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思い出の家を快適な介護空間にする


母を介護する場所は施設だと決めていました。あまりにも老朽化した家、高齢者には危険が一杯の環境だからです。最終的には施設から引き取り在宅で看取りましたがどんな工夫と何が必要だったかまとめてみました。


1,老朽化している我が家

在宅介護を躊躇っていた背景には老朽化した我が家の環境が原因の一つです。昔の茅葺屋根だった平屋建ての家は高齢者には住みにくく子供世代から見ると段差は高いし、お風呂の浴槽を跨ぐにも大腿骨頸部骨折をして股関節の動く範囲に制限がある母には一苦労です。
障害物が多く危険だらけの我が家ですが両親から見れば思い入れのある家です。両親が必死に働いて、60年前念願のマイホームを作りました。

しかも家には思い出がいっぱい詰まっています。柱ひとつにしても子供たちの背比べの後や、家族集合写真を撮った場所、縁側でボーリング遊びした事、自宅から子供達が巣立った後、両親たちは各部屋に入る度子供たちの笑っている顔や昔を思い出しているのではないでしょうか。
大切なその家を快適な空間にするためにはどうしたらよいでしょうか。



2, 8畳間を介護空間にする

施設から母を引き取った時、母は寝たきりでした。必要なのは介護ベット、在宅酸素、エアマット、車椅子が主な福祉用具でした。
介護ベットは壁付けにせず最低60cmぐらい離しておくとよいと思います。おむつを替えたりするご家族、介護者の為と歩行したりされる方はどちらからでも起き上がれるようにするためです。
母に8畳間では広すぎでした。車椅子に座ることが出来なかったからです。しかし車椅子の使用、ポータブルトイレの設置、訪問入浴サービスを活用する場合は8畳間ぐらい余裕がある方が良いです。
車椅子の活用がない場合は6畳まで十分です。
また車椅子以外はコンセントが必要でした。延長コードなどの活用もありますが、プラグが2か所あると便利だと思います。




3,手すりの設置と転倒予防

歩行が不安定になると転倒予防の為に理想的なのはバリヤフリーですが我が家の様に古い家は不可能です。そこで活躍するのは手すりの設置です。

玄関までのスロープ、玄関先、浴室、トイレ、廊下がある場合はその動線に手すりを設置することも可能です。手すりは壁に設置するタイプが一般的ですが床と天井に固定する手すりもあります。また畳からの立ち上がりの為に畳に設置する手すりもあります。



手すりがあれば転倒しないというわけではありません。カーペットで足を滑らせた、畳で足が滑った、ふすまの敷居でつまずいて転んだなどもよくあるアクシデントです。
転倒の頻度が多ければカーペットなどの敷物は除去したほうが良いですが使用の場合は必ず下に滑り止めマットを敷いてください、滑り止めテープなどもあります。また 畳で滑る対策は滑りにくい靴下の使用などの工夫が必要です。
敷居で躓く対策は室内で使用するスロープで防ぐことが可能です。


4,普段気づかない場所の空間整備


電気コードの整理や床が濡れていないか確認するのも大切です。電気コードはまとめて部屋の隅に来るようにしてください。または壁に這わせるようにするなどの対策をしましょう。

床の濡れは要注意ですが、足元が見えるように夜間は足元を照らすライトもあると便利です。
そして見えない空間整備、それは香りです。

ポータブルトイレの使用、オムツを使用されている方は臭いが気になる事はありませんか?香りは心にも作用するのでアロマなど好きな香りを見つけて使用されても良いでしょう。

思い出の写真を飾ったり、会いに来てくれた方々と談笑出来るような空間もあればいいですね。
アルバムを開いてその当時の思い出話をするのも自然と笑顔になって良いかと思います。



5,お風呂に浸かりたい


 浴室を快適にするための工夫はシャワーチェアーの活用です。
ホームセンターに売っているような椅子ではなく、背もたれがあり座面が滑らない椅子です。ここに座って体を洗うことが出来ます。


浴槽に浸かる為には跨ぐ必要があります。それを可能にしてくれるのが浴槽手すりです。跨ぎ動作が不安な方が使用し手すりで体を支え湯船に浸かる手助けをしてくれます。
湯船に浸かるときに気を付けることは浴槽が滑りやすいことです。浴槽の滑り止めマットと手すりを活用すればより安全に湯船に浸かることが出来ます。
浴槽に浸かれない方の対策は浴槽まで入って浴槽の中で椅子に座り半身浴になってしまいますが、シャワー浴より身体を芯から温める事が出来ます。
また、寝たきり状態で自宅の浴室で入浴できない場合は訪問入浴という選択もあります。


6,縁側から昇降リフトで家の中に


古い家は玄関の段差が予想以上に高く、施設に入所する前から段差解消は我が家の課題でした。
最初に書いたように母が家に戻るときは寝たきり状態でした。車椅子を想定して車椅子と昇降リフトをレンタルしていたのですが、さあどうやって家の中に上がろうかと悩みました。
介護タクシーのストレッチャーは昇降リフトに乗れるのか試しましたが駄目でした。結局人力で縁側から母を部屋の中に移動したのでした。
5人がかりです。
無事に母を家の中に・・・そして介護ベットへ・・・
「お母さん、お帰り。家に帰ってきたよ。お待たせしました!!」
介護タクシーの中では意識朦朧としていましたが、家に帰ったよというと意識がしっかりして、手を合わせて「ありがとう」と言っていました。


7,終わりに


住宅改修費だけではどうにもならなった我が家の家事情。
結局寝たきりにならないと家で介護出来なかったのですが、それはそれで良い時間と空間を作ることが出来たのでした。
必要な福祉用具と介護の時間と介護の心構えとお互いを思う気持ち
これらのバランスが取れて、良い時間が過ごせると思います。

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