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「春を知らせる鳥」と聞いて、君が思い浮かべるものはなんだ?

ホー ホケキョ

東京といえど私の地元は田舎だ。今日も耳をすませば、ウグイスの軽快な鳴き声が聞こえてくる。

それに、近頃は在宅でなまりきった体の健康維持で散歩の回数が増えたせいか、鳴き声だけにならず、ウグイスそのものを見かけることが多かった。


あっ、あそこにも1羽。


ウグイスは春になると鳴きはじめることから「春告鳥(はるつげどり)」の別名を持つ。

まっったく…一体誰が命名したのだろうか。こんなの風情しかない(合掌)

季節の巡りなんてのは、人間が桜祭りを開催しなくとも、ヤマザキが春のパン祭りを開催しなくとも、自然が教えてくれている。


それはとても神秘的な事だ。


この流れだと、さぞかし季節の鳥を私が知っているかのように思えるが、基本スペックはスズメ、ハト、 カラス。

こんな低レベルな鳥知識になぜウグイスが組み込んでいるのかは、小学生の記憶が元となる。



「みてごらん、これがウグイスだ。」

嬉しそうに自分の写真をめくるのは、私が3年生になるまでいた校長先生。

彼は朝の全校集会で鳥に交えたスピーチをし、教室の窓からは校内に訪れる鳥を撮影する姿を生徒に何度も目撃されている、少し変わった人だった。

しかし、そんな変わった校長先生が好きで、私はよく校長室にスケッチブックを持って遊びに行っていた。

書き溜めた絵を見せては、変わって校長先生の野鳥写真コレクションを見る。それが当時のお昼休みのルーティーンだった。


そして今日も、自分の絵を見せた後、校長先生の最新作・野鳥激写フォトブックを見ている所だ。


「ええ?さっき見た鳥と似てるんだけど!あっ」


驚きで声が大きくなった私は直ぐに口を手で覆う。

危ない、校長室と職員室は扉越しで繋がっているんだった。

「ああ、1つ前のはメジロ。ほんとうにそっくりだよな。ウグイスとメジロは間違えやすいが、特徴を掴めば問題ない。確かに色は似ているがメジロの方が鮮やか、そして名前の由来でもあるように目の周りがほら、白く縁どられてるだろ?」

「ほんとだ!!違う!でも・・・なんだろメジロよりウグイスの方が美味しそうな色?してるね。」

「おっ、いい感性だね。ひかりちゃんはうぐいす餅ってのを知ってるかい?」

「なにそれー?知らなーい!」

「そりゃそうだよなぁ、なかなか食べる機会はないか。校長先生の歳になるとドーナツよりも好物だ!うぐいす色のきな粉がふりかけられた和菓子の1つなんだけど、求肥の中にあんこが入ってて、くー!これが美味いんだよ。」

うぐいす餅の美味さを思い出したのか、顔をすぼめながら心底食べたそうに話す校長先生はやっぱりかわいい。今思うとひふみんみたい笑


「ふーん。全然想像つかないけど、帰ったらパパに聞いてみる!!!!!!!!!!!」



ドタドタドタドタドタドタ

「忘れちゃう!忘れちゃう!早くしないと!」

先生に注意されない程度に廊下を走り教室に戻るや否や、忘れっぽい私は連絡帳に2Bの鉛筆で「うぐいすもち」と書いた。



「ただいま~…ってうぉあっ!!」

「パパパパパパ!!!!!!おかえりーい!待ってた!」


家に帰って来た父さんに聞くともちろん知っていて、「今度の休みに父さんが食わせてやる」と言ってくれた。

それからのこと、よくやく「今度の休み」になって念願のご対面。

初めてうぐいす餅を見た時は、濁った薄緑のきな粉が気味悪く、なかなか口に出来なかったのを覚えてる。

案の定、

黄色いきな粉とは違った独特の風味に

「むむむ…🤔💭」

と顔をしかめたが、不思議とそれは歳を重ねる事に好きになった。

運良く料理はt食べるのみならずプレイヤーとしての楽しさにも気づき、お菓子作りが趣味となって成長した私はこの季節になると自宅で作るほど「うぐいす餅」は好物になった。



今もこうして求肥を鍋で練っている。

今年は久しぶりに、初めて父が食べさせてくれたあの店のうぐいす餅を食べようかと思ったが、自粛がそれを妨げた。

まぁ良くも悪くも、自宅待機は時間を持て余す。

お陰でお菓子作りにもっ、よいしょっと、精が出で出て仕方がない。

意外と力がいる練の工程を終え、あとは等分に丸めたこし餡を先程の求肥できゅきゅきゅっと包み仕上げていく。

少し難しいが、コツを掴めば案外それっぽくはなる(笑)


網戸から流れ込むそよ風。

部屋の電気を付けずに、お日様の光で作業にのめり込む時間がなによりの幸福だ。


「ふーーーーーっ、完成っと…!」


和食器に丁寧に並べられたうぐいす餅、良い…!!!!


「ん?」

・・・今になって、ふと校長先生が話していたことを思い出した。



「メジロは比較的見かけやすいが、ウグイスってやつは警戒心が人1倍ならぬ、鳥1倍強い。なんつって笑」



鳴き声は聞こえど、姿はそうそう現さない。そんな鳥であることを私はすっかり忘れていた。

嗚呼。

私が散歩中に見ていたのは、きっとメジロだ(笑)


「恥ずかし…笑/////」

メジロを見ながらウグイスと微笑んでいた自分を思い出すと…ウウウあまりにも滑稽すぎる!!

家族が帰ってくるまてま待とうと思ったが、やけくそだ。一足先に出来たてのうぐいす餅を食べてしまおう。


そう思い、器に手を伸ばした時だった。


ホー ホケキョ



またウグイスが鳴いている。


姿が見えなくとも、音で春を知らせる粋な鳥。


春よ、来年もウグイスと共に日本においでなさい。

記事内でちらりと登場したお父さんが連れて行ってくれた和菓子屋は「つる瀬」です。ほほほほんとに美味しいので改めてご紹介したいです!!!

今回の記事ヘッダーとなっている手作りうぐいす餅など、いろいろな創作物をTwitter(@wednesdayhikari)にて更新しています。ご興味が湧きましたら是非覗いてみてください☆

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