見出し画像

書評 兄弟 余華  中国の激動の時代を描くことにより、その社会システムの矛盾を浮き彫りにした作品でした。

画像1

時代は、近代、中国の激動時代。
上巻は、文化大革命時代を
下巻は、復興経済時代を描いていました。

主人公は血の繋がっていない兄と弟
両親が再婚どうしなのです。

冒頭、弟が女子トイレで女の尻を覗いたという痴漢の罪で市中引き回しにされるところから始まる
本書は、下品であり、過激である。
エキセントリックある。

話しが進行すると、トーンが急激に変化する。
文化大革命の悲惨さが漏れなく表現されていて
読者は、兄弟に同情し号泣してしまう。
街全体が、国全体が狂人集団のようになっていて
平気で無実の人を悪人にして
殺しても平気なのだ。
兄弟の父は、無実の罪で殴り殺され
母も・・・死ぬ。

もし、自分がこんな世界にいたら
僕は3分も持たないと思う。

それが文化大革命

革命という名の暴力

下巻は、復興経済の話しだ。
主人公の兄弟は大人になる。
一人の女に夢中になり仲違いしてしまう。
その女は誠実な兄と結婚する。
弟には、商売の才能がありのしあがり
逆に、兄は愛と正しさの中に生きる

小悪党の弟が幸せに
誠実な兄はどん底に
街の人たちも、金に翻弄されてクレージーなブラジルの何とか祭のような狂喜乱舞を繰り広げる
その姿は、文化大革命の上巻と何ら変わりなく
狂人たちの宴そのものだった。

処女美人大会など、その代表格で
処女膜を作れる道具とか
何じゃ、そりゃである。

読んでいる間にだんだん腹がたっていく
ラスト、金持ちの弟は兄が出稼ぎに行っている間に
初恋の人、兄嫁とそういう関係になる
弟も屑だが、兄嫁の彼女も最低だ。
金がすべての価値観の世界では、何でもいいことになってしまい
倫理も何もなくなってしまう

それは、まるで文化大革命のあの狂った時代のようだった。
彼らの父親を殴って殺した学生たちと同じだ。

誠実な兄は、弟と妻に殴り殺されたのと同じなのだ。


妻に浮気された兄は、電車飛び込み自殺する。
何なんだ、この結末は
その後も弟は成功し、兄の妻は弟の金で美容院を開き
その後、売春組織みたいなのをつくり成功する

何なんだ、これは
よくわからんが、腹がたつ。
前半の涙を返してくれ・・・。
そう思ってしまったが、これが人間だということなんだろう。

人が、いかに弱く流されやすいか
悪にも善にもなりうる存在であり
不確かな存在なのかがよく表現されていた
力作だと思う。

2021 7 10



この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?