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海の中に雨は降らない

私はダイビングが好きだ。

20代半ばの頃、忙しさとストレスMAXの大学病院周産期センター勤務時代に、現実逃避するかのように始めたダイビング。

日常生活では浅く速くなる呼吸も、海中では深く、長い呼吸に変わる。
独特の呼吸法をマスターしなければ、浮力のコントロールができないからだ。
いつもの、浅く速い呼吸では、たいてい海面に向かって浮かんで行ってしまう。

普段の呼吸パターンを変化させることは容易いことではなかったが、透き通る青と、海中に差し込む神々しい陽の光と、偶然巡り合った優秀なインストラクターに助けられ、私はダイビングに必要な呼吸スキルを着実に身に付けた。

「自分の呼吸1つで体をコントロールできる」という、全能感にも近い感覚に私は虜になった。

これは水中世界の虜になった人にしか分からない、独特の感覚なんだろうと思う。

呼吸による浮力コントロールの他にもう1つ、私が虜になったのが、真っ青な世界。

動き回る人も話し声も何もない、ただ青が広がる世界が好きなのだ。

そうなると、ダイビングをしていると常に気になるのが、天気。

台風はできてない?風は?波の高さは?うねりは?雲の量は?

ほんの少しの要素で同じスポットでもまったく違った景色に見える。

私は水深の浅い青い世界に差し込む、幻想的な陽の光がある光景が好きなので、ピーカン晴れが好き。
だからダイビング前はとにかく天気予報が気になって仕方ない。

これは裏を返すと、曇りや雨の場合、究極の癒しであるダイビングがストレスになりかねない、ということでもある。

ある日、どんよりとした空模様でのダイビングになりそうで、テンションの下がりまくった私を見ていたインストラクターが一言、こう言った。

「海の中に雨は降らないよ」

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