手帖から消えたページ #4「夢のつづき」
もうずっと前から、中古のレコードやCDを売っている店を見かけると、素通りできない。甘い水をもとめて、あっちへふらふら、こっちへふらふら。
確か手帖に、探し出すべきアルバムの名前をリストアップしたはずなんだけど、やっぱりそのページが、無くなっている。
だから、あるのは、メロディーだけ。ふとハミングにのってすべり出す、好きだった曲のつまさき。
実家に戻れば、きっとすべてがきれいに保存されている。でもあまり気が向かない。同じ「残されたもの」でも、恐竜の骨格標本の博物館のようには、楽しくはいられない。どうしてだろう?
--「残されたもの」じゃないんだ。まだまだゆっくり、固まる途中。
「大丈夫、勢いでいけ」。いやその手にはのらない。焦らない。多少時間がかかっても、確実に乗り越える。
それにしてもひとつも、どこにも売っていない。世間では断捨離だなんて言葉もあって、中古のショップに売る人がいてもいいのに、なんでだろ。
透き通った空気が、秋のはじまりを告げる。秋はこの先の厳しい冬の寒さを耐え忍ぶために、ギュッとちからを溜める季節なのだという。
衛星のようにぐるりと周って、十年後に、あるいはもっと いくとせも巡って、また聞きたくなるメロディーが確かに、誰の心にも貯蔵されてある。
つくっている人たちは、気づいているだろうか。
表舞台にいようとも、そこから去ろうとも。
あなたの曲は、詩は、物語は、絵は、写真は。つくられたものすべては、どこかの荒野の、だれかのパンです。
―― 2007年で日付が終わっている140文字にそんな感じのメッセージを書いて送ったら、まさか、あろうことか、本人から返信が来た。
「いつか、どこかでお茶でも」
……。
……。
……。
ゆめですか。それとも、光。
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