見出し画像

美しき00'sEMOバンド、Copeland特集

 今回は、00年代のUSエモを代表するバンド、Copeland(コープランド)の音楽をまだ知らないという方へ、入門となるような記事を書いていきたいと思います。今年9月には既発曲のセルフカバーアルバム『Revolving Doors』をリリースしており、そちらについても触れていきたいと思います。


1.Copelandの魅力とは

 ①Vo. アーロン・マーシュの美しき歌声
  アーロン・マーシュは私にとって唯一無二の歌声の持ち主です。とにかく繊細で美しく、それが時に激しいバンドサウンドと融合することで、その美しさは頂点を極めます。私が個人的に特に敬愛しているボーカリストが、アーロン・マーシュと、Keaneのトム・チャップリンの2人。トムが力強く高らかに歌い上げる美しさならば、アーロンは今にも壊れそうな繊細な美しさ。この歌声だけでも、Copelandの音楽を聴く価値は十分にあります。

 ②美しきメロディとそれを活かすサウンド
  Copelandの音楽の主役は歌でありメロディ。その主役を最大限活かすためのサウンドプロダクションが施されており、味付けは必要最低限。それは初期のEMO路線でもそうですし、アートロック路線になってからもそう。常に美しいメロディを軸に据えた楽曲作りが徹底されています。

2.プロフィール

 活動期間:'01〜'10年、'14年〜現在
 活動拠点:アメリカ🇺🇸フロリダ州
 ジャンル:EMO、インディーロック

(左から) James(B), Jonathan(Dr), Aaron(Vo/G), Bryan(G)

■現メンバー
 Aaron Marsh (Vo, G, Piano) '01〜現在
 Bryan Laurenson (G) '01〜現在
 Stephen Laurenson (G) '14〜現在

■旧メンバー
 James Likeness (B) '01〜'07
 Jonathan Bucklew (Dr) '05〜'10, '14

■ディスコグラフィー
 2003年 1stアルバム
『Beneath Medicine Tree』
 2004年 カバーミニアルバム
『Know Nothing Stays The Same』
 2005年 2ndアルバム
『In Motion』
 2006年 3rdアルバム
『Eat, Sleep, Repeat』
 2007年 レアトラック集
『Dressed Up & In Line』
 2008年 4thアルバム
『You Are My Sunshine』
 2010年
 解散
 2014年
 再結成
 2014年 5thアルバム
『Ixora』
 2019年 6thアルバム
『Blushing』
 2022年 セルフカバーアルバム
『Revolving Doors』

3.勝手に全アルバム格付け

どのアルバムから聴き進めるかの参考として是非。
 ※あくまで私個人の独断と偏見です。
 ※絶対評価だと全アルバムが"S"か"A"になってしまうため、あくまで相対評価にしています。



 まず、最高評価の""ランクは2ndアルバムの『In Motion』。これだけは絶対に譲れません。

 Copelandというバンドの魅力が全て詰まった、密度の高い大傑作アルバムです。全10曲がそれぞれ強力な個性を放っています。まず、#1 No One Really Wins、#6 Don't Slow Down、#7 Love Is A Fast Song、#8 You Have My Attentionの4曲。この4曲は特にアーロンの歌唱がエモーショナルで、バンドサウンドも激しい。それが持ち前の美しい歌声とメロディに絶妙に融合し、素晴らしい化学反応を起こしています。そして次に、#4 Sleep、#5 Kite、#9 You Love To Sing、#10 Hold Nothing Backの4曲。この4曲はとにかくメロディの美しさを際立たせることに徹した職人的な楽曲。#2 Choose The One Who Loves You More、#3 Pin Your Wingsの2曲は、両方の良さを備えた普遍的なグッドソング。是非多くの方に聴いて頂きたい、00's EMOの金字塔的名盤。

お気に入りトラック:No One Really Wins



""評価は2枚。まず1枚目は、記念すべきデビュー作の『Beneath Medicine Tree』。

 本作の制作当時、Vo.アーロンの祖母の死や、恋人が病気で入院するという出来事が重なり、そうした背景がアートワークから歌詞にまで反映され、慈しみの精神に満ち溢れた優しい世界観が滲んだ歌詞となっています。そして何よりメロディが良い。彼らのキャリアの中で最もキャッチーで瑞々しいソングライティングが最大の魅力。サウンド面では、彼らのルーツであるEMOの要素が最もよく表れた作品となっており、ジミーイートワールドの"Clarity"を彷彿とさせるような繊細なギターアンサンブルを楽しむことができます。本来、"S"評価でもおかしくない作品だとは思いますが、個人的にはどうしても2ndを"別格扱い"したかったので、この位置にしました。

お気に入りトラック:Priceless



 もう一枚の""評価は、4th『You Are My Sunshine』。

 前作で既に消えかかっていた初期のEMO要素が完全に断ち切られ、アートロック路線へと舵を切った本作ですが、ソングライティングの秀逸さではキャリア随一と言ってもいいかもしれません。1stや2ndほどのキャッチーさはありませんが、再結成後の5thや6thよりはとっつきやすい内容になっています。じっくりと丁寧に磨き上げられたメロディ、"歌"が主役のアルバム。引き合いに出すとしたらRadioheadやColdplay、Keane、Travis辺りになるのかな。EMO要素は全く無いです。本作をリリース後に一旦解散し、その後再結成することになりますが、再結成後の音楽性は本作がベースになっていると感じます。

お気に入りトラック:Chin Up



 続く""評価は、再結成後としては初のリリースとなった5thアルバム『Ixora』。

 前作の4thで打ち出したアートロック路線を更に推し進めた内容で、ストリングスを積極的に取り入れるなど、より静謐で繊細なサウンドプロダクションとなっています。分かりやすいフックこそ無いですが、それでも十分に聴かせられるだけのメロディラインには仕上がっています。生のバンドサウンドの質感はやや減退してはいるものの、所々ロックバンドとしてのアイデンティティが垣間見えるような場面もあり、その辺のバランス感も悪くないと思います。全10曲とも質が高くまとまりも良いので、"A"評価を付けたい気持ちもありましたが、上位3作が僅差で上回ったため、相対的にこの位置になりました。

お気に入りトラック:Ordinary



 続いて""評価となったのは、オリジナルアルバムとしては目下のところの最新作、6th『Blushing』です。

 サウンドプロダクションの面では、基本的には前作でのアートロック路線がそのまま引き継がれていると思いますが、よりダークでメランコリックになっており、幻想的な雰囲気にはアンビエント要素も感じさせます。打ち込みの多用も含め、サウンドアプローチの多彩さという意味では前作を更新していますが、ソングライティングの面で言うと、決して散漫な出来ではないものの、普遍的なグッドメロディと言えるような楽曲が少ないのが残念なところ。""評価と""評価は逆にすることも考えましたが、作品コンセプトが一貫しており構成に無駄がない点と、サウンドプロダクションの美しさを評価し、本作を上のランクとしました。

お気に入りトラック:Colorless



 最後の""評価となったのは、3rdアルバム『Eat, Sleep, Repeat』。

 1st/2ndから、あまりにも大きな音楽性の変化を見せた3rd。瑞々しいギターサウンドは消え、終始ダークでメランコリックな世界観が作品全体を支配しており、EMO要素はほとんど無くなっています。キャッチーじゃないのは一向に構わないのですが、ソングライティング面でも他の作品に劣ってしまっていると言わざるを得ないのが残念なところ。完成度が高いと言える楽曲は#3 Control Freak#7 By My Sideくらいで、他の楽曲は断片的に『おっ』と思わせる瞬間があっても、冗長的な展開や構成に走る傾向があり、今ひとつ散漫というか、キレを感じないというパターンが散見されます。瞬間瞬間では本来のセンスの良さを感じさせる場面も多いだけに、非常に勿体無い作品かと。

お気に入りトラック:By My Side



4.その他の作品紹介(B面集,カバー集)

カバーミニアルバム
『Know Nothing Stays Same』(2004年) 

 全5曲収録のカバーミニアルバム。フィル・コリンズやビリー・ジョエル、スティーヴィー・ワンダーといった80年代のポップスをCopeland流にアレンジ。ロック有り、ピアノ弾き語り有りの充実の内容。個人的には、ビリー・ジョエルの"She's Always A Woman"のカバーが素晴らしいと思ってます。

レアトラック集
『Dressed Up & In Line』(2007年)

 シングルB面曲や未発表曲、既発曲のアコースティックversionや、カバー曲など、貴重な楽曲たちを収録したレアトラック集。中でも、未発表曲の"May I Have This Dance"はファンなら必聴です。

セルフカバーアルバム
『Revolving Doors』(2022年)

 今年の9月にリリースされたセルフカバーアルバム。全編にわたり、オーケストラを主体に据えたアレンジが凝らされており、ミニマルながらも壮大なサウンドとなっています。このミニマルさでここまで聴かせられるのは、良いメロディと良い歌声があってこそ。また、過去6作すべてから選曲されており、ベストアルバム的な楽しみ方もできるのが魅力です。

 いかがだったでしょうか。興味を持って頂けた方は、ぜひ素晴らしいメロディと歌声を聴いてみてください。

 最後まで読んで頂きありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?