CRISPR-Cas9: (6)DNAの複製、修復

DNAの複製

DNAはタンパク質合成の設計図の役割を担っているが、細胞分裂をする際にどのようにDNAは複製されるのだろうか。

DNAが複製される時は二重らせんがそれぞれ一本の鎖に分けられる。この時に使われる酵素をヌクレアーゼといいます。
一本鎖に別れると、対になる塩基(A=T/ G=C)がくっつき、それぞれが二重らせんの構造を取る。この時に使われる酵素はポリメラーゼといいます。
KaiserScience, DNA replication の図がわかりやすいです。

このようにDNAは同じ情報を繰り返し複製することができます。

DNAの修復

DNAは常に完璧な状態を保てなくて、常に紫外線や放射線など影響や、複製の誤りにより、体の中ではどこかしこのDNAが損傷していて、その数は1日に何万回にもなります。もし損傷したまま修復されないと、正しくDNA情報を伝えることができません。そこで、細胞によりDNAの修復が行われます。

ちなみにDNA情報のうちタンパク質を作る遺伝情報は全体の3~5%程度で、それ以外はタンパク質を作るための情報になっておらず、ジャンクDNAとも呼ばれています。DNAの損傷 = 即タンパク質生成異常とはならないのです。

修復の方法について少し見ていきたいです。なお、DNAの損傷を見つけるのも、それを切り貼りして修復するのも全てタンパク質の役割です。

DNAの損傷を見つけるセンサーが働く
DNA損傷を探知する分子センサーにより細胞の様子は常にモニタリングされ、DNAの損傷部分が探知されたら修復が始まります。

二重らせんの片方のみ傷ついてしまった
DNAは"ATGC"の決まった塩基ペアがあるため、傷ついていない塩基を元に修復がされます。

二重らせんの両方が傷ついてしまった(相同組み換え修復)
"相同組換え修復"という方法を用いて、それぞれのDNAが類似のDNAを探し出してその情報を頼りにDNAを復活させます。一方の塩基を鋳型として利用して修復ができなくなってしまうので、外から持ってくるんですね。
この修復は鋳型を他の生物の塩基にすると遺伝子組み換えをすることができたりします。これはCRISPR-Cas9の遺伝子を組み込む方法としても利用されています。

DNA修復のメカニズムは2015年のノーベル化学賞の内容にもなっています。以下のサイトにその説明があるので、興味がある方は見てみてください。

簡単ではありましたが、CRISPR-Cas9の技術を理解する上で必要な生物学の内容はさらったと思います。
次からCRISPR-Cas9について書いていきます。

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