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たとえば、あんぱん

唐突ですが、あんぱんのことを考えていました。

世の中には、食パンも、クロワッサンも、クリームパンもあります。
別にどれが一番!と順番をつけるのではないけれど、
あんぱんってとってもおいしいんだよ。
って知ってほしいとします。
そして、おいしいあんぱんを作っている人が、人知れずいるんだよ。
それを、人々にもっと知ってほしいよ。
あるいは、おいしいあんぱんを探している人に伝えたいよ。
と。

あんぱんを工藝に置き換えてみましょう。
工藝が世の中のすべてではないけれど、工藝がある暮らしっていいよ。
そして、人知れず素晴らしいものづくりをしている人がいるよ。
それを、もっと知ってもらいたいよ。
あるいは、そういう作り手、そういうものを探している人に伝えたいよ。
と。

すみません、あんぱんで。
まあ、ひとつのたとえです。
そして、工藝があんぱんだとしたら、
餡もパンもトッピングのごまもおいしいものがいいですよね。

伝える側の者としては、それをどのように伝えたらよいのでしょう。
そう思うと、まずおいしそうな姿をお見せしたいと思うでしょう。
かたち、焼き加減、トッピング。
そして、新鮮な感覚を呼び寄せるために、ちょっと奇抜なアイデアを出してみたり。

企画自体にもそういうところはありますね。
素敵にしよう、楽しくしよう、かわいくしよう、かっこよくしよう、、、と。
そうすることで、今まであんぱんに興味のなかった方まで、新たに興味を持ってもらえるようになるかもしれないですから。

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でもね、それがエスカレートしていくと、何か違うかな、と思うのです。
餡が置き去りにされていないだろうかと。

あんぱんといいながら、餡自体のおいしさに力は注がれなくなっていたり、
究極、餡が入っていなかったり!

もちろん、食べ物としておいしければいいのです、別にあんぱんじゃなくっても。
でも、あんぱんが築き上げてきた!イメージの上に乗っておきながら、あんぱんじゃないっていうのも、何か違うかな、そう思うのです。

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今、みんなデザインや企画力に優れてきましたよね。
それはとても素敵なこと。
でも、表に見えない餡のことも大切にしている作り手がいたら、そういう作り手こそ、この場では紹介していきたいのです。

すぐに見えるところだけに力を注ぐものが評価されていくのではなく、一見わかりずらいけれど、実は大切なところにこそ力を注ぐひと。
そして、そういうことを大切に思います。

作り手同士の関係性にもいえないでしょうか。
姿、かたち、トッピング、アイデアは、すぐに見えますから、そこにおいて競い合う力が強くなりすぎていないだろうかと。
おいしい餡づくりとは、見えにくくって、伝わりにくくって、手間ばかりかかって大変です。
でも、だからこそ、この仕事を始めたのではないかって。

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すみません、ぶつぶつと(笑)
野外クラフト展の企画者としては、素敵にしよう、楽しくしよう、かわいくしよう、かっこよくしよう、、、はもちろんのことです。
そんな会にしたいです。

と同時に、工藝が育まれていくことと関っていきたいと希う者としては、おいしい餡も大切に育みたい、と思うのです。

工藝がある暮らしっていいよ。と、先に軽やかに書きましたけれど、それだけではなく、工藝にまつわる世界の中には、豊饒な世界とつながる粒子がたくさんあると信じています。

「工房からの風」にそよぐ風の粒子の中には、丁寧で、上質で、可能性豊かな餡の粒子がきっとあるし、それをこの野外展覧会そのものからも育てていこうと希っています。

2015/09/30 工房からの風director's voice初出 2019/06/28加筆修正

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