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2019年の女性、社会、テクノロジーのうねり

私にとって、2019年は女性として複雑さに浸った年だった。
女性×社会の領域は、長い歴史で多くの思想や運動があるが、今年はテクノロジーが合わさったことが印象的。

2010年代半ばに起きたうねりが、社会や経済活動としてのテクノロジーと、2020年以降、どのように相関してくのか考えてみた。

▼2019年の代表的な女性×社会の動き
・海外編
・日本編
▼海外は数年前より女性の社会起業分野が活況
・多くのヘルステック(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ関連)起業が登場し、既存大手が目を向けていなかった分野に参入し、不可視の課題を顕在化。
▼欧米スタートアップの大型資金調達
・投資側のジェンダーバランスで、理解されずらい分野ではあるが、ヘルステックで女性たちが躍進中。
▼国内のヘルステック以外の「女性×社会」をたすけるテクノロジー
・Seek H
・痴漢レーダー
▼今後の国内の「女性×社会×テクノロジー」分野で重要なポイント
まとめ

2019年の代表的な女性×社会の動き【海外編】

テクノロジーでは、女性のタブー視されていたヘルステック領域(フェムテック)での経済活動が活発化して、女性にまつわる社会課題はSNSというテクノロジーで世界に伝搬されるようになった。

震源地は間違いなく2015年に起きた、#MeTooで、その余波から日本でも女性×社会のSNSアクティビズムが起こり、海外や日本では女性×社会が、常にSNS上での話題に。

具体例として、まずは海外で起きたことをいくつか。

フィンランドから最年少の女性の首相誕生
世界最年少の首相として選ばれたサンナ・マリン氏は幼い頃、貧困を経験し同性婚の母親に育てられた経歴も話題になっている。


グレタ・トゥーンベリ氏の気候変動についてのスピーチ
スウェーデンの16歳によって世界に波及した気候変動運動。
物申す少女として、トランプ大統領とのTwitterでのやり取りや、未成年女子が主張することや、後ろ盾の存在など大きく話題になっている。


女性のステレオタイプ化を打ちやぶる潮流「ボディ・ポジティブ」の台頭
ポップスターのリアーナは下着ブランドSavage x Fentyをラグジュアリー企業「LVMH」の傘下から発表。
アメリカの下着ブランドといえば、白人系の細い体型のモデルが多かった中で、実際の国民たちの体型と解離があり、あらゆる体型や人種を応援する「インクルーシブ&ボディポジティブ」を掲げた。#MeToo問題で低迷したヴィクトリアズ・シークレットに追い討ちをかけたとも言われている。


ノンバイナリーの一般化
「女性×社会」を超えた性別と社会の拡張を現すニュース。
男女の二項対立の言葉だけで語れない多様性に目を向けるべきときがきた。

アメリカの英語辞書「メリアム=ウェブスター」が、今年の言葉に「they」を選んだ。メリアム=ウェブスターはすでに「they」の項に、性自認が男性でも女性でもないノンバイナリーの人たちを表す単数形の代名詞という意味を追加


2019年の代表的な女性×社会の動き【日本編】

KuToo運動は世界からも評価
発起人の石川優実氏は、BBCでは世界の人々に影響を与えた「100人の女性」に選出された。流行語大賞の候補にも選ばれた。


伊藤詩織さん性的暴行事件での勝訴
日本の#MeTooの代表的な事件で、ジャーナリストの伊藤詩織氏の勝訴が世界で報じられた。
政治的側面や、ものごとをゴシップ化する輩は置いといて、このニュースを機に、各々状況は違えど「性的同意」についてSNSで書いている女性たちを何名かみた。伊藤氏の行動や発信により、女性たちがこれまで伏せていたものを語り出したように感じた。


メディアで日々報じられる出生率数の低下
社会構造の課題だけが報じられ、具体的な策を語られる場が少ない。


世界での日本のジェンダーギャップ指数の後退
世界153カ国のうち、121位に(2018年は110位)。
このニュースに対して、私を含め多くの女性たちは落胆した。


海外は数年前より女性の社会起業分野が活況

「海外は進歩的で良くて日本がダメ」という気は無いが、明らかに遅れをとっている領域があるのは確か。

2014年頃から、多くの女性に向けたヘルステック起業が登場し、既存大手が目を向けていなかった分野であるリプロダクティブ・ヘルス/ライツの領域に参入している。
ジャンルとしてはフェムテック(Femtech:Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を掛けあわせた造語)と言われ活発になっており、あらゆるメディアで2025年に世界でも500億ドル以上(約5兆円以上)の市場規模と言われている。
私が以前にFemtechについて書いた記事はこちら。

リプロダクティブ・ヘルス/ライツとは、妊活、避妊、予防医学などあらゆる権利を包括している。

・すべての個人とカップルが、子どもを産むか産まないか、産むならいつ産むか、何人産むかを自分自身で決めることができること
・安全に安心して妊娠・出産ができること
・子どもにとって最適な養育ができること
・他人の権利を尊重しつつ安全で満足のいく性生活をもてること
・ジェンダーに基づく暴力、児童婚、強制婚や、女性性器切除(FGM)などの有害な行為によって傷つけられないこと
・強要を受けることなくセクシュアリティを表現できること
・誰もが妊娠・出産、家族計画、性感染症、不妊、疾病の予防・診断・治療などの必要なサービスを必要な時に受けられること
セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR:性と生殖に関する健康と権利)とは

Appleも2019年から、Apple Watchの機能に追加するなど、生理、妊活、更年期障害といったタブーをポジティブに自分でコントロールできるものとしてセレブリティにも親しまれている。

日本医療政策機構「働く女性の健康増進に関する調査」(2018)では、日本の働く女性の70%は定期的に婦人科検診を受診していないという調査結果も出ているため、ヘルスリテラシーの低さを補い、医療へのアクセスを啓蒙する必要がある。

・望んだ時期に妊娠できなかったという人が半数
・生活に影響を与えるPMS(月経前症候群)の症状があっても何もしない人が多数
・子宮や卵巣の病気に対して知識があるのは全体の半数以下(約40%)
・ヘルスリテラシーの低い層はがん検診も受けない傾向がある
など


欧米スタートアップでは女性たちが躍進中。

ユニコーンと言われる急成長スタートアップで女性CEOが占める割合も年々増加してきている。

資金調達額の伸び
2019年、Femtechは約5年をかけて「ニッチ市場」を脱したと言われるほど躍進している。

以下は、たくさんのFemtech企業が資金調達しているその一例。

Modern Fertilityは1500万ドル(約16億円以上)調達
自宅で不妊検査のための、ホルモンテストができるキットを元に、医師から様々なレポートを受けることができるサービスを提供するスタートアップ。


Nurxは5200万ドル(約55億円以上)調達
スマホなどから手軽にオンライン診察で低容量ピルなどを処方できるスタートアップ。


Willowは総額1000万ドル(約100億円以上)調達
授乳中の母親が使える、装着したまま搾乳や保存ができるウェアラブルデバイス。


Peanutは総額500万ドル(約54億円以上)調達
ヘルステック領域のFemtechと少し毛色のちがうママ友探しマッチングアプリPeanut。(日本ではママリなどもあるが)母になってから相談相手を探しにくかったCEOが発案。マッチングアプリ風デザインで親友探しができることが評価されている。


国内のヘルステック以外の「女性×社会」をたすけるテクノロジー

日本のFemtechはまだまだ黎明期だが、卵子凍結サービスを個人や法人の福利厚生向けに提供するStokkや、オンライン診察で低容量ピルの処方ができ資金調達もしているサービス、スマルナがある。

また、ヘルステック以外でも「女性×社会」の課題に着目したサービスが出てきている。

痴漢レーダー
被害に会う人も、冤罪を避けたい人にとっても社会的意義のある「みんなで痴漢を撲滅」に導くサービス。

Seek H
身近な相手に対しても必要な「性的同意」という課題を、ポジティブなコミュニケーションで解決しようと試みているサービス。


今後の「女性×社会×テクノロジー」分野について

まだまだ欧米に比べ、女性の起業家の原体験由来の社会起業は、投資家が圧倒的に男性が多い日本では理解と機会を得ることが難しい。

盛り上がってきそうなFemtechは推していきたいが、「女性だけの課題」とせず、リプロダクティブ・ヘルス/ライツとして、あらゆる人々の課題として、プレイヤーを女性だけに限らない男性のヘルステックを考えていくべきかもしれない。
不妊の原因発見や啓蒙については、seemが有名だが、それ以外にも男性への啓蒙や研究も最近は増えてきている。

NY発のスタートアップ は、Queerly Healthはリプロダクティブ・ヘルス/ライツのケアや、日々の診察、治療について病院へ足を運ぶことにハードルの高いLGBTQの人に向けたオンライン診察、処方をするサービスを準備中。

日本では、LGBTQに向けた包括的な視点を持ったブランドコミュニケーションや、サービスが足りていないため、この領域が伸びていくことも期待し応援したい。

日本の出生率の低下については、結婚平均年齢の上昇、子どもの養育費の問題、家庭と仕事の両立などの複雑な社会構造が絡んでいるため、安易に対策を書くこともはばかられるが、産むにせよ産まないにせよ、あらゆる性別の人のリプロダクティブ・ヘルス/ライツが人口に影響を及ぼすのは間違いはない。
個人的な意見として、同性カップルの養育支援、代理出産など日本では法整備が整っていない分野は進んで欲しいところ。

海外では、より包括的な動きが出そうな2020年代に、日本が取り残されないよう、以前のFemtech事例紹介note書いたように、
・がんの早期発見
・育児支援(母乳育児や産後うつ対策)
・更年期障害ケア
を叶えるものが増えるだけでなく、男性に向けたものや、LGBTQも包括したサービスや行動が増えてほしい。



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