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12.絵本と名前決め

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プロローグ
1.男の役目
2.ドキドキとそわそわ
3.初めての産婦人科
4.ママの成長記録
5.夫の役割
6.母子手帳
7.妊娠3ヶ月
8.マタニティブルーとパタニティブルー
9.安定期
10.胎動の確認
11.性別の確認

8月10日(22週2日)

少し気が早いかなと思ったが妻の提案で赤ちゃん用品を買いに行った。
妻は少しずつ買い揃えるためにまずはよだれかけを買いたいと言っていたが、店内に入って早々、子供服に目を向けていた。

パンダの洋服を手に取り、かわいいと言ったかと思えば続いてはミッキーの服を手に持ち替えていた。冬に生まれてくるのだから当然冬服を選ばなければいけないのだけれど、今の時期に夏服を買ったほうが安いからと言っていた。
けれどその理由は自分の意思を正当化するための意見だなと思った。

妻は目をキラキラと輝かせて生まれてくる我が子の服を考えている。自分の服を買うときでさえもそんなキラキラとした顔を見せたことがない。僕は夏服はまた来年買えばいいじゃないかと提案しようと思ったが、妻のそんな顔を見ているとその言葉ははばかられた。

父親になることは当然嬉しいのだけれど実感はまだあまりない。しかしそのような感覚は特別変わったことではないという。僕がいつもお世話になっている医院の先生も娘が生まれて1~2年までは父親としての実感がなかったという。だからきっとそんなものだ。

男性と違って女性は我が子の生命を体調の変化や胎動で実感している。妻は日に日に母親らしくなっている。今、赤ちゃんが動いたと言ってお腹をさすったり、寝たのかな?と言ったりしている。
体調の変化を伴う妊娠というのはとても重大で大変な任務だと思うが、ちょっと羨ましくもある。


最近は妻と一緒に図書館に行くことが増えた。僕はたびたび本を読むために図書館に通っていたが、ここにきて夫婦で通うようになったのは理由がある。
それは赤ちゃん関連の本を借りるためだ。先日も胎教にと思い、赤ちゃんに読ませる絵本を借りてきた。自分が幼いときに読んでもらって好きだった絵本だ。

妻は「ぐりとぐら」を読ませて、僕は「11匹のネコ」を読んだ。思い起こせば末っ子である僕は絵本を読み聞かせるのは初めての経験だ。隣で妻も聞いている。ちょっと恥ずかしくなった。聞き取りやすいように丁寧に温かい声を心がけて読む。なんだか読んでいる僕までほっこりした。

絵本を読むと赤ちゃんは妻のお腹をドンドコと叩いて反応を示すそうだ。そう言って話す妻はとても嬉しそうだった。

そして今日も絵本を借りに図書館に行った。
絵本の前に目に飛び込んできたのは名付け辞典だった。今のところ名前は仮決定している状態だが、漢字までは決まっていなかった。漢字となると画数による姓名判断が左右されるので自分の感覚で頼るわけにはいかないと思い、素直に借りることにした。

名字と名前の画数、吉数、凶数、条件を満たして良い漢字を探さなければならない。難しくはあるがパズルのようで少し楽しい。名前は初めて赤ちゃんに渡すプレゼントで一生付きまとうものである。僕はああでもないこうでもないとペンを手に取りwebを駆使して漢字を探す。

そして、この漢字はどう?と妻に尋ねる。
なんか女の子っぽいかな、と妻。

妻も携帯とにらめっこをして考えてくれているのかと思いきや、ゲームをしていた。まぁこういうのは僕の方が得意だからそれで良い。ただこうやって文章に起こすことによって妻がゲームをしている間にパパは漢字を考えていたのだと書き留めてやろうと思う。

結局、名前に合う漢字を探したが妻と僕、両者が納得のいく漢字は出てこなかった。意味合いとしても画数としても良いのだけれど、これじゃなきゃ駄目だという漢字には出会えなかった。まだ時間はあるから付け焼き刃ではなく時間をかけて名前を決めたいと思う。もっと良い名前が出てくるかもしれない。もう少し待っていてほしい。



8月16日(23週1日)

妻と一緒に僕の実家に帰省した。結婚してから実家に帰りやすくなった。二人の兄はもう何年も前に結婚をして子どももいる。僕が結婚をして今回第一子を授かったことで仲間入りできた感じがしている。

話題はどうしても地元の話題が多く妻には申し訳ない気もする。それでもいつも一緒に帰ってくれる妻に感謝したい。

親、兄弟、祖父母は妻のお腹を見るなり「大きくなったなぁ」と言って目を細めている。兄夫婦とも話す話題が増えて嬉しい。母親は、「性別がわかっても私には言わんといて!」と言うものだから母には黙っておくつもりだったが、夕飯の時に「ほんとは早く性別言いたいんやろ?」となんとも上からの煽りを受けた。

こちらとしては母に楽しみにしてもらうために言うつもりがなかったのだが、母も内心は聞きたくてウズウズしていたのだろう。僕らは親族に性別を打ち明けた。父は「一緒に酒を飲めるな」と言ってくれた。多分どちらが産まれるにしても喜んでくれることには代わりないと思うのだが、その言葉を聞いてなんだか照れくさくなった。

それは同時に父が僕に対して思っていたことなのかもしれないなと思ったからだ。僕はちゃんと息子の役目を果たして生きてきたかと言われるとなんとも言えない。

早くから地元を離れたし、親に対しては兄弟の誰よりも強くあたっていた。おまけに大学卒業後の就職先も一年足らずで辞めた。こんな僕の人生は世間で見ればそんなに珍しい生き方ではないと思っているが、それがいざ自分の息子がそうなったと考えたらゾッとする。

自分は好き勝手生きてきたから、自分の子どもにも好きに生きて欲しいと思うのだが、それでもぶっ飛んだ人生ではなく普通に穏やかに過ごして欲しいなと思う。

勝手な考えだ。果たして僕は本当に親になれるのかと不安になる。中学生、高校生、自分が生きてきてややこしいなと思った年代に子どもが差し掛かった時、父親の役割がちゃんと果たせるだろうか。子どもの成長と共に自分も成長したいと思う。


次回は「マタニティ旅行の計画」

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