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レッドブルのマーケティングトレース

はじめに

エナジードリンクといえば名前の上がらないことのないレッドブル。
エナジードリンク市場をここまで拡大させたレッドブルの戦略を分析したいと思います。

基本情報

まずはレッドブルの基本情報をみてみます。

基本情報

ビジョン・理念は、CMでもおなじみの「翼をさずける」のフレーズ。
また、レッドブルの缶に書いてあるのは、「ココロ、カラダ、みなぎる。」の言葉です。「翼をさずける」のイメージとも相まって、単なる体力回復的な役割だけでなく、精神的な部分も高次元に押し上げてくれるような印象を受けます。

PEST分析

レッドブルを取り巻く環境分析を行います。

PEST分析

政治の面から言うと、働き方改革により遅くまで仕事をする人が減ることでエナジードリンクの需要も減るのではないかと感じる人もいると思います。しかし、それに反してエナジードリンク市場は拡大しています。これは、エナジードリンクが長時間労働を乗り切るための眠気覚まし・疲労の回復目的だけでなく、仕事の生産性を向上させるためや、勉学に勤しむ学生や、スポーツをする人々にとっても需要のある飲み物であり、労働時間が減ったところで市場が縮小することはないということだと考えられます。
経済の面でいえば、清涼飲料市場は拡大し続け、富士経済調べによると2020年の予測では5.2兆円になると予測されています。エナジードリンク市場も拡大を続けており、Yahoo!ファイナンスの記事によれば、2019年では450億円に登るようです。
社会の面では、サステナビリティへの意識の高まりと健康志向の高まりが挙げられます。それに伴い、それぞれと関係の深い技術が向上しています。サステナビリティから、リサイクルしやすいアルミ缶の加工技術向上が見られ、健康志向から代替材料や代替成分が開発されて行っています。カロリーオフに大きく貢献する代替砂糖は、非常に多くの種類があります。

5Forces分析

エナジードリンク業界の構造を分析します。

5Force分析

エナジードリンクは、低い原価でそれ以上の価値を生み出し眠気覚まし・休憩・滋養強壮とは違うモチベーションアップという差別化ポイントで新たな市場を創出してきたと考えられます。ただし、栄養ドリンクの用法が1日1本であるためか、カフェイン含有量の多さのためか、1日1本程度の消費しか見込めません。消費する人を増やすのはもちろん、一人当たりの1日の消費量を増やすことがさらなる売上拡大につながります。
直接競合はモンスターエナジー・RAIZIN・コカコーラエナジーを設定しました。

3C分析

続いて、レッドブルの戦略分析を行います。

3C分析

顧客のセグメントとターゲットは、学生・社会人の20〜30代男性であると推測します。特にレッドブルの缶に記載がある「アクティブな学生」「トップアスリート」「多忙なプロフェッショナル」「ロングドライバー」などがメインのターゲットになっています。
自社の強みの仮説は、ブランド力と広告力、さらにそれらにより実現される利益率70%の価格設定であると考えます。
競合に関しては、同じエナジードリンク業界内で言えば、モンスターエナジーは同じ値段で内容量が多いというコスパの良さ、RAIZINの一度飲んだら忘れない味と刺激、コカコーラエナジーの刺激的な味わいがそれぞれの提供価値として挙げられます。代替品に関しては、栄養ドリンクのリポビタンDが挙げられると考えます。

STP分析

次にマーケティング戦略の分析です。

STP分析

セグメンテーションについてですが、人口動態は3C分析にも書いた通り20〜30代の男性で、「アクティブな学生」「トップアスリート」「多忙なプロフェッショナル」「ロングドライバー」になります。これらの人たちの共通ポイントとして、何かに熱中したり集中力が必要な作業をしていてモチベーションが重要、そして時間に追われているという特徴が挙げられると思います。
その特徴から、ターゲティングはモチベーション高く取り組む人、限られた時間で最大のパフォーマンスをしたい人と言えるのではないでしょうか。
そのため、レッドブルはモチベーションアップのためのアイテムで、リラックスや休憩ではなく、短時間でリフレッシュするためのポジショニングになっていると考えられます。
ポジショニングマップは以下のようになります。

ポジショニングマップ

レッドブルは、眠気覚ましの目的でも飲まれると思いますが、コーヒーのように休憩やリラックスのニュアンスがあるタイプの飲み物ではなく、短時間で喉の渇きを癒しながらリフレッシュできるようにごくごくと飲みやすい味になっています。
モンスターエナジーは、レッドブルと同じ価格で内容量が多く、コストパフォーマンスが高いのが特徴です。味は飲みやすいので、この位置付けになると思います。
RAIZINやコカコーラエナジーは刺激が強めになっています。特にRAIZINは結構強烈で、ごくごく飲むにはキツい(個人的感想)ですがリフレッシュには最適で、記憶に残ります。

4P比較

エナジードリンクのマーケティングミックスを比較し価値提供の違いを分析したいと思います。

4P分析

Productですが、コカコーラエナジー 以外はカロリーオフのラインナップもあり、女性や40〜50代の男性にも手が出しやすくすることでセグメントを拡張する戦略をとっていると考えられます。レッドブルとモンスターエナジーは、元々飲みやすい味のため様々なフレーバーを作ることができます。
Priceはモンスターエナジーがコスパが高くなっています。同じ量あたりの価格が最も高いのはレッドブルとなっています。
Placeはほぼ同じで、差がありません。表には書いていませんがどれもAmazonで購入することもできます。
Promotionを見てみると、レッドブルとモンスターエナジーはInstagramのアカウントがあります。レッドブルはモンスターエナジーの倍以上のフォロワー数になっており、レッドブルの方が先駆けて出ていること以上に多い印象です。ちなみに、日本のタレントさんフォロワー数ランキング一位と言われている渡辺直美さんは939万人(2020年7月時点)です。
レースの主催やアスリートとのコラボレーションにより知名度はかなり高いと考えられます。モンスターエナジーの方がアーティストとのコラボレーションが多いようです。

もし自分がCMOだったら?

最後にレッドブルの今後の戦略を考えます。

もし自分がCMOだったら

打ち手として、クラッシュゼリーを開発し投入します。この目的は、エナジードリンクが参入できていない朝食市場に参入することです。
朝食は生活リズムを整えたり、1日のパフォーマンス向上に大きな影響があります。レッドブルのターゲット層は忙しくアクティブで、健康を壊しがちだと考えます。朝食習慣をつけることでその人たちの健康を守ることにつながり、長期にわたって高いパフォーマンスを発揮してもらうことができます。
プロモーション活動として、ドリンクと同様アスリートとのコラボをします。アスリートはルーティンを大切にしている人が多く、朝食習慣がある人が圧倒的に多いため、朝食市場との相性が良いのではないでしょうか。
朝食市場規模は1兆97億円(NPD Japan, エヌピーディー・ジャパン調べ)に登り、エナジードリンク市場規模の450億円を上回る規模であり、収益インパクトも大きいと考えられます。

おわりに

今回はエナジードリンクについての分析を通して、朝食の重要性に気付かされました。私がそうなのですが、在宅勤務のおかげで普段は時間がない人も朝食を食べる習慣がついたのではないでしょうか。これを皮切りに朝食習慣が身につくとパフォーマンスを上げられるかもしれません。

このように意外な方向に学びが深まるのもマーケティングトレースのいいところだなと感じています。
マーケティングトレースについては、黒澤友貴さんの著書を参考にすると初めての人でも簡単に挑戦できます。

皆さんも是非挑戦してみてください。

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