しく伝わらないどころか、信頼を失ったり、反感をかったりする可能性もあるのです。

言葉は「諸刃の剣」です。

心を通わすのにとても便利なツールである一方で、使い方一つで、同じ内容でも相手の受け取り方はまったく違った印象になることもしばしばあります。

プロダクト上でも同じことが言えます。ユーザーの感情を正確に読み取れないままライティングしてしまうと、「感情の押し付け」になってしまい、ユーザーを不快にさせる可能性があります。
例えばエラーメッセージや在庫切れの通知といった、ユーザーにストレスや不満を抱かせる可能性があるメッセージにおいて、あまりにフレンドリーな口調にしたり個性を出しすぎるのは不適切な場合もあります。その深刻さにもよりますが、こういった場合は、謝罪と端的な事情説明だけにしておいた方が印象がいいかもれません。

リアルなコミュニケーションにおいても、「ここは冗談を言うべき場面じゃないな」って空気は存在しますよね。あれと同じです。

これらを踏まえ、先ほどのSlack社の事例をみてみましょう。「新着機能やバグ修正のお知らせ」なので、ユーザーにとってはポジティブなメッセージですね。ユーザーの感情がポジティブに動く瞬間に、UXライティングで個性やユーモアを取り入れて、上手にユーザーに受け入れてもらっているのが分かります。

言葉でUXをデザインする=「人間らしさ」の表現

私は、UXライティングの「言葉でUXをデザインする」プロセスそのものが、究極の「人間らしさ」だなと感じます。

「言葉」は人間にとっては特別なツールです。人間は「感情の生き物」と言われますが、「感情」自体はただ自然に湧いてくるだけのものであって、社会的な意味をもちません。
しかし、言葉や行動を介して、初めてその感情が社会的な意味をもち、人は相互的につながり合うことができるのです。

このように「言葉」は、相互的につながり合おうとするソーシャルな人間が生み出した、とても人間らしいツールなのではないでしょうか。

しかし、プロダクトの先にいるユーザーは言葉を発しません。でも確実に人間ですよね(人間じゃなきゃ困る)。必ず「感情」を感じているはずです。
UXライティングとは、その表にまだ現れてない「感情」を拾い上げて、感じて、相手が受け取りやすい言葉に創り替えて「想い」を届ける行為。この、思いやりのある言葉を考えるプロセスって、究極の「人間らしさ」の追求だな〜としみじみ感じてしまいます。

この業界には、UXを考えること自体が好きというクリエイターがたくさんいます。そういう人たちと議論を重ねていきながら、プロダクトやアイディアがより良いものになっていくプロセスを味わえるのは、この業界の醍醐味と言っていいかもしれません。

Web制作って、どうしても「PV」や「CVR」といった数字を上げることにとらわれがちになる気がするのですが(もちろん数字も大事だし数字が見えるのはWeb制作の楽しいところでもある)、UXライティングはそういった目的のもっと奥にある「ユーザー目線開発」の真の目的やその価値を考えさせられる、大切な概念だなと思いました。

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