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色づく世界の明日から -2.魔法なんて大キライ

瞳美&唯翔:あなたの絵 / 不法侵入者・・・え?

瞳美:あ、あの、その絵あなたが描いたんですか?
もう一度見せて頂けませんか?

唯翔:いや、それはちょっと。いや、だってこれ。
勝手に人ん家入って何してたの?それから、これも。

瞳美:あ。それ、私のです。

唯翔:落ちてたって、部屋に。

瞳美:す、すみません。これには訳があって

唯翔:正当な理由がないのに、人の住居に侵入した者は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する、だって。

瞳美:話しても、信じてもらえるかどうか

唯翔:ちゃんとした事情があるんだったら、一応聞くつもりだけど

瞳美:・・・魔法のせい、なんです

私、いきなりおばあちゃんに行けって言われて。
変なバスに乗って、気付いたらあそこに居て...とにかく何とかしなきゃって。…今もどうしてここにいるのか、正直よくわからなくて。
だから、あの、何言ってるのかわからないと思いますが、
あなたの部屋に入ったのは、全部魔法のせいなんです。
迷惑かけてしまって、ごめんなさい。

唯翔:はぁ、もういいよ

瞳美:えっ、い、いいんですか?

唯翔:まあ、盗られたものもなかったんで。別にいいかなって

瞳美:本当に、すみませんでした。

唯翔:じゃあ、とりあえず今度から気をつけて。
あ、って言っても魔法ってそういうの気をつけられるもんなの?

瞳美:わ、分かりません。私も今回初めてだったので

唯翔:魔法使いの事情とかよくわかんないけど、
とにかくこれからは注意してもらえたら

瞳美:あ、・・・はい。

唯翔:じゃあ

瞳美:あ、あの・・・あの絵のこと、もっと聞きたかった

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瞳美:(どうしてあの時だけ、色が見えたんだろう)

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瞳美:も、戻りました

瑠璃:おかえりなさい。え?どうしたの、何かあった?

瞳美:いえ、ちょっと取り調べを受けたような気分で瑠璃:どういうこと?

瞳美:とりあえず、アズライトは見つかりました。

瑠璃:ほんとね。家に伝わる石を持ってるって

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瑠璃:イギリスにいる琥珀と連絡が取れたのよ

瞳美:おばあちゃんと?

弦:そうか、君にとっては60年後のおばあちゃんなんだね

瑠璃:これが今の琥珀。

瞳美:これが、おばあ...琥珀さん?!

瑠璃:留学を切り上げてなるべく早く戻ってくるって。
あなたの話、詳しく聞きたいって言ってた。
とにかく、それまでしばらくは家で待っててもらうしかないわよね

瞳美:はい。私、帰り方もわからなくて、これからどうしたらいいのか

柚葉:心配しなくても、しかるべき時が来ればきっとわかるわ

瑠璃:魔法はどのくらい使えるの?

瞳美:魔法はあまり、好きじゃなくて...ずっと練習してこなかったんです

瑠璃:あら、それは残念ねぇ。
手紙には強い力を持ってるって書いてあったのに。

柚葉:嫌いなものを無理して修行しても、あまり身につかないわね。
でも、手紙には未来に帰る方法までは書いてなかったの。
帰るためには何か強い魔法を習得する必要があるかもしれません。

弦:魔法も大事だけど、高校生なんだし。
とりあえず学校通ってみたらどうかな。

柚葉:そうねー。学問を探求する姿勢はとても大切よ

瑠璃:すぐに編入手続きしておくわ。琥珀と同じ、南ヶ丘がいいわよね

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瞳美:(やっぱり、もっとちゃんと断ればよかった。)
本当に行くんですか?

瑠璃:大丈夫よー、ブレザーも似合ってるから。
先生方には親戚の子がマジカルステイでしばらく滞在するって説明してあるから。はい、これお弁当。いってらっしゃーい

瞳美:(1人でいたいだけなのに、私は何をしにここに来たんだろう)

では、これから我が校で充実した高校生活を送ってくださいね。
それから最後に、その書類にサインしてください。

瞳美:魔法による、器物損壊行為に関する誓約書?

まぁ、要するに琥珀さんみたいに校庭で花火を爆発させたり、
プールを凍らせたり、理科の実験で壁を壊したりしないでね、
ということですね。月白さんのお母さん、よく謝りに来られてますよ。
あなたもあまり無茶しないようにお願いします

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ということで、しばらくの間、月白さんの家にマジカルステイするそうです。皆さん仲良くしてあげてください

君子危うきに近寄らず、だな

瞳美:月白 瞳美です、よろしくお願いします

あさぎ:あの子

月白さん。今日のところは教科書、隣に見せてもらって

あ、ハイ!ど、どうぞ

瞳美:ありがとう(避けられてるみたい)

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瞳美:ん?あ、この前の

あさぎ:偶然ですね、同じクラス。私、風野あさぎって言います。
あさぎって呼んでくださいね、よろしく。
月白さんのことは、えっと、瞳美ちゃんって呼んでもいいですか?

瞳美:え?あ、はい。

あさぎ:どうかしました?

瞳美:珍しいなって、あれ。

あさぎ:珍しい?黒板が?

瞳美:あの、私さっき隣の席の人に避けられてたみたいなんですけど

あさぎ:ああ、それはきっと魔法使いって聞いたからですよ。
あの、これは1年生の時のクラスの写真なんですけど。
琥珀ちゃんがほうきで飛んで天井突き破っちゃったり、
黒板に突っ込んで壊しちゃったり、
オフリーホールの入り口突き破っちゃったりして。エヘヘ

瞳美:うそ

あさぎ:時々やり過ぎちゃうんですね、琥珀ちゃんて。
みんな1年の時から同じクラスだから魔法使いのこと、
怖がってる人もいるのかも

瞳美:そうなんだ。

あさぎ:でも大丈夫です。大抵の人は、琥珀ちゃんと普通に仲良しだから。あの、よかったらお昼ごはん一緒に食べませんか

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胡桃:こんちはー、こないだ振りー。覚えてる?

瞳美:あ、はい。お世話になりました

胡桃:私、あさぎと同じ写真部の3年で川合 胡桃。
こっちが部長の山吹 将で、こっちが1年の深澤千草。

千草:よろしくー。ねえ君、俺の写真のモデルにでも

胡桃:そしてもう1人~

将:うちの唯翔がお世話になってます

瞳美:あ、せ、先日は

唯翔:どうも

胡桃:あれ。何その他人行儀な感じ、

唯翔:だって他人だよ。この人、魔法で家に迷い込んだだけだって

千草:またまた言い訳しちゃって。素直に彼女だって認めたら?唯翔先輩

唯翔:・・・あのさ、悪いけど

瞳美:はい

唯翔:一つお願いしてもいい?

瞳美:な、何ですか

唯翔:見せてくれないかな、魔法使うところ。
部屋に入られただけだって俺が言っても、誰も全然信じてくれないから。
そっちだって迷惑でしょ、転校早々変な噂されて。
誤解されたままだと可哀想だし。使えるんだよね?
疑うみたいで悪いけど、俺も正直まだ半信半疑っていうか

瞳美:・・・魔法を見せたら、私のこと、信じてくれますか?

唯翔:もちろん

瞳美:・・・じゃあ、やってみます。ほ、星を出します。

よほじひに、光よ輝け、星の如く

千草:・・・ん?終わり?

あさぎ:すごく、良かったと思います。教室、壊れなかったし

胡桃:可愛かったよ

将:何か言ってやれよ、唯翔も

唯翔:え?なんで俺、

瞳美:私に出来るのはこの位で、ごめんなさい

千草:おお、行っちゃった

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瞳美:やっぱり、魔法なんて大嫌い、

あさぎ:瞳美ちゃーん。瞳美ちゃん、ここにいたんですね

胡桃:ごめんね。なんか気まずくなっちゃって、
せっかく見せてくれたのにさぁ

瞳美:いえ、そんな

胡桃:お詫びの印に、これあげる

瞳美:これ、昔のオフリーですか?

胡桃:昔?

瞳美:・・・美味しい

あさぎ:瞳美ちゃん。よかったら放課後の部活、見に来ませんか

胡桃:うち、新入部員大歓迎だから。是非遊びに来て。
まだ知り合いも少ないから心細いでしょう?

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胡桃:見学者一名お連れしましたー

将:ああ、月白さんだっけ、

千草:いらっしゃーい

瞳美:し、失礼します、

胡桃:そんなに緊張しないで、堅苦しい部活じゃないから

将:そうそう。部員は俺達4人と唯翔だけだし、
基本的に楽しく写真撮ってるだけで

胡桃:郊外に撮影に行ったり、夏休みに合宿したり、
卒業アルバムの写真を任されたりもしてるけど。
1年で一番大きなイベントは秋の文化祭での展示発表かなぁ

あさぎ:ここは暗室です。部長がフィルム写真大好きなんですよ。
ここで自分達で現像するんです。モノクロ写真しか、できないんですけどね

瞳美:モノクロ・・・。

胡桃:瞳美ちゃん、カメラは好き?

瞳美:いえ、全然知らなくて

胡桃:あさぎのお家が写真館でね、山吹はそこでバイトしてるんだ。
2人とも詳しいからなんでも教えてくれるよ

将:おう、任せといて

胡桃:ちなみに千草は葵のバイト先のオーナーの息子でね、
1年生なんだけど、入学前から家に出入りしてて

千草:写真の腕は胡桃先輩より上だから、
モデルになってくれたら素敵な写真を

胡桃:うるさいっ

千草:いい顔してましたよ、先輩、

胡桃:ちょっとそれ、すぐ削除してよね

あさぎ:いつもの事なので、気にしないでくださいね

将:俺たちこの後、課外活動って名目で適当にぶらつくんだけど...
どうかした?

瞳美:あ、いえ

将:もしかして、唯翔?あいつ1人だけ美術部なんだけど、
写真部と美術部でまとめて部室使わせてもらってるから。
まあほとんど同じ部みたいな関係で、あいつ今日シフト?

千草:さあ、分かんない

胡桃:また屋上とかじゃないの

将:絵描くとき、1人でふらっとどっか行っちゃうからなぁ

あさぎ:瞳美ちゃん、行かないんですか?

瞳美:また、次の機会に

胡桃:それじゃあ、またねー

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瞳美:(もう一度、色が見たい。)あの...ご、ごめんなさい。邪魔して

唯翔:別にいいけど、なんでこんなところに

瞳美:さ、探してました

唯翔:え、俺?

瞳美:さっき、すみませんでした。魔法うまくできなくて。
でも、どうしてもやらなきゃって...信じてもらいたかったから。
どう思ったか分からないですけど、あれが今の精一杯なんです

唯翔:こっちこそごめん。
いや、なんかやりたくないことを無理やりやらせたみたいで悪かったなって

瞳美:ち、違います。・・・下心があったんで

唯翔:え?

瞳美:見せてほしいんです。絵を

唯翔:あのときの?

瞳美:はい

唯翔:人に見せるのはあんまり好きじゃないんだけど

瞳美:あの絵は私にとって特別なんです。
あの絵は私に忘れていた色を見せてくれました。
灰色だった私の世界に、一瞬光が差したんです。
お願いします。もう一度だけ

唯翔:これでいい

瞳美:あ、ありがとうございます

唯翔:もういいの

瞳美:はい、ありがとうございました。
お邪魔してしまって、すみませんでした

唯翔:あのさ。あっ、いや、えっとその、また見せてよ、魔法。
星とか出せるのって結構すごいと思うよ。
俺の絵なんかよりもすごいって絶対に。いつか、でいいから

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瞳美:(あんな風に言われるなんて、思ってもみなかった)

唯翔:また見せてよ

瞳美:(私の魔法を喜んでくれる人がいるなんて、
・・・魔法なんて、大嫌い)