空が落ちてくる

あまりに仲睦まじく、引き離された女神と男神がいた。
その二人を引き裂いて、天と地ができたという伝説がある。

互いにそれらは求め合い、天と地を繋ごうとするのだという。

時に雨となり、時に雷となり、時に大波となり、時に竜巻となり。
互いに繋がろうと必死に手を伸ばし合う。

誰かが言う。
それは無理なのだと。
神の怒りをかった者は、決して思う通りにはならないと。

誰かが言う。
無理ではないのだと。
それの為に手を伸ばし続ければ、神さえも超越するのだと。

怒りで破壊することも、哀願によって絆されることも、辞さなければ。
その果てに再び、天地が交わることになるのだと。

怨嗟の声が響く。
なぜ我らは引き離されなくてはならなかったのかと。
仲睦まじきことはそれほどまでに罪だったのかと。
なぜ我らは引き離されなくてはならなかったのだ。
それ故に他者の育む愛を見下ろし続けなければならないのだと。

怒りの声が、嘆きの声が、怨みの声が、木霊する。
呪いの声が地に満ちる。
愛した者が蝕まれていく。

取り返しのつかぬほどに、大地は荒れ果てた。

大地は嘆く。
美しいひとよ、なぜそんなにも呪いをかけるのか。
それほどまでに愛していると、これほどまでに痛感する。
妬みの声は己を縛り、やがては己が息絶えてしまうのに。
ああ、どうか愛しいひとよ、それほどまでに愛されていると知っている私は、幸せなのだとどうしたら伝わるのだろう。
天は遠く、私からは届かない。

だから見せよう。
美しい花畑を広げよう。
あなたの心が少しでも和むように。
それでも嘆きの止まらぬあなたへ、私はただ受け止めよう。
あなたの涙、あなたの怒れる雷、全てを受け止めよう。

どうか、気付いて欲しい。
あなたの愛によって私は満ち足りている。

どうか、どうか。
私の幸いが、あなたの嘆きを和らげますように。

あなたをいつも見上げる私は、あなたの想いをこの身に受ける私は、誰よりも幸いであるのだと、あなたに届きますように。

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