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福岡市長から学ぶ、既得損益の壁を乗り越える方法

noteを始めた当初、少しだけ中小企業のためのブックガイドを書いていたのですが、こちらもたまには更新していきたいと思います。

今回紹介するのは、福岡市の高島市長の書籍「日本を最速で変える方法」(日経BP社)です。


私が所属している、IKEUCHI ORGANICは昨年7月まで、福岡に店舗を構えていたのですが、他の自治体と比べても福岡市の助成金の対応が圧倒的に早く、福岡市はどうしてここまでスピード感があるのか驚きを隠せませんでした。(会社としても先行きが不安な中、とても助かりました)

私自身、17年前になりますが福岡に2年ほど住んでいたこともあります。

当時お世話になった先輩方から、市長が変わった事でスタートアップに対する取組がしやすくなったと聞いていました。

それが現在の福岡市長、高島宗一郎さんです。元々は福岡のテレビ局アナウンサーでした。就任当初、市政に対する市民の信頼度は41%と逆風からの船出だったそうです。

それが2020年の同調査では83.9%、人口増加数・増加率ともに政令指定都市で1位となり福岡市は日本で最も元気な都市として、脚光をあびることに。おそらく全国でも最も有名な市長ではないでしょうか。

私も一度講演を聞いたことがありますが、アナウンサーだけあって人を惹きつける言葉、立ち振る舞いが見事で、熱を帯びた自分の言葉で話されている姿が印象に残りました。

書籍を読んでも、当時講演を聞いた時と印象は変わらず、国からの給付金はなぜ時間がかかったのか?国のワクチン開発はなぜ間に合わなかったのか?日頃から疑問に思っていることを、戦後日本が抱える構造的問題から丁寧に説明しています。どのメディアよりも、この本を読むことで理解が進みました。

高島市長の一体何がすごいと思ったのか、4点紹介します。

1.自らファクトやデータを調べてなぜなのか?人任せにせず、自ら仮説を立てて自分なりの意見を持っている(他人からの請け売りではない)

2.前例があるから諦めるのではなく、前例を疑う(航空法の高さを疑い、福岡市の高層ビルを建てるビッグバンの事例が、大変参考になります)

3.既得権益に臆する事なく立ち向う
どの業界にいても、既得権益の壁を破れずに悩む方は多いのではないでしょうか。市長ならではの既得権益に対してどう立ち向かうか?書籍では社会問題を解決する「大義」こそ必要だと述べています。

私たちの業界とも比較的近い、クリーニング業界の既得権益からどのようにスタートアップの新規参入を呼び込んだか?の事例が、生々しく語られていて、なるほどと思いました。

4.多種多様な人に会う
市民はもちろん、ベンチャーを中心としたあらゆるジャンルの経営層、そして国内外のITサービスにも多く触れているので、考え方がフラットで、新しいことを取り入れてチャレンジする気概があります。市民のため、職員のために福岡市を輝かせたいという強い思想を持っているから、本気度が違います。

他にもたくさん紹介したい点がありますが、興味を持った方はぜひ本書を読んでいただきたいです。特に参考になるのが、高島市長が政治の世界では、ビジネスの世界とは異なるルール、力学に基づいて物事が決まっている事を理解する必要があると力説している点です。

書籍の中では、このような言葉で書かれています。

せっかくの新しいビジネスアイデアを「ビジネスプランコンテナスト用のプレゼン」で終わらせず、社会を実装させるためには学校では決して教えてもらえない政治の世界の力学や政治家・官僚の原理原則を理解し、法律や規制を変えていく戦略的なアプローチが必要になるのです。

経営者でなくても、ビジネスパーソンと多く交流している高島市長が、どのようにビジネスを見ているか、今のビジネスパーソンに足りない点が何なのか?直球で書いているのでとても参考になります。

最後に、私がなぜ、中小企業で働く人のためにオススメしたい理由について書きます。

福岡市は政令指定都市ではあるものの、国政ではなく、ローカルの一部です。麻生太郎氏からも、「オメェいつ国に来るんだ?」とべらんめえ口調で言われたそうです。

それに対しての答えは、見事な切り返しで、実際の書籍で確かめていただきたいのですが、高島市長の持論は「福岡が全国のロールモデルを作って全国に広げる方が日本を最速に変えられる。」

だからこそ、特定のエリアから改革を行うと宣言されています。これはまさに地方の中小企業と共通することではないでしょうか?

私たちの会社でもSDGsが言われる遥か昔から、「環境と安全に配慮したモノづくり」を続けてきました。

ここ数年、ブームのように大企業がこぞってSDGs、サスティナブルと言い続ける姿は疑問に思う時もありますが、私たちが知らないだけで、SDGsの活動をしている中小企業は日本に五万とあるはずです。

私たちの会社の取り組みが、今から4年前に朝日新聞の一面に取り上げられましたが、それを読んだ大企業からもかなりの問い合わせがありました。

1社が世の中の全てを変えることはできないかもしれませんが、きっかけを作ることはできるかもしれない。

だからこそ、IKEUCHI ORGNANICでは、誰もが実現したことのない、企業指針「2073年までに赤ちゃんが食べても安全なタオルを作る」 を掲げたり、タオルメンテナンス制度を導入しようとしたりしているのです。

改めてこの本を読み、書籍でも紹介されている、目的(作用点)を最小限のパワーで動かすために、アプローチすべきポイント(力点)を見定め、力を加える仕事とは何なのか?改めて考え、実践していきたいと思います。

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