名曲752 「探偵物語」【薬師丸ひろ子】

ーー透明感と不協和音?の融合ーー

【薬師丸ひろ子「探偵物語」 2ndシングル, 1983年5月 [HD 1080p]】

薬師丸ひろ子「探偵物語」 2ndシングル, 1983年5月 [HD 1080p] - YouTube

 12月になっていた。いよいよ冬支度、年末の準備ということで慌ただしくなってきたと、周りを見て思う。せわしない姿の人を見ていると、どこかぼーっと遠くに消えてしまいたくなるのは私がどうしようもない人間なのだからか。忙しい日々を抜けて遠くにいきたい。

 そんなとき、この曲が思い浮かぶときがある。薬師丸ひろ子の「探偵物語」は1983年にヒットした曲だ。作詞は松本隆、作曲は大滝詠一。

 松本隆が作詞と知るや否や内容を見ずに「これは名歌詞だ」と言いたくなってしまうが、ちょっと置いておく。この曲は個人的に薬師丸ひろ子の透明感のある歌声と、大滝詠一の独特のメロディーが融合した傑作に思うのだ。

 正直、このメロディーは明るいものではない。むしろどこか不安をもたらす妙な音質である。ピアノに詳しい方ならきっと説明がつくのだろうが、素人の私にはなんとなくのイメージでしかわからない。それでも不協和音だと主張したい。

 それが薬師丸ひろ子の歌声と組み合わさるだけで、とんでもない芸術作品が生まれたような気がするのだ。心の闇というか情景の暗さが引き立ち、歌詞の奥にある深さまでもが浮かび上がるのである。

 ただ暗い歌では私の名曲リストには入らないけれど、森田童子の「ぼくたちの失敗」のように聞けば聞くほどひと味ふた味違うようなものなら文句なしだ。そういえばそちらも透明感のある声であった。そして不安を駆り立てるものであった。

 こういう曲は現代だと少ない気がする。売れ線を意識したのもあるかもしれないが、ちょっと寂しい。現代でも通用するこの曲を、いま一度リバイバルしてみてはいかがだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?