1.フリーター彼氏との結婚を両親に反対されています(ショート小説)

私は激しく悩んでいる。彼氏のA君との結婚を両親に反対されているのだ。

反対されている理由は明白で、A君がフリーターということである。

両親は私を中高大と名門の女子校に通わせてくれ、そのおかげもあって卒業後は大手のXY株式会社に就職することができた。
両親には本当に感謝しているし、平日は朝ご飯と夜ご飯を食べながらあれこれ雑談するほど仲が良い。
ただ、大切に育ててきた娘が収入の安定していないフリーターと結婚するのは許せないらしい。
でも私は29歳という年齢的な焦りもあり、今年中に結婚したいという想いが強く、ここで結婚を諦めるわけにはいかないのだ。
学生時代は勉強に部活動、社会人になってからは仕事に資格取得と一生懸命取り組んできたため恋愛する時間がなく、やっとのことでできた彼氏なので尚更失いたくはない。
A君は私を色々なデートスポットに連れて行ってくれるし、メールの連絡もマメだし、とにかく私のことを第一に想ってくれるので「結婚するならこの人しかいない」と思っている。

「父と母は私にとってかけがえのない大切な存在だから、両親に心から祝福されて結婚したい」
「A君のことは世界一大好きだしこれからも一緒に暮らしていきたいし」
「でも、A君との結婚は両親に絶対ダメと反対されているから、、、どうしようかしら」

悩み続けていた私は、ふとある占い師のことを思い出した。
「確か、1年前。その占い師にどうしたら恋人ができるかと相談して、アドバイス通りにしたらすぐA君に出会えたんだっけ。またあの占い師の所へ行ってようかな」

次の土曜日の夜、私は例の占い師のもとを訪ねた。

商店街の裏通りにある建物の階段をのぼり、2階の扉を開けた。
「こんばんは~」
部屋の奥には小さな机と椅子があり、見覚えのある占い師の老婆が座っていた。
「ああ、あんたかい。まぁ、座りな」
老婆は私のことを覚えているようだった。
「話してみな」
落ち着いた口調で老婆は言った。
「あの、実は以前占っていただいた時の彼と付き合うことになりまして…」

私は彼と結婚したいこと、そのことを両親が快く思っていないことを事細かに話した。
老婆はたまにうなずきながら、黙って私の話を聞いてくれた。
「私は、、私は両親から祝福されてA君と結婚したいんです。それだけなんです…」

「そうかい、じゃああんたが結婚できるかどうか占えばいいんだね?」

「A君との結婚です!それとその結婚を両親が喜んでくれているかどうかも。」

「ふぁっはっはっ。難しい注文をする娘さんだね。」
「悪いけどそんなに細かいことを占うことはできないよ」

「そ、そんな」
「じゃあせめて将来A君と私はどうなるのかだけでも占ってもらえませんか?」

老婆はゆっくりとうなずいた。そしてこう続けた。
「占いは覚悟が必要さ。一度占った運命はもう2度と変えることができないよ。それでもいいのかい?」

両親のこと、A君との結婚のことに悩み続けていた私は、早くこのストレスから解放されたい思いもあってすぐに返事をした。
「お願いします。」

~~5年後~~

一面にコスモスが咲く公園、向かいの広場にはたくさんの子たちが遊んでいた。
追いかけっこをしている子、レジャーシートを敷いておままごとをしている子、ボール遊びを楽しんでいる子もいた。

そんな様子を眺めながら私は両親に言った。

「今までなかなかいい相手が見つからなかったけど、お父さんとお母さんがけんちゃんのことを気に入ってくれてよかった」
「新しい家族になるわけだし、お父さんとお母さんにも喜んでもらえて嬉しい」
「これから……、あっ!」

私は話している途中でコスモス畑の方から走ってくるけんちゃんの姿を見つけた。
「けんちゃーん!」
「けんちゃん!こっちこっち!!」

私はけんちゃんの方に向かって手を振った。

”けんちゃん”はその女性の呼びかけに気づいたようだった。

そして嬉しそうに尻尾を振りながら女性のもとへ向かって行きこう言った。

「ワンワンッ!」

今後の創作活動に活かしたいと思います!