見出し画像

出品

家内と、ずいぶん前から断捨離をしようと言っている。とにかく、捨てて捨ててすてまくろうと、言っている。だが、なかなか捨てられない。特に、家内がダメなのだ。

まだ使える。勿体ない。

思い切って断ち切るのが断捨離だと諭しても、どうにもこうにも、腑に落ちない。私が捨てようと廃棄場所を作り、そこにどんどん積み上げていくと、分別が違うとか、これはまだ使えるとか、売ったら10円にでも100円にでもなるのだと言い張る。そして廃棄の山がどんどんとストックへと戻され、結局は家から出て行かなくなる。いつかは持っていく。売る。と言ったまま実現されずにそのまんま残されていく。

私の一念発起や費やした時間は....徒労とは、このことである。

家内と私は、違う人間なのだから、どうしても価値観の埋めきれない溝くらいは、ある。だから、この春、大きく方向転換することにした。特に家内は、まだ使えるものをわずかな金額にでも換金したがる。そこには、時間、空間、エネルギーをまず第一にという考え方は無い。だが、これが家内の価値観なのだから仕方がない。そこに、私は、一緒に取り組むことにした。

フリマアプリに、一緒に出品するのである。

ホームステイの期間に、家内がアカウントを作った。相場の調査は家内が担当。そして私が写真を撮り、掲載する文案を出す。最後に出品金額を相談して決め、家内が出品する。梱包や出荷は、すべて一緒にする。

この3ヶ月間、いろいろあった。ちょっとした揉め事もあった。まだまだ熟達の域には程遠く、長女の知見を常に借りて出品作業をしている。が、だんだん家内と私に変化が訪れてきた。

出品できる品物に、少しずつ限りが出てきたのである。

出品すると言っても、何でもかんでもとはいかない。そして売買が成立すると出荷しなければならず、それには送料がかかってくる。それ込みで売買するわけだから、送料が高ければそれだけ相場料金に見合わなくなる。すると必然的に、大物は相当相場価格が高く人気の商品でなければ出品行為自体が成立しなくなる。

そもそも、実は私には思惑があった。家内に、私たちが廃棄しようと思っているものは、思うほど値がつかない。そのわりに取引には責任が伴い気苦労が絶えない。つまりは、出品自体がエネルギーの浪費なのではないかということを少しでも知らしめようということだった。

この下心は相当程度当たってきていて、家内は倦怠期に入りだしている。

しめしめ。そろそろ捨てるが勝ち、と、切り出してみるか。

浅はかな私はそう思っていた。確かに。だが、私の心の中のリトル私が、悪魔の囁きをするのである。

もう少し、やってみようよ。

私は、通販で、写真を撮るときのバックや下敷きに使える背景布を、白黒セットで購入した。かなり大きい。素人ではあるが、少しでも写真の質をあげようと画策するためだ。そして、掘り出し物はないか、部屋の隅をつつくようになってきた。

ミイラ取りがミイラになるとは、こういうことを言うのだろうか。こんなことをし始めると逆に家内からお叱りを受けそうだ。

いい加減、諦めて捨てなさい!!

我が家の断捨離は、まだまだ遠い未来だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?