09 Poetics

音色の重心が低く落ち着いた雰囲気を感じさせる一方で、静けさの中で高速で刻まれるビートが印象的。アルバム中では珍しく、アンビエント的な柔らかな響きのコードの連結がメインとなっている。メランコリックで美しい楽曲。


楽曲全体の概略は次の通り。

画像1


以下に楽曲のメインとなるコード(概略図の"Chords")の譜面を示す。

画像2

Low Pass Filterで削られたような倍音の少ない響きで、深いリバーブの影響もあり、静謐な印象を与える。

全体は48小節という非常に長い周期でループしており、前半の1〜12小節と13〜24小節、後半の25〜36小節と37〜48小節は類似している。楽曲全体で3.25回ループするが、適宜音が間引かれている箇所もある。


一方でビートは18小節単位でループしており、ここでも3と4の"ずれ"による構造化が行われている。楽曲の概略図での色分けは、18小節全体を、6小節ずつ3分割したもの。


ビートは、18+18+12=48小節で一旦停止する。これは"Chords"の1回目のループが終了するタイミングと一致している。

ビートが停止すると同時に"Chords"の音も一旦止まり、"Celesta"の音色が登場する。非常にメランコリックな場面。


ビートは12小節後に復帰するが、18小節周期のうち、停止前に12小節使用していたため(概略図の緑と水色)、復帰時は残りの6小節分から再開する(概略図の藍色)。


"Chords"の3回目のループ開始と同時に、高次倍音を多く含んだシンセ音("Synth")が導入される。フィルターの深いレゾナンスのためか、音程が曖昧になり、フィードバック音のようにも聴こえ、遠くから響いてくるような、悲しげで物寂しい印象。


深い残響の余韻と共に楽曲は終止するが、最後のコードはCmとなっており、これはアルバム冒頭のコードと一致する。アルバムの始まりと終わりに同じコードを置くことで、作品全体の円環が閉じられている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?