マガジンのカバー画像

【2019シーズン】ヤクルトスワローズ観戦記

163
ヤクルト観戦記、2019年シーズンはこちらにまとめて入れていきます。(オープン戦含む) 勝った日も、負けた日も、試合のある日は毎日更新しています。
運営しているクリエイター

2019年8月の記事一覧

AクラスでもBクラスでも、目の前の試合に向き合ってゆく【8/30中日戦●】

修行である。胆力が試されている。おそらくこの修行を終えた時、私たちは悟りの境地に達するのである。 つまりある日、1-3の時点でお風呂に入り、上がって速報を見た時1-7になっていたとしても、もはや驚きもしないという精神も手に入れる。「ふむ、なるほど」と、私は思う。「今日はそうきたか」と。 1点差や2点差のリードでは「このままで終わるわけがない」と悟っている。そう、数々の修羅場をくぐり抜けてきたのだ。多くの逆転と数え切れないサヨナラを目にしてきたのだ。それくらいのことは小学生

負け続けるヤクルトを見ながら、息子は成長してゆく【8/29横浜戦●】

「ビジター外野席」に座ったはずが、なぜか三方を横浜ファンに囲まれていた。私はチケットを見返した。私のことだ、間違ってチケットを買うとか余裕であり得る。 でもそれは何度見返しても、「ビジター外野席」だった。「ビジター外野席」とはなんなのか、そもそもビジターとは一体なんなのか。私はしばし考え込む。そこには何か哲学的な問題が含まれているのかもしれない。 朝から鎌倉のホテルのプールで1キロを泳ぎ切った。子どもたちはひたすらにプールの中で追いかけっこをしていた。すっかり初秋の気配を

世界は「自分にはどうにもできないこと」であふれているけれど【8/28横浜戦●】

自分でどうにもできないことに、心乱されるのはどうなのか、と、ずっと思っていた。基本的に、自分のことは自分で決めたい。同時に、他人のことを自分が変えるのは不可能だ。 だけど、自分になんとかできることなんて、実際はほんの少ししかない。どれだけ言っても息子は宿題をしないし(ここは鎌倉のホテルだけれども息子はもちろんまだ夏休みの宿題を終えていない)、むすめはいつでもどこでも踊ることをやめない。 そして勝ってほしいと五時間祈ったチームは、今日も勝たない。 気づけば今日も、「自分に

足早に過ぎ去る夏を思いながら【8/27横浜戦●】

夏休みも本当に締めくくり。というわけで、横浜(ならびに鎌倉)の旅、に出ることにした。 「山東」で水餃子を食べて久々に中華街をぷらぷら歩いていると、中華街はタピオカ街みたいになっていた。10歩歩くとタピオカ屋、四方八方から押し寄せるタピオカの波に、子どもたちは素直にのみこまれ、母さんはタピオカを買うはめになった。三人でマンゴータピオカを飲みながら歩いていると、高校生にでも戻ったような気になった。嘘ですなっていませんごめんなさい。 正真正銘、数年前まで高校生だったけいじくんは

今ある環境の中で、強さと弱さに向き合って【8/25阪神戦◯】

石山が抜けて、ハフが抜けて、五十嵐さんが抜けて、そしてこんちゃんが抜けた。(じゅりはどこ。)そしててっぱちが途中交代した。 満身創痍。私は今季何度も口にした言葉をまたつぶやく。でももう、ここまできたら、開き直ってやるしかないんだよな、と思う。できることを、その環境で。 もちろん、やりきれない思いは拭えない。阪神戦のたびに、私はぐっちのことをつい考えてしまう。誰かが抜けるという痛みはいつだって誰かを苦しめる。「いるのが当たり前」だったその場所は、いつしかすっかりと景色が変わ

「覚悟」とともに立つ、その背中に【8/24阪神戦●】

(写真は覚悟を持ってお祭りの射的に挑むむすめ。) 平井くんとあきおが六本木でご飯を食べてお会計をしようとしたら、思ったよりずっと高くて、二人で持っているお金を寄せ集めてなんとか払ったら、帰りのタクシー代もなくなってしまい、どこかの階段に座り込んで途方に暮れてしまった、というエピソードが、有料アプリの動画「座談会」で語られている。 私はその回がどうも好きで、何度も何度も見てしまう。2017年2月、まだルーキーイヤーを終えたばかりの若かりしこーたろーとじゅりが飛び入りゲストと

「やくるとがよわいんじゃなくてあいてがつよいんだよ」とむすめが言う【8/23阪神戦●】

エラーをして走者を出したおっくんは、真っ先にマウンド五十嵐さんのところへ向かった。五十嵐さんは、おっくんに大きく頷いたように見えた。 まだ若いおっくんがそこに立ち、五十嵐さんが投げる時、少なからず緊張だってすると思うのだ。大先輩が投げる時にミスをしてしまったら(もちろん誰が投げる時だって同じなのだけれど、それでも心情的に)気まずいだろうし、「やっちまった感」は大きいだろうと思う。 だけどもちろん(それはもちろんと言える)、おっくんはいつものように、一人でしっかりマウンドに

いつだってハクナマタタ、と歌いながら【8/22広島戦◯】

お盆明け、息子は初めて一人で新幹線に乗り、京都のじいじのおうちへ行った。 車掌さんは見送りながら泣きそうになっている私にも、一人でにこにこしている息子にもめちゃくちゃ親切だった。 「みんな優しい!」「西日本で配っているスタンプカードと東日本で配っているスタンプカードを特別にどっちもくれた」車内の息子からは、メールがたくさん送られてきた。心配したこちらの気も知らず、めちゃくちゃ楽しそうである。初めて一人で買ったマンゴーアイスは、「僕のスイーツランキング第5位」だったらしい。

現実は、思い描いたハッピーエンドばかりではないけれど【8/21広島戦●】

もしこれが3時間の映画だったら、と、思う。クライマックスは、たぶん先週の試合だ。カツオさんがノーノーまであと一歩という素晴らしいピッチングで、野手たちは打ちに打ちまくった。カツオさんのこれまでの苦悩と、そして努力と、チームの思いがぎゅっと詰まった試合だった。 その二日前、村上くんはサヨナラ2ランを放った。一日前の試合では、一点差の試合を勝ち切った。そしてカツオさんの試合があった。その三連戦は、それまでのミスも、エラーも、失点も、あの日の悔しさも、サヨナラも、大量失点も、全部

とんでもない男性につかまってしまった女性の話【8/20広島戦●】

想像してみてください。 あなたの目の前には一人の男性がいます。そこそこ、いけめんです。スポーツはめちゃくちゃできる。その男性はかわいい笑顔であなたに寄ってきます。「ビールが半額だよ」とか「花火が綺麗だよ」とか言いながらあなたを誘い出します。 早速彼は、とても優しい言葉をあなたにかけます。「今日は勝てるかもしれない。」そうです、出会ってすぐです。出会ったばかりです。それなのにあなたのために1点を捧げてくれます。夢へと続く道のようです。 さらに彼は、あなたにもっと高級なプレ

チームの勝利と、個人の記録と。【8/18中日戦◯】

ブキャナンのヒロインを見ていると、いつも泣いてしまう。そしていつも、良い時も、悪い時も、応援していこう、と、思う。誰しも良い時も、悪い時もあるのだから。 だけど今日のブキャナンを奮い立たせたのは、もちろん家族と、そして後ろの守備も大きかったのだろうなと思う。 何度も言うけれども良いピッチャーというのは、ピンチを招かないというよりは、招いたピンチをしっかり乗り切ることのできるピッチャーだ、と、基本的には思っている。 ランナーを出しても乗り切ることができる、そして、エラーが

スマートじゃなくていい。そこで掴み取る一勝に拍手を【8/17中日戦】

情報量が少数精鋭の神宮バックスクリーンに、「B7」の文字が輝く。そうつまりヤクルトは、四球を7個与えていた。とても味わい深い。 与えた四球7個とヒットの9本分くらいはとにかく、生きた心地のしない試合であった。満塁の(文字通りの)ピンチを招くたびに、私は軽く絶望し「こりゃだめだわ…」とつぶやいた。だけどそのたびにヤクルトは、もはやよくわからないけれどもそのピンチを何とかかんとか息も絶え絶え乗り越えた。 「ブルペンデー」とあらかじめ決められた日だった。平井くんは、プロ10年で

いつだってそこが転機になるのだと信じて【8/16中日戦●】

スーパーカツオさんのスーパー好投の余韻は、まだ神宮全体に残っていた。だけどまあ、どんな時も、新しい試合はやってくるのだ。良い時も、悪い時も。 ライアンは、初回に2ランを2本打たれ、4失点をした。いつだって現実は、向こうから急にやってくる。 結局その4失点のみで、ヤクルトは今日も負けた。4回表、たいしのホームランから始まった攻撃で、ここからまた反撃開始か、と、思ったものの、無死満塁の好機は今日も生かしきれず、そのあともタイムリーが出ず、エラーもあり(失点はしなかったけれど)

「誰かのため」と心から思えるそんな日に【8/14横浜戦◯(はなまる)】

8回表、カツオさんが伊藤裕季也からホームランを打たれた時、一塁側からは、今日一番の大声援と拍手が送られた。それはとてもとても、あたたかい拍手だった。 ノーノーを達成した瞬間じゃない。ノーノーが破られた瞬間だ。だけどヤクルトファンは、その瞬間に、大きな大きな拍手を、小さな大エースに送った。 そういうところだ、と、私は思った。ヤクルトファンの、そういうところが大好きだ。 その拍手に応えるかのように、カツオさんは、そのあとの打者をしっかりと打ち取った。カツオさんは8回を投げき