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海外在住ジャーナリストによるウェブメディアを作りたい

今年の春に知人の紹介でベルギー在住の日本人ジャーナリストと話す機会があった。最初は、確かスペイン在住でライティングできる人はいないか?とか、ジャーナリスト協会のウェブサイトについての話だったと記憶しているんだけど、いろいろと話していくうちに、日本では海外事情、特に政治や社会的な問題が書ける媒体がどんどん減っている、という話になった。

欧州の報道を見ている限りでは、世界はパラダイムシフトともいえるくらい大きな変化の時期に直面していて、ものすごい勢いでこれまでのルールそのものが変わっていくのを感じる。それなのに、日本は内向きの芸能人のスキャンダルやネットでの誰かの失言コメントの炎上に気をとられるばかりでいいのか?海外情報といえは、「海外で流行っているスイーツ情報」か、もしくは「海外はなんか大変そうだ。やっぱ日本最高」でいいのか?そんな日本のメディアに不安をかきたてられる人は、在外日本人だけでなく日本国内にも実は結構多いのではないかと思う。

ここ10年、特に2011年の震災以降、自分の人生だけでなく国や社会全体に対して関心を持ち、「他人任せではなくてちゃんと自分で知りたい。考えたい」という人も増えているという実感がある。10年20年前の日本ならば、もし政治や原発に関心があると言うと、何かの活動家かと思われて、回りから敬遠されるような雰囲気もあった。そんな10年前、日本からスペインへやってきた私は、語学学校でいろんな国からやってきた人に出会い、10代の若者でも政治についての自分の立ち位置や意見をしっかりと持って議論できることに正直とても驚いたと同時に、当時すでに30歳であるのに自国の政治や社会問題に無関心であった自分を恥じた。しかし今は日本の状況も変わってきている。政治や社会問題についての持論を持ち、それらについての議論をすることは、そこまで奇異なことでもなくなってきたように思う。

人々は変わりつつある。でも、まだメディアが追いついていない。相変わらずスポンサーのための番組作り、炎上狙いのウェブメディアも見かける。海外在住のジャーナリストにもそのようなコンテンツが求められるケースが増え、もどかしい思いをしている海外在住ライターも多いという話だった。そもそも先進国の、しかも民主主義の国で報道専門チャンネルがない、というのもなかなか情けない状況だ。これでは深く健全な議論は育たない。敵と味方、勝ち負けを決めるディベートではない、誰を悪者にして安心する世論ではない、「今目の前にある問題を皆で協力して解決する」ための議論ができるベースとしてのメディアが必要だ。

そんな状況を少しでも変えるべく「スポンサーを持たない、自分たちのメディアを作ってみよう」と海外在住のジャーナリスト・ライターたちと一緒に立ち上がることにした。完全に各自手弁当、でも「海外に住む日本人ジャーナリストとして、今言うべきと信じること」を発信できる自分たちのメディアをスタートさせた。

SpeakUp Overseas http://www.speakupoverseas.net

立ち上げ中に欧州で連続してテロが発生し対応に追われたり、あまりの悲しい事件に無力感を感じてモチベーションを維持するのが難しくなる状況があっても、「それでも、やっぱり、それだからこそ実現したい!」という思いは止みがたく、とうとうベータ版として公開までこぎつけた。一人でも多くの方と、海外に住み日本とは異なる視点から世界を見ている日本人ジャーナリストの皆さんの視点と現場の声を共有してもらえれば嬉しいと思う。

そのうちスペインからも何か書かせてもらいたいとも思っているので、その際はどうぞよろしく。

※本記事は無料ですが、ぜひ投げ銭でSpeakupのプロジェクトを応援してもらえると嬉しいです。よろしくお願いします。

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