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歴史・人物伝~エピソード編⑳:諏訪御寮人「謎多き武田勝頼の母」

先日、長野県高遠に出かけた際、建福寺にある諏訪御寮人の墓所を見学しました。諏訪御寮人は武田信玄の側室で、後継者となった勝頼の母ですが、その生涯はほとんど伝わっていません。しかし、信玄が登場する小説やドラマでは欠かせない女性として知られています。

彼女は諏訪地方の名門・諏訪家の出身で、信玄が諏訪侵攻にあたって政略結婚したとされています。彼女は男児を生みますが、その子に諏訪家を引き継がせることにしたのです。勝頼に諏訪家の通字である「頼」が使われているのは、諏訪家の当主と位置付けられていたからです。

諏訪家出身の女性であるにもかかわらず、諏訪御寮人の墓所が諏訪地方ではなく、高遠にあったことが不思議でした。彼女は勝頼がまだ幼い時に亡くなっていますが、成人した勝頼が高遠城主になった時に菩提寺である建福寺に墓所を設けたのではないでしょうか。

諏訪御寮人は絶世の美女で、信玄最愛の女性だったと伝わっています。ミステリアスな存在ゆえに湖衣姫(新田次郎の「武田信玄」)や由布姫(井上靖の「風林火山」)の名で小説に登場し、有名になりました。ドラマや映画では美人女優が配役されているようです。

ちなみに、諏訪地方では「由布姫」の名の方が通っており、岡谷市の小坂観音院には由布姫の供養塔があります。建福寺を訪れるまでは、ここが諏訪御寮人の墓所だと思い込んでいましたが、昭和になって井上靖の小説をきっかけに建てられたそうです。

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