ミステリーの歩き方公式ノート

Nintendo Switch ソフト「ミステリーの歩き方」に登場するキャラクターの前…

ミステリーの歩き方公式ノート

Nintendo Switch ソフト「ミステリーの歩き方」に登場するキャラクターの前日譚を小説でお届けします! 2024年12月12日発売予定 公式HP:https://mysterywalk.jp/

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【7】ミステリーの始め方 ~ミステリーの歩き方 前日譚~

【7】 南条有栖からの挑戦状 「過去の猟奇殺人犯たちが必ず同じ答えを出すという、犯罪心理学者が考えたテスト問題があるの。これに答えられなかったらこの部屋から出て行ってもらうわ。 準備はいい? 夫と妻、小学生の息子の3人家族がいた。 妻が夫を完全犯罪で殺し、葬式が執り行われたが そこに来た夫の同僚に、妻は一目ぼれしてしまった。 その夜、妻は息子を殺した。 なぜか? ……幸太郎くん、スマホは禁止って言ったでしょ?」 続

    • 【6】ミステリーの始め方 ~ミステリーの歩き方 前日譚~

      【6】 「ボクは陽炎。 東野陽炎(とうのかげろう)。 このミステリー研究会のリーダーだ。 ……お見知りおきを」 かげろう? 「なんか、すっげーキザな奴が現れたな」 幸太郎のその言葉に、男はネクタイを直す手を止めた。 「……それは、誉め言葉か?」 「知ってるか?キザって、漢字で『気に障る』って書くんだぜ?」 幸太郎の言葉は、棘だらけではあったが決して喧嘩を売っているという口調ではなく、まるで大学のカフェテリアで友人に語り掛けるような、なんともいえない穏やかな言い方だった。

      • 【5】ミステリーの始め方 ~ミステリーの歩き方 前日譚~

        【5】 「それじゃ、あなた。私の出す問題が解けるかしら?」 南条有栖(なんじょうありす)は鋭い視線のまま、僕にそう言った。 肩にかかった黒髪を後ろへと払い、僕の返答を待っている。 ……またこの場面だ。 斜陽の差し込む、午後の教室。 当面、ミステリー研究会の「部室」と目される大学の217号教室を、僕と幸太郎は初めて訪ねたのだ。 合格の通知は、面接の翌日にメールで告げられた。 皆戸先生と1対1での、ほんの5分程度の顔合わせ。 それだけで、この僕が100人近い応募の中から選ば

        • 【4】ミステリーの始め方 ~ミステリーの歩き方 前日譚~

          【4】 僕が彼女を初めて見たのは、その時だった。 「分かるか、あの黒髪の美少女」 幸太郎が僕に耳打ちする。「あれがかの有名な『ミステリーサラブレッド』だ」 「ミステリーサラブレッド?」 「ああ。昨年、数々の難事件の考察をネットで発表し、女子高生探偵として話題になった、同い年の新入生だ。父親が警視総監だかなんだかのお偉いさんでな。娘である彼女も将来は警察官僚を目指していると聞く」 なるほど、それで『ミステリーサラブレッド』というわけか。 「だがそんなことはどーでもいい!」 耳元

        【7】ミステリーの始め方 ~ミステリーの歩き方 前日譚~

          【3】ミステリーの始め方 ~ミステリーの歩き方 前日譚~

          【3】 「ミステリー研究会?」 大学のキャンパスを、行く先も分からぬまま歩く僕は、半歩先を行く幸太郎に改めて訊き返した。 「そう、ミステリー研究会。その実態は、今年新たに設立された、1年生を対象にしたゼミなのだ」 ゼミか。 1年生のみを対象にするゼミは、あまり多くない。 幸太郎が話を続ける。 「設立したのはこの大学の若き准教授、皆戸(みなと)先生だ。皆戸先生の専攻は心理学でな。彼女が提唱する犯罪心理学をより実践的に捉えるために発足・・・とか堅苦しい前提はさておき、とにかく表向

          【3】ミステリーの始め方 ~ミステリーの歩き方 前日譚~

          【2】ミステリーの始め方 ~ミステリーの歩き方 前日譚~

          【2】 「よお、俺、井沢幸太郎。よろしくな?」 いつの間にか後ろの席に座っていた男は、そう言って僕に笑いかけた。 誰もがスーツ姿でまわりを窺う中、僕と同じ普段着で現れたのが、この井沢幸太郎(いざわこうたろう)だった。 たまたま五十音順に座っただけなのだが、この偶然の出会いに、僕は大いに助けられた。その人懐っこい笑顔と屈託のない話し方が、人見知りな僕にはありがたかったのだ。 細身の体躯に緩めのニットセーター、明るく染めあげた髪。 薄く笑うその顔には、すでに友人を迎える準備ができ

          【2】ミステリーの始め方 ~ミステリーの歩き方 前日譚~

          【1】ミステリーの始め方 ~ミステリーの歩き方 前日譚~

          【1】 「それじゃ、あなた。私の出す問題が解けるかしら?」 南条有栖(なんじょうありす)は鋭い視線のまま、僕にそう言った。 肩にかかった黒髪を後ろへと払い、僕の返答を待っている。 ミステリーサラブレッド――陰ながら彼女はそう呼ばれている。 本人が気に入っているかどうかは僕の知るところではないが、警察官僚を家族にもち、学生探偵として名を馳せた彼女を表現する言葉としては、見事に的を射ている。 冷静に考えて、彼女の苛立ちは理解できる。 心理学にも、犯罪学にも、ましてやミステリー小

          【1】ミステリーの始め方 ~ミステリーの歩き方 前日譚~