名曲749 「風見鳥」【TULIP】

ーー高校時代の思い出の曲ーー

【TULIP 風見鳥】

TULIP 風見鳥 - YouTube

 今回は思い出話。高校1年か2年のときである。

 私は体育の長距離走が中学生のころから苦手で大嫌いだった。まあクラスのほとんどがそうだったような気もするが、私の高校は運動に自信がある人もまあまあいたので、体力に自信がない自分はやる前から成績下位に沈むことが予想されたのだった。そしてついに「来週から長距離走を始める」と体育教師からクラスに宣告され、皆悲しみの淵に追い込まれたのだった。中でも特に私の顔が青かったのは気のせいではない。

 いまもだけれど、私は真面目だった。体育なんてかったるいというクラス全体の雰囲気があった中(高校だと受験も厳しくなるので一層その傾向が強い)でどうにか平均くらいの成績は取っておかないと、内申点に響くだろうと思った私は、自主トレをすることにしたのである。

 学校付近だと恥ずかしかったので、自宅付近で走ることにした。当時は仲の良い男友達が近所に住んでいたので、毎日のように呼び出しては付き合わせようとした。最初は一緒になっていたが、そのうち独りで走ることが多くなった。

 だが、独りではなかった。音楽という友達がいたのだ。そこで私が走行中にウォークマンで聴いていたのがこの「風見鳥」だったのである。なぜかというと、ちょうど3分くらいの曲を探して、真っ先に目についたのがそれだったからだ。

 どうせならもっとノリがいい曲を聴けばといまになって思うが、当時は気にならなかった。むしろ正解だった。「屋根の♪」という出だしの姫野達也の歌声が心地よく、全力疾走には不向きだったが、持久力をつけるにはうってつけだった。この曲を何回もリピートし、「いま9分か」といった感じでペースメーカーの役割を果たしてくれたのだった。

 そうして私はすっかり持久力が身に着き、当初は下の下だろうと思っていたところ、想像以上に周りがかったるい感じでダラダラ走っていたこともあって、上の下くらいまでに走れたのである。恐らく、体力教師も私が体力ないだろうということは体力測定でわかっていたと思うのだが、この結果を見て褒めてくれた。成績もその学期は体育が妙によかった。

 だが、長距離走が授業の項目から外れると、急にぱったりと走ることをやめた。そしてこの曲も聴かなくなった。出だしの「屋根の♪」を聴くと走っている風景が目に浮かび、息苦しさすら覚えたからである。いつしか忘れ去って、風見鶏のごとく儚いものだった。

 たまにはこういう感じの記事も。ウォークマンでなくランニングマン? で聴いていたころの良き思い出である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?