恋しキミ_

凪沙さん『恋しキミ。』×NOTEさん『CALL』=『恋しキミ。』

無料作品の目次はこちら。


さあて、前回のテキストでごちゃごちゃ書いてましたセッションを始めようと思います。
今回は以下のお二人の作品を元に。


凪沙さん:『恋しキミ。』
https://note.mu/gisanagisa/n/ne50f4b10a0ac


NOTEさん:『CALL』
https://note.mu/note_/n/n470d5237a1b0


できるならお二人の作品を別ウィンドウで開きつつ、読んでいただけると嬉しいです(^-^)

さて、前回のテキストで登場人物の一人は設定ができてます。
もう一人の女の子のほうをどうしようかと悩みつつ、まあ見切り発車で行ってみるかと。イメージは『恋愛スイッチ』と同じ方向性で良いかな?

では、参ります。


  ※

桜を見に行こう、と切り出したのは彼だった。
「――スケッチ?」
背の高い彼を見上げながら念のため尋ねると、彼は楽しそうにうん、とうなずく。
「河川敷の桜並木の辺り。あそこに家を建てるならどんな感じの家が良いかな、って思ってね」
誰がどう見てもワクワクしてるようにしか聞こえない彼の口調に、私は小さくため息をつく。
本当は今日は観たい映画があったし、彼の『スケッチ』が始まったら簡単には終わらないのは知っていたのだけど、彼が言い出したら聞かない人だということはとっくに知っていたので、ここで嫌だと言うわけにもいかない。
「じゃあ、途中で何か買って行きましょうか」
私が諦めたように言うと、彼が本当に嬉しそうにそうだね、と微笑む。
その微笑みが大好きな私は、それまでのいろいろなことが本心からどうでも良くなる。
これがいわゆる、『惚れたもの負け』というやつなのだろう。
「よし、じゃあ『千寿庵』で桜餅を買っていこうか」
「あ、それいいですね。そうしましょう」
『千寿庵』の桜餅、と聞いただけで一気にテンションが上ってしまう私もどうかとは思うのだけど、あそこのお菓子は本当に美味しいから仕方ない。
私は思わずスキップしかねない気分を抑えながら、のんびりと歩く彼に併せて歩き始めた。


『恋しキミ。』
作 楢崎六呂
原案 凪沙『恋しキミ。』
イメージ曲 NOTE『CALL』


私の名前は夢野乃音。
どうやって読むの、とは聞かないで欲しい。
なんせそのまんまの読み方だから。

小さい頃から私は『ゆめののーと』などという、まるで魔法少女アニメにでも出てきそうな自分の名前を、同級生の――特に男子に、何かにつけてはバカにされていた。
何度も両親に名前を変えて欲しい、とお願いしても、笑って済まされてしまうだけで。
だから私は、大学生になった今では、自分の名前と、同年代以下の男たちが大嫌いになっていた。
それと、『ノート』も。

彼――只野能人さんと出逢ったのは、私が大学2年に入った頃だった。
私の大学は5月に大学祭があるのだけど、特にこれといってサークルにも入ってなかった私が、数少ない親友たちのサークルを冷やかした後、なんとはなしに構内をぶらぶら歩いていた時のことだ。
構内のど真ん中を横切っているメインストリートの中央分離帯に座り込み、目の前の学生会館を見上げながら、手の中で拡げた大学ノートに何かを書き込んでいた彼。
普段ならそんな『変な人』に――ましてや『見知らぬ男性』に声をかけることなどあり得なかったのだけど、――きっと大学祭のふわついた雰囲気が影響したのだろうか。
特に構えることもせず、私は声をかけてしまったのだ。

「――何を書かれてるんですか?」って。

私の声に彼は特別驚いた様子もなく私を見ると、今でもドキッとするあの微笑みを浮かべながら、はいどうぞ、と拡げていた大学ノートを見せてきて。
その自然な様子に、私もつい覗きこんでしまったのだ。

そこには、学生会館が描かれていた。
濃い目の鉛筆で描かれたラフ画なのに、とても綺麗な絵だと思った。

「へえ、綺麗ですね、これ」
私がそう答えると、彼は微笑んだまま首を横に振って返してきて。
「これ、まだ途中なんだ。ここに僕の絵が入らないと」
「――『絵が入る』ですか?」
思わず問いかけた私に、彼はノートを手元に戻しながらそう、と答える。
「あと1時間位かな。もし見たかったらそのくらいに」
来てね、とは続けずニッコリと笑う彼に、私も来ます、とは言わないまま頷いて――それが彼との最初の出会いだった。

その1時間後。
結局私は彼の『絵』を見に戻り、何となく流れで学生会館の喫茶室でお茶することになって。
そこで私は彼の名前や、彼がこの学校の卒業生であり、建築事務所で建築設計をしてることや、大学ノートに『絵』を描くのは小さい頃から続いてる『習性』みたいなものなんだということなどを知ることになった。

「――でも、どうしてノートなんです?」
『ノート』と聞いてつい口からついて出たその問いに、彼は不思議そうな顔をして首を傾げる。
「どうして、――って、楽だからかな」
「でもほら、今ならスマホとかタブレットパソコンとかあるじゃないですか。デジカメだってあるし」
私が畳み掛けるように言うと、彼は困ったような表情を私に向けて、こう返してきたのだ。

「でも、やっぱりノートが一番、想いが残る気がするから」と。


  ※

……くわあ、これは12時までには終わらんぞ。
仕方ない。一旦休憩はさみます。

  ※

一服して、皆さんがアップされてる作品を見てきました。
ほんと、NOTEって創作者には幸せな場所だなぁ、ってしみじみ。

では、続きを。

  ※


「よし、この辺りかな」
彼の言葉に、私たちは桜並木の片隅の路側帯になっている部分に座る。
ふわり、と撫でる春の優しい風が、歩いて火照った身体を少しずつ落ち着かせていく。
「――はい、お茶です」
先ほど買ってきた『千寿庵』の袋からお茶の入ったペットボトルを取り出して彼に渡すと、彼はいつものように大学ノートを拡げながら、片方の手で受け取る。
「ありがとう、ノートちゃん」
微笑む彼にそう呼ばれると、私の名前が何かとてつもなく素晴らしい物のように思えて、くすぐったい。
「良いから初めてください。私は本でも読んでますから」
私が桜餅の包みを拡げながら返すと、彼ははいはい、と笑いながら胸ポケットの鉛筆を抜き取り、桜並木へと身体を向けた。


私と彼は、その後もちょくちょく会うようになっていた。
と言っても、別に付き合うようになった、というわけではないのだけど。

私は基本授業以外は暇だったし、彼も普通の会社員とは違う生活をしていたから、なんとはなしに互いに連絡をとって、時間の合う時に会うようになっただけの話だったのだけど、少なくとも私はそんな彼との時間が心地よく感じられるようになっていた。

年上の男性だったから、というわけでも無いのだと思う。
だって会って食事したり、彼のスケッチ散歩に付き合ったりしていると、時々ふっと彼が年上とは思えない時すらあるのだから。

ならどうして、彼と会おうと思うのかと言われると――正直私にも解らない。
これまで『恋愛』というものをしたことがない私にとって、これが恋愛なのかどうかも解らない。

ただ、何故か一緒に居たい。
年上の彼と横に並んで歩きたい。
そう思うようになったのは確かだった。


「――ちゃん?」
ふと彼の声が聴こえて、私は目を開けると、視界いっぱいに彼の顔があった。
「ひゃあっ?!」
「うわっ!」
思わず口から出た叫び声に、目の前の彼が少し飛び上がる。
「な、何?どうしたの?」
心配そうに覗きこんできた彼を見ないように――っていうか彼に見られないように、両手で思わず顔を隠す私。
「ななななんでもないですから!」
「なんでもない事ないでしょ?顔が真っ赤――」
「ああもう!何でもないですってば!」
私は恥ずかしさのあまり、顔を隠していた両手を彼の両頬に当てて押し返す。
「でもほら、熱とかあるのかも知れないし――」
うわ。
これはまさか、お話で良くある『おでこぴとっ』への伏線じゃないか。
「良いから離れてくださいって!」
私の抵抗も虚しく、私の両手に挟まれた彼の顔が徐々に近づいてくる。

――いやちょっと待って。
これって何だか、はたから見ると私、

――彼にキスを求めてるみたいに見られるんじゃない?

「わーわーちょっと待って待って!」
ジタバタと抵抗する私。
今日はシックに決めてこようって新調したスカートが、すっかりシワと芝草だらけになる。
「良いから。大人しくしな」
本気で心配してるのか、少しキツ目の口調で返されて、つい抵抗をやめてしまう私。
そんな私のおでこに、ひんやりとした、でも少し硬くて柔らかい何かがぴとっ、とくっつく。
「――うん、熱はないみたい」
彼のささやきが、熱湯並みに熱くなった耳元で聴こえる。
「誘ったのは僕だからね、そのせいで風邪引いちゃったら申し訳ないし」
彼の言葉が、――彼の発する音一つ一つが、私の身体に電気を走らせる。

数ミリも離れていない場所にある彼の唇。
このままちょっと顔を起こせば、そこに彼の唇がある。
このまま、顔を起こせば――


「――ともかく、風邪じゃなくてよかった」
身体を起こした彼が、まだぼんやりしてる私に微笑む。
「ほら、こんなところで寝ちゃうから、草がいっぱいついてる」
そう言って私の髪に手を伸ばし、髪に絡みついた草を丁寧に取っていく彼。
彼の手が髪に触れるたびに、私の身体の奥の奥に隠れていた桜色の何かが身震いするように動く。

大学ノートが好きな彼。
そんな彼は、私を好きになってくれるのだろうか。

妹のような、では無く。
恋人として。

「ほんと、しょうがないな、ノートちゃんは」
そう言って笑う彼に、私は思わず下を向いて、心のなかでこうつぶやいた。


あなたが好きです――と。

(了)


  ※

くわあ。
なんだこのオチ。
即興で思うままに書き進めた結果がこれって、――くわあ、身悶えする。

っと、コホン。
凪沙さん。NOTEさん。
こんなんでましたけど(ふるい)、どうでしょうか?(^_^;)
気に入ってもらえると嬉しいですが……。

さて、あとは表紙絵かな。
これは……そうだな、『恋しキミ。』のイラストをお借りしようかしら。
いまからお願いしに行こうっと。

  ※

良し、っと。
表紙絵も完成。
とりあえず今回も形にはなりましたヽ(=´▽`=)ノ
凪沙さん、NOTEさん、どうもありがとうございました。
今回もいい勉強になりましたですヽ(=´▽`=)ノ



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