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なおみちの活躍にワクワクできますように、と今年も思う 【6/3練習試合 中日戦●】

わたしはいつも、大切なことを書きそびれる。

村上春樹は「優れたパーカッショニストは、一番大事な音を叩かない」と言う。これはまったくもってその通りで、ほんとうに大事なことというのは言葉にはできないものだ。「ヤクルトは今年も弱い」なんてそのまま書いたって仕方がない。そうですよね。その通りだ。(いやそうじゃない)

・・・・・・・けれど、だからといって昨日の観戦記には、いたってシンプルで大切なことが書かれていない。つまり、開幕が延びに延び、ようやく、ようやく再開した練習試合なのだというその事実である。それくらい書いたっていい。非常時を示す大事な事実である。

まあ、でも、つまりそれを書き忘れるくらいに、試合が始まるとそこにある「当たり前」に気持ちが馴染んだのだ。もちろん「当たり前」じゃない景色もそこにはあるわけだけれども(そしていうまでもなく、「当たり前」はたくさんの人の努力と決断があってこそ叶うものなのだと身にしみたわけだけれど)、でもとにかく、野球があることというのは、やっぱり日常に溶け込むのだ。春になると野球が始まる、その繰り返しの中にある、「日常性」みたいなものが、心地よくさせる。そういうものがあるというのはなんだか、しあわせなものだよな、と思う。

そしてヤクルトは、えらく若い打線で、そこに立つ。これからそれが「当たり前」になっていくのだ、と言わんばかりに。

解説の井端さんは、「僕はヤクルトは西浦がキーマンになってくると思っています」と言った。「去年は故障もありましたけど、(僕がコーチをしていた)一昨年は結構、嫌な場面で打たれた記憶があるんです。相手にするには嫌なバッターでしたよ」と。

一昨年の、「気づけば二位」というあの快挙には、間違いなくなおみちの活躍があったと私も思う。1番を打っていた春先に(ちょうど今頃の季節だったような気がする)、やたらと打ちまくって、2番のエイオキにつなげていた。守備だって、「おおおい!!」というのが、少しずつ減っていって、なんだかショートの風格みたいなものをつけ始めた。

その年のキャンプでは、「キャンプキャプテン」(だったかなにか)に任命されて、どろんこになって歯を食いしばりながら遅くまで練習していた。日に日にその表情はたくましくなっていったように見えた。来年は、なおみちの年になるかもしれないな、と、思った。思わずにはいられなかった。

だけど、なぜなんだろう、どうしていつも、思ったように物事はうまくはいかないのだろう。

なおみちは、夏、コンディション不良から復帰したばかりの試合で、守備中に走者と交錯し再び離脱を余儀なくされた。なおみちが戻ってくると、なんか打線に厚みが出るよね!と、話していたばかりだった。本人の悔しさは計り知れない。想像するのも辛かった。そしてシーズンはそのまま、静かに(なんというか、静かに)終わっていった。

なおみちに期待をかけた(きっとかけていたと思う)みやさまはチームを去った。守備の名手であるところの、新しい外国人選手がやってきた。あっという間に、ほんとうにあっという間に、あらゆるものは形を変えてしまう。確かなものなんて何ひとつないんだよな、とその度に私は思う。

でも、確かなものなんて何ひとつないのだとしても、それでもそこに戻るために、みんなまた戦うのだ。悔しさや、不安が、どれほど襲ってきたとしても、それでも。

今日スタメンで出場したなおみちは、しょっぱなからヒットを放った。そのまま、次の打席は元気にホームランを放った。おみちのホームランは、やっぱりなんというかいつも、心を愉快にしてくれる。てっぱちのそれや、エイオキのそれや、村上くんのそれとはまた違った味わいがある。そう、味わいだ。味わいがある。そもそもなおみちには味わいがある。どんな味わいだと言われても困るのだけど、それはやっぱり味わいだ。

結局なおみちは、4-4で試合を終えた。負けたけど(そう負けたけど)、こういう誰かの活躍は、いつだってわくわくさせてくれる。それが野球のいいところだ。そうだった、なおみちの活躍というのはいつも、負けた日だって、なんだかわくわくさせてくれるものなのだ。

今年がどんなシーズンになるのかは、またわからない。でもシーズン前はせめて、今年だって、やっぱり、「活躍できますように」と、思う。去年あれだけ悔しい思いをして、厳しい環境の中今年を迎えて、でもそんな中でなおみちが、這い上がっていけますよに、と。去年が何かの布石だったみたいに、びっくりするくらいの活躍を見せてくれますように、と。

そう、みんなに願っています。

開幕まであと15日。良いシーズンになりますように。


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