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voidをデザインする

愛知県で(株)東海ハウス豊橋がプロデュースしている住宅地の計画をしています. いくつかの住宅をまとまったかたちで計画するというのは普段とはまた違う視点が必要になります.
設計するときにはいつも周辺との関係性は重視していますが, いくつか同時にということになると, 群体としてのプロポーション, おおげさにいえば街並みについて考えなければいけません.
一般的な住宅地では四角い建物を敷地の北側に寄せて計画することが多く, そうすると家と庭の関係が画一的になってしまい, あの見慣れた住宅地の風景になるのですが, それがもったいないなと思うことがあります. 庭(void)と住宅(volume)の関係がなるべく多様になるような住宅の型を模索しつつ, それがいくつか集まったときに単体であることを超えた魅力を発揮するものになれば良いと思います.

以前、設計したLWB/広沢の連棟(http://karmanstudio.net/works_LWB.html)でも同じようなことを考えていました. ボリュームの大きさとそのコンポジション, 様々なテクスチャを使いながらも調和していること, そして何よりも, あえて道路側(北側)へ庭(void)を挿入することでその緑が街並みに寄与するような建築のあり方を考えました. クライアントの方が, 古くからここにあった梅の木を残したい, それはここを通る人に少なからず季節感を与えていたものだと思うから, という想いがあって実現しました. 敷地境界線の中で完結せずに, 外にまで滲みだしてくような建築は魅力的です. こうしたコモンへの意識があるクライアントに出会えることはすごく嬉しいです.
地区計画や景観条例といったネガティブチェック的なものとは反対のポジティブな街並み参画とでもいえるでしょうか.

敷地境界と街並みということでいうと, 以前訪ねた長野県小布施町のまちづくりは素晴らしいです.
(https://www.town.obuse.nagano.jp/town-development/docs/about.html)
栗鹿の子で有名な小布施堂さんを中心とした関係者と建築家の宮本忠長さん, 行政が作り上げた街並みは, 「内は自分のもの, 外はみんなのもの」というコンセプトでつくられています.
味わいのある建物群をすり抜けるように巡る街の体験は, 敷地境界線がバチバチしている塀だらけの現代の感覚だと, ここ人のお庭じゃないの!?通っていいの?となってしまうほど濃密です. 生活者たちのコモンへの意識があるとこんな街もできるのです.

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