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日本で結構多くの人が誤解しているかもしれない新型コロナウィルスの各国の状況

少しずつ世界の現状の分析も出始めているし、オリンピック開催が延期になって、日本もこれで表立って積極的な対策に乗り出すと思うので、だんだん論調も変わっていくかもしれないけど、今までの日本のいろんな人たちのコメントをみて、誤解があるかもしれないと思ったので、気になっている点をまとめてみた。

まず、「全員検査か、検査を絞るべきか」という論点について、イタリアも他の感染が拡大しているほとんどの国でも、全員に検査をするという方針は取られていない。(国民の全員検査を行なったのは、私が知る限りは人口が少ないアイスランドくらい) 基本的に、発熱や咳などの症状のある人を対象に、他の感染者などの接触について電話やアプリで遠隔診断したうえで、必要に応じて検査を実施していて、無差別の検査や全員検査は行なっていない。少なくとも、欧州各国の状況を見ると、検査の予約なしに、いきなり病院に検査希望者が殺到している訳ではない。政府や地方自治体も、まずは電話が窓口になっている。マドリードでは電話だけでは対応が追いつかず、アプリでの対応も始まった。

また「検査をたくさんするから、無症状や軽い症状の人が溢れて、医療崩壊が起こる」という見解もいまだに見かけるが、病院には人工呼吸器の補助を必要とする重症者が次々に救急車で運ばれており、検査で陽性になっただけの感染者で病院があふれることで医療崩壊が起こっているのではない。症状の軽い感染者は、基本的には自宅で隔離することになっている。

ちなみに、いわゆるハイリスク層である老人や基礎疾患がある人だけでなく、健康な若い人でも人工呼吸器を必要とするほど重症化する人も一定数いて、本来は体力のある若者は人工呼吸器の使用で回復する可能性が高いはずが、あまりに多くの重症者が増えると、機材や医療スタッフの不足のために、手当てが受けられず、死亡のリスクが上がってしまう。スペインで感染者が最も集中しているマドリードの死亡率は、11%と非常に高くなっており、他の地域の倍以上もある。

コロナの一番の問題はまさにその点で、市中感染が始まれば、指数関数的に感染者が増大し、先進国の医療水準であっても、助けられる重症者の数の上限をあっという間に超えて、ほんの数日で医療崩壊が起こり得る。実際、マドリードでも、たった10日ほどで状況は一変した。例えば、日本の医療のキャパシティが、スペインの倍だったとしても、同じような増加カーブになれば、3 日ほどの猶予があるにすぎない。

マドリードでは、最初の数日は「コロナウィルスによる初めての死者、99歳の感染者」などと報道されるのを「残念だけど、さすがにその年齢では...」などと、呑気に眺めていたら、10日後にはあれよあれよという間に死者が2500名を越し、ショッピングセンターのアイスリンクに遺体が収容しきれない並べられることになった。このようにあまりに早すぎるスピードで事態が進行することは、医療関係者も含めて、ほとんどの人が想像できなかったと思う。ほんの10日ほど前は、「4月の半ばのセマナサンタ(イースター)頃には、流石に収まっているだろう」などと楽観的に話していたのが、今となっては信じられない。

一度、市中感染が始まると、「緩やかな感染カーブ」というのは不可能で、ものすごいスピードで感染者が増大し、ある一定を超えると急速に死亡率も高まる。こうなったら「集団免疫」や「ピークカット」という戦略のままでは、老人だけでなく、若者の命も想像以上に多く失われる。英国が昨日になって戦略を変えて封鎖に踏み切ったのは、この急激な負荷には、ほとんどの国の医療システムは耐えられないからだ。(そのような点で、感染者は多いものの死者数が抑えられているドイツはかなり凄いと思う。それでも国境の封鎖や、バイエルンの都市封鎖は実行している)

しかし、3週間ほどの期間、多くの国民に自宅検疫隔離を実行してもらえれば、全体の感染者の半分(全員検査をしたアイスランドのデータによれば)と言われる症状がない無自覚のウィルス感染者や、潜伏期間中のキャリアたちが、さらに多くの人に感染させる連鎖を断ち切り、理論上は人と人の間に蔓延したウィルスを一掃できる。

とはいえ、封鎖でウィルスを一掃できるというのはあくまで理論上であり、実際には封鎖中であっても、流通や製造、医療など、完全に止めることができない業種もたくさんあるし、いくら厳しく取り締まっても封鎖破りもあるので、完全にはゼロにはならない。しかも、各国内で蔓延を抑えたとしても、海外から再び流入するリスクは常にある。つまり3-4週間の厳しい封鎖を行った後も、海外からの入国者に対する検疫強化や、今推奨されているような予防対策(人と人との間の安全な距離2メートルの確保、マスクや手洗い、施設な消毒など)は、おそらくワクチンや治療法の確立までは、続くだろうと思う。

市中感染が広がり感染経路が追えなくなっても封鎖を行わない為には、それこそ全員検査して、感染者と非感染者を完全に分離するしかないと思うが、おそらくこれも理想論にすぎず、実際には感染初期にウィルスが充分に増殖しておらず検査で検出できないケースもあり、一度陰性であっても偽陰性や、検査後に再び感染するケースもあるので、結局は何度も繰り返し検査してもキリがない。それもあって、全員検査するよりは、結局はもっとも合理的な対策方法として、欧州の多くの国が一時的な封鎖という戦略を取っている。

※あくまで個人的な見解です。違う意見や見解があることも理解しています。

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