心に届く言葉


人と話していて、心にすとんっと落ちてくるような言葉と、するっと上滑りしていく言葉があることに気づいた。

心に落ちてくる言葉は、心を動かすことができる。
胸のあたりが、ぽっとあたたかくなったり、ハッとさせられたり。

上滑りしていく言葉は、頭を通過して理解して返事をするだけの道具に留まる。

この二つの言葉の違いは何なのか。
朝昼兼用のあんバタートーストを食べながら、今さっきふと思いついたので記録に残しておきたいと思う。

それは、相手に自分の心を見せたかどうか、なのではないか。
心、というのは、感情であったり、気持ちであったり。
心を見せる、というと、なんだか抵抗を感じてしまうかもしれないが、心を見せるということは、シンプルに、自分がこの出来事に対して何を一番強く感じたか、心と向き合った上で言葉にすることだと思う。

私がこれまで感じてきた中で、きっと相手の心に届いたのではないかと思う気持ちが二つある。
それは、あなたに感謝している、あなたを大切に思っているという感情だ。

感謝、について
私は以前インタビューを受ける経験をしたのだが、記者の方の質問に答えていった後の、相手方との対談の時に、感謝を伝える機会があった。
私は、何を話すか内容を考えてきてね、と事前に言われてから、色々と考えてみたのだが、どれも自分の言葉ではないようで、しっくりこなかった。
インタビュー前日となり、何もしっくりこないので、よし、もうこれは思ったことを伝えようと思い、私の心と向き合ってみた。
一番、これだけは伝えたいと思ったこと、それが感謝の気持ちだった。
インタビュー当日、記者の方からの質問が終わった後に、相手の方との対談で、感謝の気持ちを伝えた。
なんだか新鮮だったが、相手の方は泣いて喜んで下さった。

あなたを大切に思っている
これは、親友の話。病気で去年亡くなったのだが、死と向き合わざるを得ない状況になった彼女と、電話で話していた時のこと。
私は、彼女を傷つけるのは、病気だけではなく、周囲の人の上滑りしていく言葉であったりすることに気付いてしまっていた。だからこそ、私は何としてでも彼女の心の側にいたい、彼女を一人にしたくない、という思いでいた。だけど、結局は無力な自分が悲しかった。
この電話をしていた日、初めて彼女は、“死ぬのが怖い”と言った。私は情けないことに、慰めるどころか自分が号泣してしまった。
そうだよね、怖いよね、と言いながら号泣。彼女も号泣。そのあと取り留めもない話をして、最後に、私のためにないてくれてありがとう、と言って、彼女は電話を切った。
彼女がいなくなってから一年。彼女のスマホから私に当てたメモが見つかった。
あの日の電話のことが書いてあった。
ただただ私の話を聞いてくれて、そして泣いてくれた。心を共有してくれたような涙で、本当に嬉しかった。
人のことを本気で思ってくれてる涙だった気がする。
そう、書いてあった。

この二つの感情が、これまで私が生きてきた中で、心に届くと感じた感情だ。
もともと人と関わることが好きではなかった私だけど、心が通じ合うことの幸せを一度知ったことで、人と関わりたい、と強く思うようになった。

そのために、私は言葉を紡ぐ。沢山の本を読む。
自分の感情の表し方を、言葉の引き出しを、沢山ストックして、伝えていくために。

心のコミュニケーションって、なかなかいいものだよ。

あなたの大切な時間を使って、ここまで読んでくれて、ありがとう。

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