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診療看護師(NP)×がん看護専門看護師が挑戦する、訪問看護で成し遂げたいこととは

<プロフィール>
■氏名:中澤 健二
■役職:musubi Group 在宅医療事業本部 マネジャー 兼 訪問看護ステーションmusubi大正 管理者
■経歴:
平成18年 公益社団法人 東松山医師会病院
平成24年 群馬大学大学院保健学専攻 博士前期課程がん看護専門看護師コース 修了
平成24年 社会医療法人財団石心会 埼玉石心会病院
平成29年 国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科保険医療学専攻 特定行為看護師養成分野(旧:ナースプラクティショナー養成分野) 修了
平成31年 社会医療法人駿甲会 コミュニティーホスピタル甲賀病院 診療看護室室長
令和4年 musubi Group 在宅医療事業本部 マネジャー 兼 訪問看護ステーションmusubi大正 管理者
■資格・所属:
がん看護専門看護師
診療看護師(NP)プライマリ・ケア
看護師特定行為研修指導者講習会 修了
看護師の特定行為に係る指導者リーダー養成研修会 修了
公認心理士
日本緩和医療学会、日本臨床腫瘍学会、北関東医学会
日本NP学会、日本看護科学学会、日本研究学会
日本がん看護学会、日本専門看護師協議会 etc

診療看護師(NP)の資格取得を志した動機

 私は診療看護師(NP)の資格を取得する前は、がん看護CNSとして、日々がん患者さんと向き合い、ケアに携わってきました。その中で、患者さんが“がん”と診断された時から亡くなるまでの間、症状マネジメントを中心に関わってきました。がん看護CNSとして看護専門外来を持ち、患者さんと以前より濃密に関わる時間が増えたからこそ、生活習慣病などの慢性疾患や急性疾患に対する知識が必要であることを実感しました。その為、診療看護師(NP)の専門性であるジェネラリストとしての幅広い知識や技術といった疾病管理能力を養い、スキルアップを図ることが、がん患者さんの健康と生活の支援により役立つと考え、診療看護師(NP)の資格取得に至りました。

診療看護師(NP)とがん看護CNSの資格をどのように訪問看護へ活かしていきたいですか?
 
診療看護師(NP)は、医師側と看護師側、両側面の視点を持った医療者であり、careとcureの両方を重要視しています。その為、医師と協働することは基より、医師と看護師との間を繋ぐパイプ役にもなり、看護師と共にチーム医療を円滑に運ぶだけではなく、医療の質を高めることにおいても重要な役割を担えると考えています。
 高齢化の進展や生活習慣の変化により、がんや心不全などの慢性疾患患者さんは増えています。超高齢社会を迎えた中、高度医療技術や予防医学推進による医療水準の向上に伴い、患者さんのニーズも多様化してきています。身体的・精神的・社会的側面から全人的な視点で患者さん個々のライフスタイルに合わせた関わりが必要となってきている今だからこそ、がん看護CNSとしてのケア能力が重要になると考えています。

訪問看護をやろうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?
 振り返って考えてみると、在宅医療に興味を持ち始めたのは10年ほど前、がん看護CNSの資格取得が大きく影響している様に思います。がん看護CNSとして関わった一人の患者さんA氏とのやり取りを今でも鮮明に覚えています。資格取得当初の環境は、県のがん診療指定病院に身を置き、急性期の患者さんに主に関わり仕事をしていました。仕事内容は、緩和ケアチームに属し院内を横断的に活動しながら、「がん相談外来」という看護外来を開設し、週3日の外来を行い、空いた時間に外来化学療法室で働くというハードスケジュールをこなしていました。「がん相談外来」では、がん患者さん・家族に対し、がん告知後のカウンセリングやがん薬物療法における副作用マネジメント、終末期患者さん・家族に対し療養指導や精神的ケア等を行っていました。
 冒頭で上げたA氏は、身寄りのない50代男性で大腸癌と診断され、告知場面から立ち合い、手術療法、がん薬物療法を行いながら癌の再発・転移という過程を辿り、終末期は一般病棟で過ごし亡くなられました。私はその一連のプロセスにおいて関わっており、A氏とはよく冗談を言い合いながら他愛もない話をする間柄でした。その中でA氏が言っていたのが、「自宅で死ねれば本望だな。でも、独りだし難しいかな。どうせなら中澤さんに看取ってもらいたい。緩和ケア病棟も考えたけど、知っている看護師さんも多いし、最期の時はここでよろしく頼みます。」と緩和ケア病棟は選択されず、最期は外科病棟で私が看取りました。私が在宅医療に興味を持ったのは、この様な身寄りのない患者さんや、家族がいるのに自宅で最期を迎えたいのに叶わない患者さんに対し、自宅で安心して亡くなられる環境を提供したいと考えたからです。

診療看護師(NP)とはどんな人?
専門看護師(CNS)ってどんな看護師?
診療看護師(NP)と専門看護師(CNS)の違いは?
ご興味をお持ちいただけましたら、インタビュー最下部に記載していますので、ご覧いただけますと幸いです。

訪問看護を実際にやってみての感想はいかがでしょうか?

 実際に訪問看護師として働いてみて、一番に思うことは環境の違いです。病院では患者さん、在宅では利用者さん。病院では治療をして病気を治すことに重きを置くため、病院の規則や治療方針に対し従うことが前提にあります。一方で、在宅医療においては患者さんが選ぶ立場であり、看護ケアというサービスを提供し、患者さん・ご家族のニーズに応えることが重要となります。また、病院では患者さんの状態変化時などにおいて、診察や画像検査(XP・CT・MRI等)、血液検査、ECG等により、客観的に捉えるために他覚的所見を取ります。しかし、在宅医療においては、患者さんを評価する際に使える医療資源が限られており、訪問看護で行える範囲にも限界があります。働きだした当初はこのことでジレンマに陥りました。在宅における患者さんの状態評価において、最も重要になってくる能力がフィジカルアセスメントになります。フィジカルイグザミネーションがしっかり行えるかが患者さんの状態把握において必要不可欠だと考えています。私自身、訪問看護で働いて先ず思ったことは、すぐに他覚的所見をとれる病院の環境が如何に恵まれていたかということ、画像や血液検査等に頼りきっていたかということを強く実感しました。
 訪問看護は病院の入院患者さんと違い、毎日顔を合わせることは稀です。その時その時が勝負になります。病院で言えば、外来診療に該当すると言えますし、訪問したその時にしっかりと評価を行えないと、状態悪化にも繋がりかねません。その時々で自身の役割が変化し、病院で言えば、リーダー役割となり周りの他職種と連携することも必要ですし、かかりつけ医と連携を取ることも必要になり調整能力も必要と感じています。ただ、大半の患者さんは安定しており、急激な状態変化がある患者さんは、がんの終末期を除けば稀です。
 私自身、訪問看護を初めて半年であり、納得いく訪問看護が提供できているとは感じておらず、試行錯誤の日々を送っています。ただ、この経験が大切であり、成功を導くためのプロセスにおいては必要なことだと考えており、日々成長できている自分を強く実感しています。

今後の訪問看護の需要とmusubiの取り組みについて
 
我が国における医療の現状は、2025年問題が喫緊の課題と言えます。いわゆる団塊世代が前期高齢者となる2025年には高齢化率は30%を超え、75歳以上の後期高齢者だけでも13%を超えることが予測されています※1。そんな中、医療や介護の需要はさらに増えると予測されています。内閣府による高齢者の意識調査では、治る見込みがない病気にかかった場合、60歳以上の人の約半数(51.0%)が「自宅」で最期を迎えたいと希望していることが分かります※2。さらには働き手となる世代の人口減少もあり、国は医療を提供する現場を、「病院から在宅へ」という方向へ舵をきりました。このような背景もあり、今後訪問看護の需要は増すばかりだと考えます。
 現在は訪問看護ステーションmusubi大正の管理者として管理業務を行いながら、がんや精神疾患を含む様々な慢性疾患の患者さんに関わっています。その中で、自分だけではなく、スタッフ教育を通し、個々のスタッフの個性を活かしながらも一定水準でケアできるよう質の均一化を図り、多くのスタッフから患者さんへより良いケアを提供できるよう橋渡しの役割を担っています。また、今後は地域の訪問看護師だけでなく大阪市全体も含めた看護師教育に携わっていければと考えております。私の専門分野はがん看護なので、安心して在宅で看取りができる環境を整え、患者さん、家族を支え、最後の瞬間まで頑張って人生を全うできるよう後押しができたらと考えています。
 今後は医師不足で困っているがん患者さんの力に少しでもなれるよう、看護のこころ「ケア」と医学的知識に基づく特定行為を含む治療「キュア」の2つの総合力でこれからの医療を担っていきたいと考えています。

※1 厚生労働省 在宅医療政策の方向性
※2 内閣府 令和元年版高齢社会白書(全体版)4高齢期の生活に関する意識

訪問看護を挑戦したいと思っている方にメッセージ

 2022年の春から訪問看護師として働きだし、早半年が経過しようとしています。それまでは病院の急性期で在宅医療とは真逆の環境に身を置き、患者さんを救うこと、病気を治す手助けをすることに力を注いできました。当初は病院から在宅へシフトし、慣れない環境で働くことにジレンマを抱える日々が続きました。ただ、患者さんと向き合うことにおいては、病院であろうが在宅であろうが変わりはありません。私においては急性期で培った知識や技術を患者さんに還元することを念頭に置き関わっています。
 何を隠そう私自身が訪問看護の初心者です。急性期しか知らない看護師の方も多くおられると思いますが、先ずは訪問看護に興味を持ったら挑戦してみることをお勧めします。病院では得られない在宅ならではの経験が待っていると思います。一緒に新しい訪問看護を創っていきませんか。

診療看護師(NP)とはどんな人?

 一般社団法人日本NP教育大学院協議会が認めるNP教育課程を修了し、NP資格認定試験に合格したもので、保健師助産師看護師法が定める特定行為を実施することができる看護師です。診療看護師(NP)の役割は、保健師助産師看護師法に定められた看護師の業務(療養上の世話、診療の補助行為)を自律的に遂行し、患者の「症状マネジメント」を効果的、効率的、タイムリーに実施することです。看護師は、診療の補助行為については、「医師の指示」(特定行為については「手順書※1」)に基づいて行うこととされています。

※1 手順書とは
医師が看護師に診療の補助を行わせるために、その指示として作成する文書であって、「看護師に診療の補助を行わせる患者の病状の範囲」、「診療の補助の内容」等が定められているものです。
 
特定行為とは・・・
診療の補助であり、厚生労働省により要件を定められた研修を修了した看護師が、手順書に基づいて包括的に実施することができる21区分38行為のことです。特定行為の実施には実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が必要とされます。

専門看護師(CNS)ってどんな看護師?

 専門看護師(CNS)とは、日本看護協会が認定する資格で、看護師として5年以上の実践経験を持ち、看護系の大学院で修士課程を修了して必要な単位を取得した後に、専門看護師認定審査に合格することで取得できる資格です。CNSは、複雑で解決困難な看護問題を持つ個人、家族及び集団に対して水準の高い看護ケアを効率よく提供するための特定の専門看護分野の知識・技術を深めた者をいいます。CNSの役割は、実践、相談、調整、倫理調整、教育、研究の6つあり、これらの役割を果たしながら、保健医療福祉の発展に貢献し併せて看護学の向上を図る看護師です。

診療看護師(NP)と専門看護師(CNS)の違いは?

 上述した様に、NP 、CNSのそれぞれの特色を一言で言えば、CNSは専門看護分野を持った看護のスペシャリストであるのに対し,NPは看護を熟知した後期研修医レベルの疾病管理ができるジェネラリストナースと言えます。CNSの対象は、患者・家族、看護師や医療者、そして、システムや組織です。目的は患者のQOLを念頭に置いたアウトカムと看護の質の改善及び向上になります。一方、NPの対象は、患者個人です。主な目的は、医師とともに患者の診療に当たり疾病管理を行いながら医療のニーズに答えることです。この様に、 NPもCNSも役割の異なる高度実践看護師であると言えます。

訪問看護ステーションmusubi  ミッション

ものがたりを大切に。
その「人」らしく生きる を看る。

 ご利用者様のものがたりを尊重し、医療専門職として、時にひとりの人間として、最期まで共に伴走します。医療は時として侵襲的になり過ぎるあまり、本来のその人らしさのある生活を損なってしまうことがあると感じます。単に処置(Cure)だけのアプローチだけではなく、その方のお人柄や人生(ものがたり)、そしてそれを支えるご家族も含めた全人的なアプローチを私たちは大切にしています。

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