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ドラマストア ライブレポート ―これから先のドラマが見えた夜

 大阪発正統派ポップバンド、ドラマストアの3rdシングルリリースワンマンツアー「pop you, pop me Tour」が、2021年9月20日に東京でファイナルを迎えた。EX THEATER ROPPONGIで行われたライブは、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、客席数の制限、入場前には連絡先の登録や検温と消毒、マスク着用の上、声出し禁止。この1年半近くで、恒例の光景となってしまった様々な制約のもとで開催。それでも来場者はルールを守り、いま許されている範囲内で、この夜を楽しんだ。

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 開場時間になると、六本木通り沿いの会場に向かうファンの姿が見えてきた。男女共にベージュ系のクリーミーな色合いの服を着て、カジュアルだけど爽やか。バンドのイメージに良く合う雰囲気で、楽しそうにエントランスなどで記念撮影をしている。会場は1階席にも椅子が用意され、全員が静かに開始を待っていた。
 ステージに華やかなライトが照らし出され、4人が登場。スタートの曲は、「アポロ-2020-」ここからMCなしで、連続して4曲を披露。序盤にも関わらず、まるでライブの後半戦のような熱量とパワーが伝わってくる。曲の雰囲気に合わせて、ステージの照明が変化し、ドラマストアの創り出す物語に彩りを与え、効果的に場面転換をしてくれているようだった。
 5曲目「ガールズルール」を披露して、一旦MCに。会場が六本木だけに、鼠先輩の「六本木~GIROPPON」の良さを話すが、客席からの反応はあまりない…(笑)声出し禁止と言われている手前、あまり大きな声で何かを言えないので、笑顔で見守る。そんな感じだ。

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 MCを挟んでからの中盤も、新曲を含む11曲を披露。怒涛の勢いでライブは進む。「Dancing Dead」は、真っ赤な照明にスモークが柱のように噴出する派手でクールな演出。一方で、10月13日にデジタル配信リリースをする「花風」では、ステージがピンクに染まり、そこに細かい光がシャワーのように降り注ぐ美しい演出。

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 照明だけではなく、ギター・ボーカル長谷川海の歌い方、メンバーそれぞれのパフォーマンスや立ち居振る舞いが、曲の雰囲気ごとに変化し、とても魅力的だった。ロックやファンクの要素も感じるような「イミテーション・ミュージックショー」や「Work&Work」では、ベース髙橋悠真、ギター・キーボード鳥山昂、そして長谷川海がステージ上でコミュニケーションを取り合いながら、楽しく弾む。バラードやミドルテンポの聴かせる「回顧録を編む」や「東京無理心中」では、ドラム松本和也のコーラスが長谷川海のボーカルと響き合って、美しく切ない。どのシーンにおいても、曲を最大限で美しく見せるため、それぞれの役割を全うしている。

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 ライブ中盤のMCで、長谷川海は今回のツアーから、かなりチームで動いていることを感じていると話していた。ドラマストアというバンド自体もチームであるが、そのバンドを支えてくれるチームが出来ているということだ。
 彼らは、ライブ経験も豊富なうえ、自分たちの強みをバンド内で共有し、パフォーマンスや曲作りをしている。もちろん、今までのライブでも十分に魅力的だったが、今回は良い意味で、第三者の冷静な目が加わったように感じた。自らの美点を客観的に捉えた上で、それをステージで具現化する。照明やスモークなどの演出、音の広がり方や聴かせ方などの音響などからも、今まで以上の迫力や気迫を感じ、彼らの見せたいものが、より立体的になっているように感じた。

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 終盤は、立て続けに4曲披露。「冒険譚」「世界はまだ僕を知らない」「可愛い子にはトゲがある?」「アンサイクル」と間髪入れずに披露する様子は、物語の主人公が必殺技を繰り出していくような爽快感がある。MCを挟んでラストに、「knock you, knock me」を披露。コールアンドレスポンスは出来なくても、お客さんは手拍子に想いの全てを込めて反応する。怒涛の21曲を終え、本編は終了。

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 アンコールは新曲を含む3曲、最後に披露した「三月のマーチ」では、ステージ上に正方形に小さく切った銀テープが降ってきて、華やかにライブは終了。それでも、まだまだ聴きたい観客の気持ちを乗せた拍手が会場に響き渡り、ダブルアンコール。登場と共に、銀テープの中で演奏する難しさを少し愚痴るメンバーたちは、愚痴りながらも顔をほころばせ、最後の1曲「Messenger」を披露し、3rdシングルリリースワンマンツアー「pop you, pop me Tour」は、めでたく幕を閉じた。

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 この1年半は、どのアーティストも活動に葛藤があったはずだ。多くのフェスは中止に追い込まれ、ライブも満席の販売は出来ない。新しい方法として配信も始まったが、それが全てを解決しているとは到底言い難い。そんな状況でも、下を向かずに少しずつ進んでいるのが、音楽シーンの現況だ。
 MCで、長谷川海は、この1年半以上の期間で支えになったものは、ファンのみんなと、自身の過去の曲たちだったと話していた。過去にも自分は良い曲を作っていたと、改めて思ったそうだ。ドラマストアのコンセプトは、“君を主人公にする音楽”だ。楽曲の登場人物の中から、ファンは特に自分自身を重ねる曲を見つけ、自身のアンセムにして日々を乗り越えていると思う。支えになったというのはファンも同じだろう。

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 EX THEATER ROPPONGIは、スタンディングにすると約2000人が入る。この会場を満員にして、お客さんの歌声も響くような状況になることを願って止まない。MCで鳥山昂は会場の光景を見て、走馬灯に映る光景だ、と言っていたが、満員になったこの会場の様子、そしてもっと大きな会場のものも入るはずだ。(走馬灯なんて、まだまだ早い年齢だが…笑)
 3rdシングルリリースワンマンツアー「pop you, pop me Tour」は、ドラマストアの現時点の集大成を思い切り見せつけてくれたライブだった。

写真:すべて 小杉歩
石井由紀子/ミュージックソムリエ

ドラマストアからのお知らせ
ノエビア ブランドWEB CM 「2021 年春篇」タイアップ
2nd Digital Single「花風」
2021年10月13日(水)配信リリース

7周年記念無料配信ライブ
2021年12月3日(金) 21:00〜

各種サブスクリプションにて、ライブのセットリスト公開中

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過去のインタビュー記事は、こちらからご覧いただけます。
ドラマストア・長谷川海 独占インタビュー(前編)
https://www.musicsommelier.jp/posts/10791077

ドラマストア・長谷川海 独占インタビュー(後編)
https://www.musicsommelier.jp/posts/10791560

進化し続ける「関西発正統派ポップバンド」ドラマストア 長谷川海が見つめる2021年とその先の物語 ≪前半≫
https://www.musicsommelier.jp/posts/16850140

進化し続ける「関西発正統派ポップバンド」ドラマストア 長谷川海が見つめる2021年とその先の物語 ≪後半≫
https://www.musicsommelier.jp/posts/16860869


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