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ランドマーク(10)

【塔】

 二十一世紀初頭の技術革新によって完成した、地球表面と静止軌道を結ぶ長さ約十万キロメートルのワイヤー。一端は地表に、もう一端には宇宙港として小さな基地が固定されている。ワイヤーはその先まで伸び、カウンターウェイトとして巨大な金属塊が括り付けられる。最初のエレベータが太平洋の公海上に建設されたのち、群発的に世界各地で建設が進められた。頻発するテロリズムに対処するため、また航空機などの衝突を回避するためにワイヤーは電磁障壁を発生させる囲いで覆われ、その姿から塔と名付けられた。(ウィキペディアより)

 そしてそのうちの一つが、この街に建設された。教育機関を巻き込んだ根気強い誘致活動が実りを結んだのだ。都心部と地方の経済格差を是正するため、人口流出を防ぐため、十分な土地と環境を確保するため。理由はいくらでもあった。問題は、そもそも宇宙エレベータをこの国の真上に向かって建設するのは現時点で不可能に近い、ということだった。
 その最大の障害を取り除いたのがわたしの父だ。父は新素材から開発されたテザーに植物の枝と類似した構造を持たせた。大きくしならせることで、もう一端を赤道上に固定できるだろうと理論立てたのだった。

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