乃が美のブランディング
はじめに
以前、高級「生」食パン専門店乃が美のマーケティングトレース記事を書きました。
その時ありがたくもトシさんという方から以下のようなコメントをいただきました。
「一般の食パンと比較すると、差別化はできていますが
最近食パン専門店も多く、類似ブランディングが多いなと消費者目線で思ってしまいます。
そんな時にどう差別化していくのか?は個人的に興味あるのですが、どう思われますか?」
確かに高級食パンがどんどん増えていて、高級食パン業界での棲み分けはどうなっているんだろうと疑問に思いました。
そんなわけで今回は乃が美がどのような差別化をしているのかを分析してブランディング戦略を考えてみようと思います。
4P分析比較
高級食パンのマーケティングミックスを比較し価値提供の違いを分析したいと思います。
今回比較対象とする直接競合には「乃が美」「に志かわ」「嵜本」を設定しました。以前の記事では嵜本ではなく「あずき」を設定したのですが、店舗数が2店舗と少なかったりSNSアカウントがなかったりしたので、より他と近いお店を選ぼうと思い嵜本を設定しました。
内容を見てみましょう。嵜本はカフェでの提供があり、そのためかInstagramのフォロワー数が他の10倍くらいあるという点で違いが比較的分かりやすいと感じました。
また、に志かわには通販がなく、乃が美の店舗数が多いことがわかりますが、乃が美とに志かわの大きな違いは見えてきません。さらに掘り下げて分析してみましょう。
カスタマージャーニーマップ比較
高級食パンのカスタマージャーニーマップを比較し顧客体験の違いを分析したいと思います。
比較してみると、4P同様に志かわには通販がないこと、嵜本にはカフェがありそのためかInstagramのフォロワー数が圧倒的に多いなどの違いが見えてきます。しかし、ブランドを確立する上で最も大きな顧客体験の違いはそれぞれの提案する食べ方にあるのではないかと考えました。
嵜本は生でそのまま食べることを強く押し出していません。サンドイッチにしたり、フレンチトーストにしたり、トーストにバターやジャムをつけて食べるなど一般的な食パンと同じ食べ方を提案しています。また、ランチでも手軽に食べられるように一枚をジップロックのような袋で個包装したタイプも販売していることで自社の食パンを日常に溶け込ませるような食べ方を提案していると考えることができます。
に志かわは生でそのまま食べることを提案していますが、和惣菜との相性の良さでご飯の代わりとしての提案、チーズやワインとの相性の良さでフランスパンやクラッカーの代わりとしての提案をしているように感じます。何の代わりにできるか、活躍できる場面を明確にすることで食べてもらえる回数を増やすような戦略と考えることができます。
乃が美は生でそのまま食べる文化を生み出し、それを今も強く押し出しています。ジャムを売り出しているのですが、生食パンに絶妙にマッチするジャムとして生食パンそのものの良さを味わうことを追求したものだと言えます。
カスタマージャーニーマップの比較から見えた違いを基に考えると、ポジショニングマップは以下のようになると考えられます。
このように一見似通ったブランディングをしている高級食パンの棲み分けがはっきりしました。
ブランド戦略について
以上のことから乃が美のブランディングは、主食でもない、スイーツでもない、第三の存在である高級「生」食パンというものなのではないかと考えました。
もし自分がCMOだったらという視点で考えると、乃が美のブランドでは高級生食パンと、その美味しさを引き立たせるジャムのみを販売し、ブランド力を拡散しないような戦略が望ましいのではないかと思います。例えば、食パンに合うからといって乃が美のブランドでお茶を販売したり牛乳を販売したりすると、短期的には売上が伸びるかもしれませんが長期的に見るとブランド力が分散してしまい、「高級食パンといえば乃が美だ」と思ってもらえなくなってしまうと考えます。まずは高級食パン市場の中で1番の存在になることが重要だと思います。今後会社としての乃が美の事業を拡大していくとしたら、高級食パン市場で1番になった後、別ブランドを立ち上げることで新たな市場を開拓するのがいいのではないでしょうか。
この辺りの考え方については、「ブランディング22の法則」という本を参考にしました。
これからもますます乃が美の成長から目が離せないところです。
おわりに
今回ブランド戦略を考える際に、以前読んだ書籍が凄く参考になりました。カスタマージャーニーマップについては、山口義宏さんの著書「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 「顧客体験」で差がつく時代の新しいルール」がとても参考になりました。本当はカスタマージャーニーマップには顧客体験プロセスごとに顧客インサイトと体験施策アイデアが入ってくるのですが、今回は各社の顧客体験プロセスを比較するような形で参考にさせていただきました。ブランディングってなんだ?という状態だった私が他社のブランディングを分析して自分なりの考えを持つことができるようになるくらい、基礎的な知識がつくとてもためになる本なので、是非読んでみてください。
他にもブランド戦略を考える際には「ブランディング22の法則」という本の中の「拡散の法則」を参考にしました。実例を用いてブランド戦略の考え方がわかるいい本です。他の法則も気になる方は是非読んでみてください。
特にお金をもらっているわけではないので、怪しまずにどちらも読んでみてください。
今回の記事を作成するにあたり、以前読んだ本を思い出して再読しアウトプットするという流れだったのですが、これによって知識が定着しました。
日々のインプット
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参考にする本のデータが頭に残る
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アウトプットする時に再読
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知識そのものが頭に残る
といういい流れが自分の中で確立していたことを実感しました。今すぐにアウトプットすることがないという人も、いざという時のための「参考にする本のデータ」を蓄積すると思って読書をするといいのではないでしょうか。
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