キン肉マン騒動は結局悪質なものがダメという基準で終わるしかない

大前提として作者も集英社側も発言の仕方は下手だった。しかし内容が著しくおかしいわけでも無かった。つまり炎上自体は結局言い方と受け手の感情の問題だと思っている。いつだって理屈は感情的な行為の後付けだ。

さて本題。

ガイドラインが作られても、結局悪質なものはダメという基準は消せない。ただ社会通念上不適当とか当社の不利益など皆どこかで見たことある筈の文章に変わるだけだ。

条件付きか無条件で許可が貰えるのがガイドラインと思ってる人が多いかも知れないが、実際には禁止事項が増えるだけになる可能性が高いと思われる。許可範囲という名のそれ以外は許されない制限が増えるか、全面的に許可します(但し悪質なものは個別で対処します)と同じ文言をただ書き直すかの二択だ。

二次創作の許諾ガイドラインでも必ず「当社に損益を与える内容」「社会通念上著しく不適応だと判断した場合」に対し釘が刺されるので、著作権的な話をする人なら大体知っているものなのだが、つまり悪質なのはダメであるとひたすら言われるだけだ。許諾の緩さで有名な東方プロジェクトなどにも上記文章の類似が当然入っている。ガイドラインに許可されている範囲でも全てが許される訳ではない。

一つ脱線するとゲーミングお嬢様は全面的にスクショ・ネタバレ・エロ同人等の許可を発言したが、かといってサイトの利用規約著作権などが消滅したりはしないので、悪質な著作物利用からは規約からも法律からもちゃんと守られている。そもそも協力しているゲーム会社等の著作物が作品内にあり実際にはそこそこ複雑な権利状態で、名誉に絡むような悪質な行為には普通に多方面から民事訴訟が待っている。でも結局そういった理屈ではなくこのムーブが正解だとも思う。


さて、今の所ざっと各所を眺めた範囲でのガイドライン要求は

・スクショもネタバレも法的に問題無いから全部許可しろ

・スクショを嫌がる権利は作者にあり認めるがネタバレ権利は読者にある

・スクショもネタバレもとにかくガイドラインで完璧に区分けすれば良い

の3通りがメインに思える。そのどれもが他の人も同じ主張だと思っている節もあるが、実際は内部でもバラバラだ。法律の参照基準もまとまっていない。

例えば文章のネタバレに著作権は無い筈だというのを今回みかけた人も多いと思うが、文化庁のQAにおいて翻案権により「どの程度のあらすじかによる」と記載がある(つまり二次創作なので)。判例は記憶に無いしよっぽど悪質で金銭も絡まないとまず無いと思うが、法律的に許されているというのはまた少し話が違う。

他にも冗談で嘘のネタバレをしたり勝手な解釈を事実として流布する人は悪質なら偽計業務妨害が出てくる。これも普通は有り得ないが法律的に許されているという話からは逸脱する。そしてこの2つのどちらも程度の問題であり判断は状況によって常に変わる。だからラインはそれが悪質かどうかになるのだ。


そもそも感想語りを楽しんでいた人達が本当に欲しいのはガイドラインではなく自分達の楽しみの全面的許可と、一時的にでもそれを奪ったことへの謝罪の筈だ。個人的には謝罪を強要する行為はむしろ悪だと感じるが、実際作者は謝罪して編集をクビにしろという強い文を見てしまった。

ネタバレしてでも作品を語り尽くしたいし、画像貼って盛り上がりたいというのはとても分かるので、そこだけを素直に主張していれば誰もその主張に懐疑的にはならなかったと思う。

これは他の騒ぎも大体同じで、嫌なものを嫌と言うだけなら問題無いし同意もあるが、だから自分を尊重しろと言い出した時点で歯車が狂ってしまい、外からの風向きは厳しくなる。

特に今回クリエイター系の人達は最初から一貫して作者側に同情的な層が多く、攻撃的な人が目についた時点でほぼ味方からは外れている。下手な事を言えば自分も関係各社と調整してガイドラインを作成し責任を負わなければならないし、無実の作者が攻撃される構図をもう見飽きてもいるのだろう。


二次創作の販売はグレーどころか黒一色なので、ガイドラインによる許可範囲の作成は明確に白範囲が広がりお得な感覚が強く、あれが誤解の元になった気はしている。本来ガイドラインはお得なだけとは限らない。

単純にグレーゾーンが嫌いという人も居るだろうしその気持ちもよく分かるのだが、白黒はっきりつけたガイドラインには「ただし悪質なものは除く」というグレーのラインが必ず引いてあるのを覚えておいて欲しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?