太宰読破記録

四十二日かけて太宰治の作品を全部読みました。


ツイッターに書いた通りなんですけど、何年か前に買った太宰治全集を本当に全然読んでいなかったのでこの機会の読破しようと思い、ツイッターで報告しながら読み進めていこうという行動がついに終わりました。三十日で読み終える予定が四十二日かかってしまいました。

かなり良かったです。やって良かった。こういう風に読書を半強制的にする事なかったんですけど、きちんとペースを決めたら読み進める事ができるというのも自分の中で発見でした。始めたものの本当に途中で挫折すると思っていたので。(僕は僕の事を本当に信用していない)

それもやはり一か月以上読み続けられるほどの素晴らしい作品を生み出し続けてくれた太宰治のおかげです。

正直、青空文庫で全て無料で読める時代にお金を払って昔の小説を読む意味なんてあるのだろうかお金の無駄じゃないかなとも思っていたのですが、意味はありました。

アクセスが簡単という事も挙げられますが、時系列順に作品を読んでいくという事が一番その作者を理解できるという事に気づけました。朝井リョウも中村文則もすべて最初から順番に読んでいったのですが、そうすると単純にクオリティが上がっていくのが肌で感じるし、何度も出てくるモチーフに対して「この人は本当にこの事が言いたいんだな」と知ることもできます。もちろん読書はどんな方法をとっても自由ですが、その人に一度心身をすべて預けてみたいと思わせてくれるような作家と出合えた時は、時系列順にすべて読むという事を推したいな~と思えました。


以下好きな作品の雑な振り返り

「葉」

初見不可避。小説ではなく一言ネタみたいな感じ。これで「??」となってしまって全集を読み進める恐怖を感じてしまうかもしれません

「ダス・ゲマイネ」

【太宰治】が作中に登場、しかも嫌な役というのが面白かった。終わり方も含めて一巻では一番面白かった。

「姥捨」

一巻の終わりから二巻の中盤にかけて、太宰の私生活が荒れまくった事により(パビナール中毒や入院など)本当に何を書いているかもわからない支離滅裂な作品が続き心が折れかけたところに、「ようやく意味が分かる小説が来た!」と思って嬉しくなった。内容は男女が自殺をしようとする話なんですけど、暗いテーマなのにどこか爽やかさも感じられて、「太宰はこの時生きようとしていたのかもしれない」と勝手に感じれたし、実際これを機にどんどん面白くなっていったのでよく覚えています。

「女生徒」

太宰が描く語り手が女性の小説が好きです

「畜犬談」「駆込み訴え」「老ハイデルベルヒ」「誰も知らぬ」「善蔵を思う」「走れメロス」「乞食学生」

↑三巻で面白かったものたち。三巻は本当にずっと面白かった。


※端折ります

四巻

「きりぎりす」「ろまん燈籠」「佐渡」「恥」

五巻

「新郎」「待つ」「正義と微笑」「花火」「故郷」

七巻

「津軽」「惜別」「お伽草子」

六巻が正直肩透かしというかそれまで面白かっただけに、う~~んという感じだったのですが、七巻で長編3編だけをドンドンドンと置かれて面白い!!!という感じで読めました。

八巻

「パンドラの匣」「嘘」「チャンス」「雀」「男女同権」「トカトントン」「メリイクリスマス」「ヴィヨンの妻」

九巻

「斜陽」「桜桃」「家庭の幸福」「人間失格」「グッド・バイ」


全部読んだんですけどいまだにわからないことは全然あります。

「私」という語り手がいる作品が多いのですが、それが太宰本人なのか「私」という別人なのか、太宰の実際の生活を反映しているのかどこまでがリアルでどこまでがフィクションなのか、が全然わかりませんでした。調べたら分かるかもしれないんですけど、調べてないです。リアル:フィクション=8:2ぐらいの気持ちで読んでいたのですが、全然違っていたら少し悲しいです。

全部読み終わったはずなのに、全然ずっと太宰の事を考えています。現代に生きる作家はSNSやインタビューで「何を考えているか」という事を知ることもできますが、すでに死んでしまった作家に関しては作品からしかこちらがくみ取るしかありません。読めば読むほど人としての太宰治が気になってくる。それは太宰の研究をする人もいるわけだなと思います。

そして未完で終わった「グッド・バイ」が本当に好きでした。

なんか自ら命を絶つ人がいたし、今もいる、という事を考えてしまいました。


面白かったです。読んでよかった。全集、良いですね。

無料で読めるので皆さんもぜひ時系列順に読んでみてください








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