【超短編小説】予測不可能

「『予測不可能〜衝撃のラストにあなたは絶対騙される。』みたいに予告してくる映画とかあるじゃん?」
「あるね…。」
「俺、あれ許せねぇんだよな。」
「なんでよ。」
「だってさ、『あなたは絶対騙される』って言われたら、こっちはもう『騙されるんだろうな…。』って思っちゃうわけよ。」
「うん。」
「てことは、もし騙されたとしても、それはもう想定内の出来事になっちゃうわけよ。」
「ん?」
「だから、その作品のラストで裏切られたとしても、裏切られると思って裏切られちゃったら、裏切られた感じが無くなっちゃうわけよ。実質、裏切られてないみたいな感じになっちゃうわけ。」
「ごめん、よくわかんない。」
「なんでわかんないかな…!」
「わかんないよ。」
「だから、こっちが身構えちゃう分、裏切られた時の衝撃が弱まっちゃうわけよ。」
「あー、まあ確かに。それはあるかもね。」
「でしょ?だから、あんまそういうのは言わないで欲しいのよ。」
「なるほどな。」

(完)


 終わった…?おいおいおいふざけんなよ。なんだこのクソ映画。舐めてんのか。男子高校生二人が、しょうもない雑談を繰り広げて終わったぞ…。俺は急いで制作会社に電話をかけた。
「もしもし!」
「はい。こちらは西映ご意見センターです。」
「あの、マジでクソみたいな映画だったんですけど…『予測不可能〜衝撃のラストにあなたは絶対騙される。』…マジでなんの展開も無かったんですけど…!」
「はい。お客さまのおっしゃる通りでございます。」
「これもう詐欺とかとやってること変わんないですよね?」
「はい…?」
「だって、衝撃のラストとか言っといて、何の展開も無いんですよ…?」
「え、でも、何の展開もなかったことに対して、お客様は衝撃を受けていらっしゃいますよね?」
「は?」
「何の展開もないという衝撃のラストは予測不可能で、作品に対して『騙された…!』と思ったということですよね…?」
「いやいや、それは話が違うでしょ!」
「どのように違うのですか?」
「いや、それは…その…。」

プツリと電話が切られた。こんな無茶苦茶な言い分は流石に予測不可能だった…。



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