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レビュー Liam Gallagher "C'mon You Know"

 今回は、Liam Gallagher(リアム・ギャラガー)のソロ3作目、"C'mon You Know"のレビューを書いていきたいと思います。

【収録曲】
1. More Power
2. Diamond In The Dark
3. Don't Go Halfway
4. C'mon You Know
5. Too Good For Giving Up
6. It Was Not Meant To Be
7. Everything's Electric
8. World's In Need
9. Moscow Rules
10. I'm Free
11. Better Days
12. Oh Sweet Children
13. The Joker
14. Wave

■"不変の美学"を貫き通す、ロックンロールスターとしての生き様


 2009年のOasis事実上の解散後、ノエル脱退後の残ったメンバーでBeady Eyeを結成し2枚のアルバムを発表するも、オアシス時代ほどの評価、セールス的成功を収めることができず、2014年にあっけなく解散。

 その後3年間は表舞台から姿を消すなど、完全に"過去の人"扱いになりつつあったかつてのロックンロールスターだが、3年のブランクを経て、2017年に初のソロアルバム"As You Were"を発表しセールス的成功を掴むと、そこからぐんぐんと評価を上げ、今や元Oasisという肩書きを抜きにして世界が注目するソロシンガーまでに復権を果たした。

 リアム・ギャラガーが華麗なる復活を遂げることが出来た最大の要因の一つは、良い意味で変わらないスタイルだろう。

 それは、頑なに自らの音楽性を変えようとしないということではなく、自身の強み(= 唯一無二の歌声)を認識した上で、それを最大限に活かした楽曲作り(= シンプルでストレートなロックサウンド)に徹したということだ。

 それは一見、何でもないことのように思える事かもしれないが、ノエルとの喧嘩別れという形で終わってしまったOasisという巨大なバンドでの過去の栄光を、捨てることなく、中途半端に頼るでもなく、これほどまでに堂々と胸を張って「Oasisの続き」のような音楽を展開できるのは、彼にしか出来ない素晴らしい選択だと私は思う。

 リアム・ギャラガーは、自分自身を冷静に客観的に捉え、自分自身の魅力を的確にプロデュースし、2022年現在の彼が発揮しうる最高のパフォーマンスを披露しているのだ。

 本作では、Oasisのディスコグラフィーと並べても遜色の無い、シンプルでストレートなロックンロールサウンドが鳴らされている。そこに程よくサイケデリックな要素が合わさることで、モダンな感性の獲得にも成功している。このシンプルなサウンドこそ、彼の唯一無二の歌声を活かすための最大のプロデュースだ。

■唯一無二の歌声を最大限活かした全14曲


#1 More Power
ゴスペルやソウルからの影響を感じさせるようなコーラスと、アコースティックギターで穏やかに幕を開ける。リアムの歌声にも穏やかな響きがある。終盤にかけて、エレキギターとドラムとストリングスが静かに着実に盛り上げていく。


#2 Diamond In The Dark
バンドサウンドを前面に出しつつも、音数としては非常にミニマルでソリッド。各パートごとの音の分離もよく、リアムの唯一無二の歌声を最大限活かしたサウンドメイクに仕上がっている。ややシリアスな雰囲気も格好良い。



#3 Don't Go Halfway
サイケデリックな要素を多分に含んだギターロックサウンド。メロディ、サウンド、まとわりつくような歌い方、いずれもOasis時代を彷彿とさせるものがある。


#4 C'mon You Know
シンプルでストレートながら普遍的な良さを持ったメロディ、ストリングスを効果的に使用したサウンド、細かくビートを刻みながらじわじわと熱量を上げていきサビで一気に解放する楽曲展開など、"シンプルにカッコいい"のお手本とも言えそうな表題曲。



#5 Too Good For Giving Up
ピアノを中心に据えたロックバラード。こういうシンプルなメロディでこそ、リアムの歌声の特別感はより一層際立つ。何一つ変わったことをしていなくとも、十分すぎるほどの聴きごたえがある。


#6 It Was Not Meant To Be
霧がかかったようなぼやけたサウンドながらもドラミングは軽快で、サウンドはポップ。


#7 Everything's Electric
優しいサウンドメイクの多かった前半の楽曲群の中で、一際エッジの効いたバンドサウンドが印象的なロックナンバー。#3と並んで、Oasis時代を思わず想起させられる楽曲だ。



#8 World's In Need
アコースティックギターを中心とした、生の質感が強い一曲。自然の原風景を連想するような、野生味あふれるサウンド。


#9 Moscow Rules
ダークでシリアスで、ミステリアス。そしてサイケデリック。そんな不穏な空気の中に、思わずハッとさせられるようなグッドメロディをさり気なく忍ばせてくるあたりが憎いところ。


#10 I'm Free
攻撃的なメロディと歌唱に、エッジの効いたバンドサウンド。それらと並ぶようにして、ポップでキャッチーな音色が違和感なく同居している。この相反する2つの要素が自然に融合している様相が何とも言えず心地良い。


#11 Better Days
リアムによる、スケール感のある伸びやかな歌唱を主役として据えた一曲。その歌唱と、キャッチーなメロディを最大限活かすことに徹しつつも、単体でも十分な存在感を持ったドラミングも印象的。


#12 Oh Sweet Children
リアムの声色に優しい響きが伴う。キャッチーな歌唱に反して、サウンドはサイケデリックな要素が強い。


#13 The Joker
リアムの歌声を堪能するにはうってつけな、シンプルかつキャッチーなメロディが非常に格好良い一曲。ジャカジャカ掻き鳴らすような、リズム重視なギターワークも印象的。


#14 Wave
サイケデリックで不気味な雰囲気を纏いつつ、重厚なギターフレーズとエッジの効いたメロディが格好いいロックナンバー。



Oasisは好きだけど、解散後の活動までは追っていないという方、必聴です。

それ以外の方でも、幅広い層に受け入れられるであろう普遍的なロックン・ロール・アルバムに仕上がっていますので是非聴いてみてください。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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