フランス音楽への誘い vol.1 パリの憂鬱
フランス音楽は、コロコロと急激に変わるパリの天気に似ています。
留学前は、フランス人の気質だとか、フランス語の特徴だと言われても、どうも腑に落ち切らないところがありました。あまりにも馴染みのない例えだったからです。
実際に住んでみないとわからない、とも言われました。
留学当初は必死に感じ取ろうと、空気を吸いまくったりして「なるほど」と思い込もうともしましたが、思いこめるはずもなく。。
それが、諦めかけてきたころ、この天気がフランス音楽そのものだ、と気付きました。
パリは晴れていたと思うと、突然滝のような雨が降ったりします。
いつも傘を持っていないと心配なくらい、いきなり降るのです。
それも、家の配水管が噴水になるくらい激しくて、油断できません。
そして秋から冬にかけての半年間は、空が重く感じるように暗いです。
朝早くは靄がかかっていることが多いです。
日本から戻るたびに、感傷的な心を増長させるような空の色をしています。不思議と、それがとてつもなく優しく感じる時もありました。
だからあれだけ詩的な音楽がうまれ、アンニュイな詩の数々が生まれたのだと、今はとても納得できます。
フランスと言えば、ドビュッシーやラヴェル、詩人ならボードレールやヴェルレーヌ、画家ならモネやユトリロ、とか、もっともっと数多と素晴らしい芸術家がいます。ワクワクが止まらないくらいいます。
その中で、これは完全にフランスだな~と私が思う作曲家は、プーランクです。
私がレパートリーとしてよく弾いているジャン・フランセもそう思いますが、フランセについては追々触れます。
プーランクの管楽器のソナタは、とくにフランスらしさに溢れています。
フルート、クラリネット、オーボエソナタが結構似ているのですが…
フランスの誇るフルート奏者、エマニュエル・パユの演奏を載せます。
パユは厳しいほどのプロ意識でも有名ですが、この艶やかな音色、果てしなく自由自在な卓越した演奏は、本当に素晴らしいです。
コロコロと変化する、風も色彩も感じさせる音楽。
どこか飄々として小気味良く、シャープでクレバー。
からかっているのか壊れやすいのか、掴みどころのない魅力。
そして大げさではない洒落た気品。
「柔らかい」わけではなく、鋭さやどす黒さ(😇)も併せ持っているフランス音楽の魅力を伝えていける記事を、これから少しずつ、書いていけたら良いなと思います。
それでは今回の締めくくりは、この ‟フランス” な詩を📖
開け放たれている窓を外から見る人は
閉ざされた窓を見る人ほど多くのものを決して見てはいない
ろうそくに照らされた窓ほどに
奥深く、神秘的で、豊かで、陰鬱な
そしてまばゆいものはない
陽光のもとのできごとは
窓ガラスの内側で起こることほどには興味をそそりはしない
この暗い、あるいは明るい空洞のなかで
生命が生き、生命が夢を見て、生命が苦悩するのである
*** ボードレール《パリの憂鬱》より〈窓〉の一節 ***
クラシック音楽を届け、伝え続けていくことが夢です。これまで頂いたものは人道支援寄付金(ADRA、UNICEF、日本赤十字社)に充てさせて頂きました。今後とも宜しくお願いします。 深貝理紗子 https://risakofukagai-official.jimdofree.com/