my手帖

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夜の汽笛

暗闇の中に、ボーと船の汽笛が鳴り響く。 時計は深夜0時をまわったころ。ボー、ボー、と太い音がリビングの片すみから聞こえてくる。びっくりして見て…

革命前夜、木曜日のノート

1月の深夜に、テレビを消して、ココアを飲む。 ココアは甘く苦くて、23時を過ぎると毒性が強くなる。そのせいか眠気は波にさらわれるように消え去り、…

風味絶佳のプチフール

【プチフール/petit fours】… 食後のデザートとして出る、一口サイズの小さなお菓子類。 その人が家に来たとき私は手が離せなかった。代わりに夫がそ…

今日も明日も舞台の上

すこし早く起きることが出来た日は、悪い朝食をつくる。 トーストにバターはたっぷりと、ハム、チーズ、目玉焼きをのせて、最後に好きなだけメイプルシ…

夜、私の集めたロマンティック

「ウルフムーン」と名前のついた月を見上げたら、こっそりストロベリー・チョコレートを開封したくなった。 銀紙が寝室でカサコソと音をたてる。夜の中…

秋の深まりはシャーベット・モードで

「夏の終わりって泣きたくなる」 小説も読まない、映画も観ない、美術館など行ったことのない私のかつての恋人が、初めて口にした一行の詩だ。 それが…

アメージング・スパイダーの手紙

秋の始まりの風はまろやかで、甘い。 風は捨てきれなかった夏の熱を含んだまま行先を決めきらず、やわらかく流れて、枝分かれしていく。 朝起きてベラ…

夏の列車に手を振る

濡れた夏草の匂いも、中華料理店の裏手のムッとする暑さも、カランと音を立てて溶ける氷も、たぶんみんな去ってしまった。 カレンダーに「夏の終わり」…

王女の命令と、いつか片付けなくてはいけないもの

夏の朝、よく冷えた部屋でひとりコーヒーを飲んだりしていると、ソファから手を伸ばしたあたりに、記憶の泡がゆらゆら浮き上がってくる。 湖底にしずん…

朝の光と、スプーン一杯の

僕はきみのことが好きだ。 髪をふりみだし、寝不足の目を真っ赤にさせて、いつ買ったかわからないくたびれた部屋着すがたで、僕たちの赤ちゃんを懸命に…