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11.性別の確認

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プロローグ
1.男の役目
2.ドキドキとそわそわ
3.初めての産婦人科
4.ママの成長記録
5.夫の役割
6.母子手帳
7.妊娠3ヶ月
8.マタニティブルーとパタニティブルー
9.安定期
10.胎動の確認

7月29日(20週4日)

健診があった。エコーの精密検査があり、性別が分かる日だった。
この日出勤だった僕は仕事終わりに急いで病院へと向かった。性別を教えてくれるその瞬間を妻と同時に聞きたかった。

いつも僕が付き添うと赤ちゃんは大人しくあまり動いてくれないので、活発な姿もエコーで確認したいと思った。
病院に着くと妻はすでに診察をしていた。待合室で待っていると、妻から診察室の前まで来てと連絡が入った。妻と合流して診察室に入った。ひととおりの検査は終わったがまだ性別は聞かされていないとのこと。

先生は写真を確認しながら、「ついていますねぇ」とにこやかに言った。男の子だった。赤ちゃんの身体には特に目立った異常はないとのこと。赤ちゃんの身体のサイズをはかり身体の部位が異常に長かったり短かったりするとどこか異変がある可能性があるとのことだった。しかしそのようなことは確認されず、健康であるとのことだった。これが何よりも心配していたことで安心した。

エコーで活発に動いているところは今日も僕は一緒に確認することができなかったが、妻と一緒に性別を知ることができてよかった。妻はとても嬉しそうだった。

「一緒に電車ごっこをしようね、一緒にトーマスを見に行こうね」とお腹に向かって話しかけている。「パパにキャッチボールしてもらおうね」とも言っている。

僕は息子に何を教えてやることができるだろうか。
野球は中学で辞めた。高校球児であった兄たちみたいには教えられる気がしない。
息子であれば厳しく育てなければならない。田舎育ちである僕は都会での小学校や中学校のあり方があまり想像できない。その中でどういったことを教えればいいのだろうかという漠然とした不安がある。

まして自分が中学、高校と生きてきた中での自分という人間のややこしさを知っているから、自分と同じような息子が生まれた時にどうやって育てればいいのだろうという想いが正直なところある。
でも一緒に酒を飲める楽しみもある。もしかしたら一緒にギターを弾いて歌うこともできるかもしれない。反抗期があるのは自然なことだが、ママとももちろん仲良くしてほしい。

病院からの帰り道、車の中でどんな名前にしようかという話になった。アプリで名字にあった名前を検索する妻、でも僕はそれを聞きたくなかった。子どもの名前は自分たちで決めたいし、姓名判断は最後に頼るものであり、最初から当てにするのは嫌だった。妻にいい名前があっても言わないでと伝えた。

携帯をのぞき込んでいた妻だったが、どうやらどれもしっくりとくる名前がないらしい。全然かわいい名前がないと言っていた。その言葉に安心した僕は、今見ている中で一番しっくりこない名前は何?と尋ねると妻は「トニオ」だと答えた。

確かに自分の名字とは語呂が悪くしっくりこない。名前は三文字がいいというのが妻の意見で、僕は呼びやすい音にしたいというのが条件だった。

家に帰って再び考える。キッチンに立つ妻とああでもないこうでもないと言いながら、一番落ち着いた名前が見つかった。漢字もまだ思いつかないし、名前が持つ意味もない。ただ、母音の響きは僕の名前と同じであり、気に入っている。

名前に意味はないのだが、そもそも名前に意味などなくてもいいと思う。生まれた時から縛られるのはかわいそうな気もするし、自分の人生は自分のものだ。でも名前に意味はなくともそこには妻と僕の想いがある。元気に育ってほしいし、優しく育ってほしい。

妻は「パパのように優しくなるんだよ」とお腹に話しかける。僕は全然優しくないのだけれど、そんな風に映っているのならそれも悪くないなと思う。仮の名前は見つかったが、それ以降名前の話はしていない。まだしっくりとくる名前が出てくるかもしれないし、今から名付けるのは少し早い。
しかし僕の中ではもう決まっていた。「〇〇ちゃん」「〇〇くん」「〇〇」年齢に応じて呼び名が変わるだろう。それも楽しみ方の一つだと思う。



次回は「絵本と名前決め」

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