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お金がない…時間がない…と思う私たちの脳に起きていること

六本木の文喫に行った際に『いつも「時間がない」あなたに(欠乏の行動経済学)』という本に出会いました。手にとった理由は、最近時間がなくてせわしないなーと思っていたからなのですが、この本の内容が思ったのと違っていて面白かったのでKindleで購入して改めて読見直してみました。


欠乏に陥った人はどんな状態になっているのか

時間やお金の欠乏が起こった際、人の脳には集中ボーナスといわれる普段よりその物事に集中できる状態が発生する。と同時に、トンネリングという副作用が発生する。この副作用は欠乏している対象以外を自分の視野の外に強制的に出してしまう現象で、事故なども起こりやすくなる。

欠乏によりトンネリングを起こしてしまうと、脳の処理能力にも影響がでる。欠乏は脳の処理の一部分を常に使ってしまうため、物事に集中しづらくなり間違いが多くなる。実験によると、ひどい寝不足よりお金の心配がある方がよっぽど脳の処理能力に悪影響を及ぼすのだそう。

このようなことがわかると貧困に困っている人たちが、より一層貧困に陥っていく原因がそこにあることがわかってくる。貧困状態の人の処理能力は劣って見えることがあるが、それは貧困という欠乏が脳に負担をかけているせいなのだ。また欠乏は衝動を抑える力にも侵食するため、我慢ができない怠惰な人に見えてしまう。

邦題タイトルに込められた策略?

この本のタイトルは「いつも「時間がない」あなたに」であり、いかにもビジネス書の棚に並んでいそうなタイトル。しかし実際に読んでみると、後半はほぼ貧困に苦しむ人たちの状況とその生活はどう改善するかという内容に終始しています。

はじめは邦題タイトルの付け方が良くないし、ミスリードだなと思っていたけど、訳者のあとがきを読んで考えが変わりました。

時間が足りないと嘆く人と、お金が足りなくて生活が苦しいと思っている人に共通する心理があり、その心理が行動に影響するために似たような行動が生まれる。この考えを検証することによって、個人や社会を悩ませている問題への理解を深めて、よりよい解決策を提案したいというのが、本書の目的なのだ。(訳者のあとがきより)

なるほど。たしかに、時間がたりないというトンネリングを起こしている人が切実に解決方法を求めてこの本を読みながら、いつの間にか貧困という社会問題に目を向けてしまう…そんな効果がありそうです。

さらに読んでいくと、 著者の二人は行動経済学を結葉して貧困等の社会問題を解決する組織(ideas42)の共同創設者だということが書かれていました。そのことを踏まえてこの本のタイトルを見直してみると、作者なのか訳者なのかわからないけどこの邦題をつけた人物がなかなかの策士なのではないかと思えてきます。

思っていた内容とは違ったけど面白かったです。海外の本特有の実験結果や例の多さがちょっとしんどかったのですが…お金や時間が足りないという状態を客観的に見つめ直したい人は是非。

そうそう、この本にも出てくるのですが、「最底辺のポートフォリオ 」もなかなか面白いです。1日2ドル以下で生活する人々がパッチワークのように日々の金銭を工面する方法が事細かに書かれていて、その器用さシステムにひたすら驚いた憶えがあります。買おうと思うと高いので図書館で借りて読むことをお勧めします。



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