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高雄市長・韓國瑜氏に対するリコール成立

 今日6月6日、高雄市長・韓國瑜氏に対する解職請求の住民投票が行われ、賛成票が規定の全有権者の1/4を上回り、罷免される見通しになりました。高雄市は人口約270万の直轄市ですので、日本で言えば都道府県あるいは政令指定都市にあたる機能があり、その首長がリコールされたことになります。台湾では史上初です。

 台湾報道ではここ数週間はこの報道が大きく扱われており、どのような経緯でこうなったのか、説明していきたいと思います。

2018年11月 統一地方選挙

 韓氏が騒がれだしたのは2018年の統一地方選です。このときは各地で縣市長の選挙が行われましたが、とりわけ注目されたのが高雄市です。

 高雄市を中心とする南部は元来民進党の地盤でした。このときの選挙では、長年市長を勤めたアフロおばさん・陳菊氏が退任し、後継の民進党の候補VS国民党・韓國瑜氏という構図でした。韓氏は庶民派としてそのキャラクターとしゃべりの旨さで絶大な人気を集めます。あまりにも韓氏にまつわる報道が多く、選挙戦が公平ではないとクレームが付いたほどです。

 かくして韓氏は選挙戦に勝利、高雄市長に就任します。

2019年7月 総統選候補者選挙

 来る2020年1月の総統選に向けて、この頃国民党では候補者選びが進められていました。元々の本命は日本ではSHARPの親会社として有名な鴻海精密工業の創業者・郭台銘氏でした。韓氏は当初は出馬について固辞していたものの、人気にあやかりたい党本部の意向もあったのか、最終的には出馬しこの候補者選挙に勝利、高雄市長に在職のまま休暇をとって総統選に出馬することになりました。

 今思えばこの時点でどうなのかなって感じしますね。自分の街の市長が職務ほっぽりだして別の選挙に出てたら「え?」ってなりますよね。

2020年1月 総統選挙

 本選は事実上、現職の民進党・蔡英文氏VS韓氏の争いとなります。選挙戦当初は韓氏がリードしていました。蔡氏の政策はこれまで通り中国とは一定の距離を置こう、というものだったのに対し、韓氏の政策は経済を重視し、中国に寄っていこう、というものでした。実際19年前半までは中国による経済的嫌がらせもあり、蔡氏では状況の改善が見込めないことから、韓氏がリード、という状況でした。

 しかし夏になると状況は一変します。なにがあったかというと、それは香港の民主化デモです。中国に寄ることの危険性が広く認識されたことで世論が一気に逆転、終わってみれば200万票以上の大差で蔡氏の圧勝という結果になりました。韓氏は香港デモに加えスキャンダルに見舞われたり、運がなかったとも言えますね。

 ちなみに台湾では選挙は一大イベントです。遠方に仕事に行っている人もみんな地元に戻り投票するため、交通機関は大混雑します。1月の総統選の投票率は70%を超えています。

2020年6月 罷免投票

 その後落選した韓氏は高雄市長の職に戻っていました。結局数ヶ月の間休みをとって選挙活動をしていた韓氏に対し、高雄の一部市民は総統選の選挙戦中から解職請求の準備を進めていました。

 住民投票は6月6日に行われることが決まり、各所で投票を呼びかけていました。合言葉は「666投票罷」です。歩道に型を置いて高圧洗浄機で吹き付けてメッセージを描いていたのが印象的です。

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 結果は冒頭の通り、罷免が成立することになりました。解職後は代理の市長が立てられ、9月に市長選挙が行われます。今日の夜のニュースでは代理に誰が送り込まれるのか、韓氏は今後どうするのか、民進党は韓氏を追いやったことで次のターゲットは誰か、という話題が上っていました。

 一般的に選挙で選ばれた公人が他の選挙に出るなら、まず今の職を辞してから、というのが筋と思いますね。

 以上、速報でお伝えしました。

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