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ユーザー課金モデルのKPI入門

スマホゲームとかの事業モデルでよくあるやつを説明する。ゲームというかtoCのアプリはだいたいこんな感じ。主に初心者向けのざっくり説明記事である。

誰もが最初は初心者である。来年4月にtoCのサービスを展開する企業に入社する22卒の学生(あるいは就活中の23卒の学生)の参考になると嬉しい。

KPIツリー

一番簡単な状況を考えてみる

  • 10人ぐらいのメンバーが集って

  • iPhoneで遊べるゲーム(=iOSアプリ)を作って

  • 売って利益をあげる

こういう場合、月次の利益は次のように分解できる。

各項目をKPI(Key Performance Indicator)という。指標なので好きなものを置いて良いが、それぞれ何かを説明できる指標になっている。

多くの実際のサービスでもこれと似たようなものを運用している(実際はもう少し複雑)。また、これは会計で言うところのP/Lの分解に相当する、BSとCFは全く考慮していないので注意のこと。

利益

月あたりの儲かった金額、プラスなら黒字でマイナスなら赤字

利益 = 売上 - 費用

売上と費用に分解できる。

売上

月あたりの売れた金額

売上 = MAU × ARPU

「月あたりのユーザー数」と「1ユーザーあたりの売上」に分解できる。

MAU(Monthly Active Users)

月あたりのアクティブユーザー数、『そのサービスの規模を表す指標』、日あたりだとDAU、週あたりだとWAUという。

ユーザー数 = 新規ユーザー数 + 既存ユーザー数

「新規のユーザー数」と「既存のユーザー数」に分解できる。

NU(New Users)

新規のユーザー数、『サービスが拡大する速度を表す指標』

新規のユーザー数 = オーガニック流入 + 広告流入

「友達招待や口コミなど、広告を経由せずに自然に流入するユーザー」と「(広告費を支払った)広告経由で流入するユーザー」に分解できる。

RR(Return Rate)

既存ユーザーの継続率、『そのサービスを何日も継続して遊びたいかの指標』

  • 1 day RR

  • 3 days RR

  • 7 days RR

  • 14 days RR

  • 1 month RR

  • 3 months RR

「xx日継続する人は何%いる」のような表現をする。新規のユーザー数に継続率をかけた累積が既存ユーザー数になる。

ARPU(Average Revenue Per User)

ユーザー1人あたりの売上

ARPU = 課金率 × ARPPU

「課金するユーザーの割合」と「課金ユーザーあたりの売上」に分解できる。

課金率

ユーザーのうち課金するユーザーの割合、『ユーザーはお金を払ってでも使いたいと思うかの指標』

ARPPU(Average Revenue Per Paying User)

課金するユーザーあたりの売上、『課金するくらい熱心なユーザーはこのサービスにいくら払っても良いと思うかの指標』

費用

使ったお金

費用 = 変動費 + 固定費

変動費と固定費に分解できる。

変動費

売上に対して変動する費用

アプリの場合にはプラットフォーム手数料がかかる(いわゆるApple税、15〜30%)

売上から変動費を引いたものを限界利益、変動費の比率を限界利益率という(これ以上利益が出ない)。

固定費

売上に対して変動しないほうの費用

スマホアプリを作って売る場合は次の3つがかかる(一番単純な場合)

  • 人件費

  • 広告費

  • サーバ費

人件費:アプリを作る人に係る費用。「人件費 = 一人あたりの費用 × 人数」と分解できる。

広告費:上に書いたNUのうち広告流入にかける費用。関連する指標として、CPI(Cost Per Install)とLTV(Life Time Value)がある。CPIがLTVを下回るように広告を出す(と利益が出る)。

  • CPI:1インストールあたりに係る費用

    • = 広告費 / 流入するユーザー数

  • LTV:1ユーザーあたりの総売上

    • 『ユーザーがそのサービスに総額いくら払うのかの指標』

    • = Σ ARPU × RR(月あたりの売上を累積した金額)

サーバ費:アプリは無料で出せるがサーバはお金がかかる。ユーザー数が多いほどサーバ台数を増やしたり高スペックなマシンが必要になるので「サーバ費 = 1ユーザーあたりの費用 × ユーザー数」と置いたりする。

KPIと施策

KPIは改善するための指標なので改善するための考え方も必要になる。知っておくとよいものをいくつか挙げておく。

AARRRモデル

グロースハックの古典的なモデルである。

  • Acquisition:新規獲得、NUが相当

  • Activation:『初めて使ったときの体験』、例えば1 day RR

  • Retention:『何度も使いたいか』、例えば7 day RR

  • Referral:『紹介や口コミ』、NUのうちのオーガニック流入が相当

  • Revenue:売上、ARPUが相当

アプリに限らず多くのサービスはこれで説明ができる。起きるイベントは上から順だが、改善する時は下から順に行う。具体的には Retention → Activation → Acquisition こういう順番で行う。例えば、ラーメン屋を出店することを考えよう、たぶんこういう順番で考えるはず。

  • 何度も食べたくなるような美味いラーメンをつくる

  • 初めて入店した人でも楽しめる店内とメニューにする

  • 人が入りやすくなるように看板を出す

IT系のサービスも同じように考える。

2:8の法則

パレートの法則、顧客の2割が売上の8割を生み出す。なぜARPUを課金率とARPPUに分けるかというとユーザーは極端に偏るからである。ラーメン屋を考えればわかる。毎日行く人とたまに行く人と全く行かない人の3種類がいる。

Smile Curve

どんなサービスでもそうだが、長く続けると少しずつユーザーは離脱していくが熱心なユーザーはいつまでも残り続ける、こういう現象が起きる。これは直感的に想像できると思う。図にするとこうなる。

横軸が継続日数、縦軸が全体のユーザー数である。スマホゲームの場合、7 day RRを見ることが多いのはこれが理由である。7日継続して遊ぶということは、それはそのユーザーにとって毎日遊びたくなるくらいに面白いわけで28日くらいは継続してくれることを期待できる。

逆にいうと、7 days RRを改善するためには本質的な改善が必要になる。具体的な例を出してみる。小手先の改善としてログインボーナスを改善すると3日継続くらいまでは改善したりする、ただ7日継続は全く改善しない。これを改善するには根本的に面白くするしかない。

ブリッジKPI

KPIについて書いてきたが、これらはかなり粗い指標である。いろいろなサービスで使えるが、逆に言うとサービスを改善するのにあまり役に立たない。なので中間的な指標を考える。例えばスマホゲームで1 day RRを改善できそうな指標は

  • チュートリアルの突破率(離脱率の逆)

  • 1ステージ目のクリア率

  • 初日に勝てたかどうか

  • 初日に何時間遊んだか

これらが高そうなら次の日も遊んでくれそうだ。さらに、これなら具体的な施策を思いつけそうだ。チュートリアルはスムーズに突破しているのに1ステージ目をクリアしていないならゲームデザインに問題がある、それは難しすぎるということだ。

ゲーム以外のサービスならこれは自分で見つける必要がある、有効なKPIがなにかわからないからだ。これはグロースハックの用語でnorth star metric(向かうべき北極星)と言ったりする。

事業計画書

みんな大好き(or 大嫌い)な事業計画の話をする。スプレッドシートにいっぱい数字がならんでいるあれのことだ。あれはKPIを月次に並べたものである。例えばこんな感じになっているはず

事業計画

さらに詳細がある。例えば人件費だと

人員計画

実際には予算と実績に分けられているはず。事業計画書は誰でも理解できるくらい簡単なものだ。少なくともあなたが今やっている仕事よりも難しくはない。汝、事業計画を恐れるなかれ。

多くの会社で事業計画書は社員に共有されていると思うが、ほとんどの社員はそっ閉じしていると思う。なぜそうなるか。見る→「うっ」→閉じる。そして「会社がなにをしたいか全くわからない」。いや、書いてあるんだ、実は、共有ドキュメントに。こういう悲劇を少しでも減らしたい。

おまけ

本稿は実は、というかぶっちゃけ社内で話したことをまとめなおしたものである。宣伝する。

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