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感想 鹿の王 (上下)  上橋 菜穂子 なんとなく もののけ姫 に似ていると思った。

環境問題がモチーフだからか、飛鹿に主人公が乗るからか
宮崎監督の もののけ姫 に似ていると思いました。

本書は疫病の話しです。
ある征服王朝の移民がやってきて、元から来た人たちを追いやる
文化も習俗も違う

山犬に噛まれて死ぬという事件が炭鉱で起こる
ウイルス感染である
元からいた草原民族には免疫があり助かるのだ

主人公は二人いて、ヴァンという山岳民族の元戦士で伝染病の感染者と、この病の撲滅をなそうとしているホッサルという医師だ

ヴァンの物語とホッサルの物語の二つが同時進行で動き、後に一つに交わっていくという構造になっています。

気になった言葉をpickupしていきます。

国と国との関係というのは、油断したものが不利になる


病素も生き延びて増えたいという欲求を持っている


この世に生まれ落ちたときにもらった身体で、生き物はみな、命をつなぐための、無数の小さな戦と葛藤を繰り広げている。


上橋さんは、あとがきで本書を書くときに浮かんだ三つの響く考えを紹介している。

・人は、自分の身体の内側で何が起きているのかを知ることができない
・人の身体は、細菌やらウイルスやらが、日々共生したり葛藤したりしている場である
・それって社会にも似ているなぁ・・・

寄生虫の中には、宿主を乗っ取るものもいる
すぐに殺すのではなく、子孫を残した後に殺すパターンもある

そのウイルスは、免疫のある人たちは無害であり
免疫のない人たちには有害である

それは武器になる

ヴァンは、その反逆者たちに立ち向かおうとする
ホッサルのほうは、その病の撲滅を考えているが

祖父の医師が治療のときにとった行動が興味深い

今でいうワクチンの実験をある高官の妻でしようとするのだ

その人は運が悪ければ死ぬかもしれない
しかし、未来のたくさんの人たちは救われるかもしれない

この場合の医師の倫理はどうなるのかが気になる
新薬の試しは危険なのだ
それは、ウイルスを武器にして戦っている奴らの考えと、どう違うのか

人の生命を救うという医師が、人を実験とし、その人の生命を危険にさらしている
大勢の人の生命を救うためというが
人の生命を実験するということは死ぬかもということでして、それと武器にするのとでは何か根本は同じではないかと感じました

相手を危険にさらしているのですよ
下手したら死にます

・・・のために、やっている・・・

という正当性は、僕はとても怖いと思う

たくさんの人の生命を救うために新薬の実験をする
戦争を早く終結させ犠牲者を減らす目的で核爆弾を投下する

・・・のために、やっている・・・

くりかえすが、僕は、これは怖いと思う

ウイルスは、増殖するために人体に感染する
間違った皇帝を作らないために暗殺する

この物語の中でも、色んな葛藤がある。
身体の不思議を、国家の構造にリンクさせた
この少し理屈っぽいが面白い話し
たぶん、好き嫌いが出ると思いますが、僕は好きです。



2023 4

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