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一カ月間今までに買ったサイケアルバムを振り返る④ The Jimi Hendrix Experience/Are You Experienced?

今日はあまりにも著名なジミヘンのデビュー作を聴く。
これまで取り上げたアルバムもサイケの中だとベタ中のベタなとこばかりで申し訳ないばかりだが、これは聴き始めた順(覚えている限りでの)で選んでいるためしばらくはこういうベタなアルバムばかりになってしまうのはご了承いただきたい。

ジミヘンこそ、私の大好きなバンドゆら帝のルーツを辿る過程で最初に聴いたバンドであった。
それまでは「昔の洋楽の話にやたら出てくるすごい人」程度の物凄く浅い認識だったため、初めてFoxy LadyやPurple Hazeを聴いたときを本当に衝撃が走った。
ギターをやったことがある人が誰しも知っているであろうアルバムに今更感想を書くのなんてとてもおこがましいばかりだが、どうにかいつも通り率直な感想をつらつらと書いていきたい所である。

曲ごとの感想

01.Foxy Lady

フィードバックから始まる曲はビートルズの「I Feel Fine」が有名だが、この曲はこのハウリングの歪み具合が段違い。この破壊的なイントロは一度聴いたら忘れられないくらいのインパクトがある。
67年発表とは思えないくらいの厚みを持った演奏で、この音源もライブ同然の躍動感が丸々とパッケージングされたかのようである。

ちなみにゆら帝から入った自分にとっては「19か20」の元ネタであることはすごく分かり、結構分かりやすく引用してたことに気づいた。

02.Manic Depression

リズムがドタバタした激し目な曲。
ジミヘンのギターに注目が行きがちだが、ドラムのミッチミッチェルによるギターに劣らない激しいプレイングもバンドのかなり重要な要素である。

03.Red House

三曲目にしてゲキ渋なブルース曲。伝統的なブルースの3コードで進行していき、オブリガードに入るギターのフレーズはB.B.キングぽくてとてもかっこいい。
ジミヘンのボーカルもかなりブルージーな歌い方で良い。

04.Can You See Me

割とシンプルな曲だが、キメの部分やドラムのしばき具合が気持ち良い。
合間に挟まるステレオで右から左へ消えていくギターの音もどことなくサイケ。

05.Love Or Confusion

ファズによってたっぷり伸びた音が存分に楽しめる曲。ギターに埋め尽くされたかのような音像はとてもサイケだ。

06.I Don't Live Today

「今日を生きられない」という悲しげなタイトルに反して、こちらもハードな曲。イントロのカッティングを用いたギターが非常にかっこよく、曲中頻出するリフもキャッチーだ。
アウトロも少々風変わりでフェードアウトしたかと思えばまたフェードインして続くのを複数繰り返して終わる…かなり不思議な終わり方。

07.May This Be Love

ドラムのワールドっぽいリズムや深いリバーブのかかったギターが、エスニックな雰囲気を持っている。ギターソロの雰囲気もどことなく東洋的なものを感じる。

08.Fire

アップテンポでノリのいい曲。ライブでもよく演奏されていた曲で、確かにライブで聴けたならテンションが上がる。
コーラス部の耳の残りやすさもそうだが、ドラムの暴れっぷりはもはや爽快さも感じる。

09.Third Stone From The Sun

タイトルは「太陽から数えて3番目の石」すなわち地球のことを指しており、何やら意味深な雰囲気だが実際はほぼインストの曲。
最初はギターはオクターブ奏法のメロウなフレーズを弾いているが後半になるにつれてファズがかかり、激しくなっていく。ひたすらバンドのセッションのような演奏が続く裏で、何者かによる喋りが超スローで流れており、少々不気味。
3人による自由なセッションに陶酔していく、中々サイケな曲。

10.Remember

地味にイントロのギターのフレーズがとても好き。
今作の中では明るく軽めで、カオスな前曲と次曲の間の箸休め的な感じで聴ける。

11.Are You Experienced?

逆再生の音から始まる曲で、タイトル曲にしてアルバム中最もサイケな曲。
随所で逆再生した音が効果的に使われており、間奏のギターソロも逆再生で挿入される。
何故逆再生の音が不穏な気分に聞こえるのかとても不思議に思うのだが、個人的には普通に自然界では聴くことができない音だから、と思う…。聴いてるとどこかに吸い込まれそうな気持ちになる。

またしてもゆら帝の話となってしまうが、今思うとインディーズ期に出していたアルバム「Are You Ra?」のタイトルは正しくこの曲名が元ネタなんだろうということに気づいた。
坂本さんのジミヘン愛ぶりが本当によくわかる。

Bonus Track
01.Hey Joe

ここからは当初シングルのみで発売されていたものがボーナストラックとして収録された曲になる。
バンドの1stシングルにしてカバー曲。ストーンズやキンクスでもそうだったが当時のイギリスでは最初のシングルはカバーで出さなければいけない慣例があるのだろうか…。
最初のシングルにしては渋く、泥臭いブルージーな曲だが私は結構好き。ボーカルも中々名演だと思う。

02.Stone Free

「Hey Joe」のB面に収録されていた曲で、CDではなぜかこの曲のみモノラルで収録されている。
コーラス部分はかなりキャッチーで、結構耳に残る。全然この曲がA面がよかったのでは?と思うくらいには好きな曲。

03.Purple Haze

もはや語るべき部分は語り尽くされたであろう、私も大好きな説明不要の大名曲。至る所にギターの名フレーズが散りばめており、サイケどころかロックが好きな人間は大体好きなんじゃないだろうか。

挙げる所があるならやはり「ジミヘンコード」と呼ばれるEの変形コードを特徴的に使用した事と、「E→G→A」というシンプルなのにとてもかっこいいコード進行だと思う。
どちらもガレージサイケ的なバンドでは頻出される手法で、ジミヘンコードに至ってはその特徴的な音の響きから様々な所で使われており、とても偉大な功績だ。
正にサイケを代表する名曲。

04.51st Anniversary

「Purple Haze」のB面に収録された曲。
それ故かとても印象が薄く感じてしまう…。
だが、歌詞の内容がとてもユニークで、結婚に憧れている彼女に対して「いい所しか見てないだけだ」と反論するアンチ結婚ソングだった。着眼点が独特だが、日々の生活への愚痴を歌にしていた初期のブルースのテーマに近いといえば近いのかもしれない…。

個人的な印象だが、有名なシングル曲のカップリングって下手なアルバム曲より影が薄く感じる。普通ならば有名なシングルのカップリングというだけで、ついでに聴いてくれて知名度も上がるような気もするが…。いつか有名シングルの裏の影薄いカップリング集で記事を書いてみたい所。

05.The Wind Cries Mary

シングルとなった曲だがPurple Hazeから打って変わってかなりスローテンポな曲。
この曲もリフが良く、カバーしているアーティストも多いイメージがある。
歌詞もまた、無常な雰囲気が好き。次作収録のLittle Wingといい、ジミヘンのブルージーな曲は名曲ばかりだ。

06.Highway Chile

前曲のB面に収録されていた曲で、こちらは普段通りのアップテンポな曲。
何故かあまり聴いてこなかった曲だが、意外と同時期の曲の中ではハードよりな曲で「Electric Ladyland」に収録されていても違和感はないだろう。チョーキングを多用したリフがとてもかっこいい。

まとめ

「Foxy Lady」や「Purple Haze」などの著名な曲のインパクトが強いが、他のアルバム曲はやや聴くことが少なかったのだが、「Fire」や「I Don't Live Today」など、どの楽曲も負けず劣らずかっこいい曲ばかりだ。
ファズがかかったギターの破壊力はとてもすごく、ギターソロは轟音に包まれ、もはや心地良さすら感じる。
激しい曲が目立つ一方で、「Red House」や「The Wind Cries Mary」といったブルースの要素が強い曲もあり、ジミヘンの表現の手数の多さにやはり驚かされた。このアルバムを理解せずしてサイケは語れない。

恥ずかしながら、ジミヘンは1stと2ndをレンタルで済ませてしまった為CDが手元にない。なので、気になった歌詞についてはネットで和訳を調べながら聴いたりしていた。
そこで気づいたが、ギターにばかり評価が行きがちだが詩もかなり独特なことである。
特に「51st Anniversary」とか、結婚に対しての愚痴のような内容を歌ったりと着眼点が面白い。「Purple Haze」に至ってはドラッグでヘロヘロになった人の歌だし。
詩でも曲でも唯一無二のセンスをもったバンドだったということを再認識させられるのだった。いつかはちゃんとCDを買いたいところ。

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