CRISPR-Cas9: (7)CRISPR-Cas9の意味と仕組み

ついにCRISPR-Cas9にたどり着くことができました。細かいことまで書きすぎず概念の理解に集中します。

CRISPRとCas9

それぞれの意味

CRISPR
"Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat"の頭文字です。日本語で言うと、「規則的な間隔で繰り返される短い回文(タケヤブヤケタ)のかたまり」です。
細菌のDNAの中に一定の回文とそれを取り巻く規則的な配列があり、それをCRISPRと呼んでいるようです。

Cas9
"CRISPR assosiated"という特殊なタンパク質を生み出す遺伝子群を意味します。この遺伝子群で9番目のタンパク質(酵素)が遺伝子編集に有用であるためCas9と呼ばれています。なので、Cas1やCas6などもあります。

つまり、CRISPR-Cas9とは規則的な遺伝子配列と酵素を生み出す遺伝子群を組み合わせた言葉です。

仕組み

言葉で書くだけだとイメージがわかないので、まずはCRISPR-Casを図で書いてみます。

CRISPR はリピート配列がスペーサー配列を介して繰り返している領域のことを指していて、そこにCas遺伝子配列が並んでいる。

この説明だけだと、この配列と遺伝子編集がどう繋がるの?って感じですね。次は、この配列がどのように働くのかを書いていきます。

CRISPRとCasは細菌のウイルス撃退システムだった

ウイルスは細菌に自分のDNAをばらまき、そのDNAを細菌の細胞内で増やし、次から次へと感染をしていきます。
細菌もやられるがままではなく、いくつか防御システムを持っており、その中の一つがCRISPRを使ったウイルス撃退システムです。

撃退方法
どうやるかと言うと、まず、ウイルスが入り混んできた時に生き残った細菌がスペーサー配列にそのウイルスのDNA情報をコピーします。


この細菌やこの細菌を元に増殖した細菌は再度ウイルスが入ってきた時に、CRISPRのRNAを作り、ウイルスのDNAやRNAにコピーしたスペーサー配列のRNAを結合させます。その後、Cas酵素によって結合したウイルスのDNAやRNAを分解することで、ウイルスの感染を防ぎます。

遺伝子編集への応用

この仕組みを解明した時に、発見者のダウドナさんは気付きます。これって遺伝子編集技術に応用できるんじゃないか?
細菌がウイルスを撃退するようにお目当の遺伝子配列のところまでRNAを使って誘導し、そのRNAをお目当の場所に結合させ、Cas9(Cas"9"が使えるというのを発見するのも大変だったようです)を使って結合した箇所を切り落とすことができると。
なお、切り落とした部分をそのまま欠損したままにし、従来DNAにコードされていた機能をなくすことをノックアウトといいます。

例えば筋肉の成長をコントロールするミオスタチンというタンパク質を合成する箇所をノックアウトすると、ムキムキな鯛ができます。

逆に、切り落とした部分にDNAの修復の仕組みを利用して正確なDNAの配列にしたり、外から新たなDNAの配列にすることもできます。

間違ってしまったDNAの配列を正しい配列に修正することで、遺伝子情報を元に鎌状赤血球症のようなDNAの欠損や配列エラーが原因となる遺伝性の病気の治療が可能になります。
また、がん細胞もDNAのエラーにより発生することからCRISPR-Cas9を利用した治療も検討が進んでいるようです。

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