データが語る「鬼」の強さ

「鬼滅の刃」一色だった2020年。自分も連載当初より愛読者であり、もちろん全巻持っており、Netflix、映画ともにその世界観に惚れ惚れしている。

元来より日本各地の郷土伝説や妖怪などの地域奇譚や鬼伝説には非常に関心が高く、いま携わっている地方創生プロジェクトでも地域に伝わる伝承や寓話、説話、風土記などはとても大切にしている。

かつて、鬼と桃太郎伝説については藤井フミヤさんと番組でご一緒させて頂いた機会もあった(本当に貴重な機会に感謝。)

*鬼と桃太郎伝説

そんな自分も、現在、全く別発想で鬼のプロジェクトに携わっており(後述)、深くご縁を感じている。

少し鬼について振り返ってみたいと思い、Google Trendsでデータ分析をしてみることにした。

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アニメや漫画では竈門炭治郎を始め、勇敢な柱たちが鬼舞辻無惨が率いる上弦の鬼、下弦の鬼たちを蹴散らすが、Googleトレンド上では、鬼が勝利を収めている。「鬼」と「鬼滅の刃」の折れ線グラフが綺麗に正比例して相似形になっているので、その関連性は言わずもがなである。なぜ鬼の方が検索数が多いのかは調査中であるが、数値として結果が出ているだけに何とか解明してみたい。

そして地域性も面白い。

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基本的には東北と九州、四国、北陸では鬼が強いという傾向だ。

例えば、鹿児島県、秋田県、高知県では99%の勝率(?)で鬼である。

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逆に、東京や京都では、鬼の力は少し封じ込められている。これは何故であろうか。本屋の数なのか?

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大阪、名古屋、福岡も同様に鬼の封じ込め力が強い。

ただ、詳しくみていると東京都内であったとしても、千代田区や新宿区、港区などの人口集中区域での鬼への封じ込め力は高いが、奥多摩や東村山では鬼が圧勝している。これも不思議だ。

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ちなみに、海外についても2004年からの検索を調べてみた。

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こちらは、「Ninja」や「Samurai」には遠く及ばず、「Oni」は世界からの検索の世界では完敗である。ちなみに各国ごとのグラフも同様であった。

しかし、ふと待てよっと思った。

文献の出現数で比較分析してみたらどうなるのであろうと思った。

日本を含めた世界の文献に登場する母数で調べてみた。

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結果は一目瞭然。「Oni」は強かった。

あえて時代として、ペリー来航以降、開国してからに設定をした。

予想通り、開国と同時に「Samurai」や「Bushido」、「Ninja」などへの関心が急増している。その伸びは現在まで続いている。

そして、「Oni」は現在、ダントツの一位だ。折れ線グラフの伸び上がりをみると、きっと鬼滅の刃の発売数と比例しているのではないかと推察してします。漫画の中での「鬼」ワードの出現数もカウントされているのかもしれない。

しかし、一つ不思議な事に気がついた。なんと「Oni」は開国以前から出現数が高いということだ。Googleの検索では、各国言語が統一されて折れ線グラフに反映されるようなので、必ずしも英語での「Oni」だけではなく、日本語での「鬼」の出現数もカウントされているはずだ。

ということで、次にこの検索母集団が遡れるマックスの1500年まで時を移してみた。

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戦国時代以前にまで遡った訳だが、なんと1560年頃に鬼ブームが起きていることがわかった。まさに「桶狭間の戦い」の年。

室町時代に作画された「百鬼夜行絵巻」が原因かなと考えたり、能や狂言が普及し始めた中での鬼伝説の普及が原因かと推測したりしてみたが、その真実は分からない。これは調べてみたいと思った。

そして、次に江戸時代はどうだったのかと思った。

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すると、江戸に入り、すぐさま「Mikado」という言葉がグンと伸びて、落ち着いた途端に「Shogun」という言葉が伸びている。少しだけ「Ninja」も出現している。

まさに戦国時代末期からの公家と武家との攻防を著しているかのようであった。大坂冬の陣と夏の陣も関係していると思う。その後の徳川幕府の士農工商、封建制度の確立に至るまでの歴史がそのまま「Shogun」ワードの出現数に比例しているかのようであった。

そしてなぜか天下太平の世の幕開けと共に、再び「Oni」がやってくる。「明暦の大火」の頃がピークだ。何か「鬼の仕業」でもあったのだろうか。これは調べてみたいと思う。

ちなみに、幕末から明治初期になると再び「Mikado」の出現数が増える。まさに蛤御門の変に始まり、戊辰戦争での錦の御旗の攻防と、明治政府の樹立に至る過程で「Mikado」がいかに重要だったかが窺い知れる。これは徳川幕府が始まった時と一緒だ。

ちなみに、江戸時代後半から「Samurai」というワードは出現が減り、「Bushido」というワードは通期で出てこない。あまりにも一般的だったからなのだろうか。明治時代以降に主に懐古主義や外国人の手記や日本分析研究の著書の中で登場しているということであろうか。いずれにせよ、面白い。

鬼という言葉の推移を見ることで、時代の流れが透けて見えるようだ。この研究はしばらく続けてみたい。

ちなみに今、我々が携わっている鬼の伝説は、奈良時代がメインの舞台だ。

あいにく1500年以前のデータはないみたいなので、室町時代以前の鬼トレンドは解析不可能だ。

まさに今進めているのは坂上田村麻呂の頃、いわゆる大和朝廷の勢力圏外のいわゆる「鬼乃國」として「まつろわぬ人々」の住む地域とされ、その境界線を巡って様々な物語が起きた時代。

我々はまさにその田村麻呂が東北最強と呼ばれる鬼「大多鬼丸」と戦い、辛勝の末に「田村市」という名前が現在残っている阿武隈山脈の周辺エリア(福島県田村市)の悠久の物語に着目し、その時代を舞台としたアニメを制作している。

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タイトルは「オニタムラ - 鬼乃國 The Land of ONI -」。

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デーモンやモンスターとしての鬼ではなく、大和朝廷から鬼と呼ばれてしまった東北地域の人々が目指したローカリズム精神、つまり「地域資本主義」と、大和朝廷が目指したグローバリズム精神、つまり「都市資本主義」とのビジョンの鬩ぎ合いと、そこで起きた地域の物語をつむぎ、1200年前から続く田村市の悠久の歴史を紡ぎ直し、地域デザインをしてみようとしている。

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12月に公開したばかりプロジェクトで、まだアニメのティザー映像のみ公開している。今後のドリームとしては、ぜひセリフを入れた物語に進みたいと考えている。

ぜひ、YouTubeもご覧いただきたい。

驚くべきことに、上述の世界の「Oni」関心層への情報のフィードをした結果、いきなり50万再生された。

実は「鬼」ターゲッティング設定をしてみたためである。これはかなり効果的であった。もちろん日本以外にも全世界向けに鬼関心層に向けてデジマ展開をしてみた。

分析してみるとアメリカ、フランス、スペインからの関心が高く、「鬼ブランディング」とデジタルマーケティング&クリエイティブの親和性は高いのかもしれない。引き続き探求してみたい。

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そしてもう一つのこだわりが、実際に世界中で活躍しているアーティストの方々と強く連携していることだ。

鬼の世界観を伝えるために、舞台でのパフォーマンスと、アニメーションをミックスした展開に挑戦している。何よりも出演しているアーティストの方々は超第一線で活躍中で、海外での知名度もズバ抜けている。

クエンティン・タランティーノ監督の「キルビル」にも出演し、剱伎衆かむゐを率いる「島口哲朗」さんが演じるのが「坂上田村麻呂」。

カッコ良い!!!

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そして、ラグビーW杯のオープニングパフォーマンスを上演した「サカクラカツミ」さん演じる「大多鬼丸」。

強そう!!

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サカクラさん率いるオリエンタリズムの美しき女性アーティストのお二人がまさに大多鬼丸の最強の従者役を演じる。

「鬼五郎」役は「エイコ」さん。めちゃくちゃクール。

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そして「幡五郎」役が「マミ」さん。古代のミラクル!!!

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そして大自然への畏怖や鬼という概念が現出した「鬼の化身」役として「源光士郎」さん。まさにその表現性が幻想的。

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そして、飛鳥時代、奈良時代、平安時代と日本は和歌の常世であったその象徴でもある「歌の化身」役として「小林未郁」さん。小林さんは今回の「オニタムラ」の主題歌の楽曲提供もしてくださっており、舞台とも今後連携したいと妄想中。

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先日の記者会見では、多いに結束力が高まった。田村市に伝わる「鬼太鼓」の方々とのコラボレーションは日本人のとしての血潮が昂る。大きな鬼面をかぶって舞い踊る幻想的な姿は必見。田村市の精神性を彷彿とさせる郷土芸能であることは間違いない。

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新聞でも報道されたが、コラボ商品も数多くプロデュース。このTシャツは、自分も早く着てみたい。

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脱コロナ厄除守りや、米、クラフトビールなども展開中。

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と、最後は少しPRっぽくなったが、いま自分自身が強く関心を持っているのは「鬼」という概念の価値背景の広さ。

まだまだ研究途中ではあるが、この「鬼」という文化資源の奥深さと歴史、そして地域文化との関連性、加えて昨今の鬼イニシアチブの高まり、これらもSBNR(Spiritual But Not Religious)観点で再編集してみたいと考えている。

鬼ブランディングの可能性と効果とはどんな所にあるのか、新たな研究テーマになると考えている。


渡邉賢一

SBNR Design Labo

価値デザイナー

XPJP Inc.


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